三菱電機は、2022年4月から導入したBA(ビジネスエリア)による経営体制の進捗状況などについて説明した。
三菱電機では、BA単位での経営への移行と権限委譲を推進。事業ポートフォリオ戦略の強化に取り組んできた。三菱電機 執行役社長 CEOの漆間啓氏は、「BA経営体制をさらなる進化、発展させ、スピーディな意思決定を行うために、各BAにおける戦略立案、実行を担うBAオーナーを支える組織として、新たにBA戦略室を設置した。BAオーナーは、より専任化し、事業遂行を強化することができる。投資家の視点でBA内を俯瞰した資源の再配分による資産効率の最大化、ポートフォリオ戦略の立案実行、事業本部の壁を超えたシナジーの発揮、BA内とBA間の技術およびノウハウの融合、BAをまたがる人と技術のダイナミックな連携、ソリューション事業の提供を推進していく」と述べた。
また、半導体・デバイス事業本部については、「社長直轄の事業本部として、各事業のキーとなる半導体デバイスの供給を通じて、三菱電機全体としての競争力強化を図る。パワー半導体向けの戦略的投資も全社的視点で判断し、確実な成長を牽引していく」と語った。
「インフラ」「インダストリー・モビリティ」「ライフ」「ビジネス・プラットフォーム」の各BAでの取り組みについては、4人のBAオーナーがそれぞれに説明を行った。
インフラBAの取り組み
インフラBAでは、電力インフラ、社会インフラ、防衛・宇宙インフラを対象にビジネスを推進。カーボンニュートラルの実現やエネルギーの安全保障、人手不足と老朽化するインフラ対策などの社会課題解決に取り組んでおり、具体的には、成長領域への重点的リソースの投入として、脱炭素コンポーネントの開発や、政府予算措置と連動した防衛・宇宙事業の推進をあげたほか、事業間シナジーを生む統合ソリューションの創出として、E&F(エナジー&ファシリティ)ソリューション事業を推進するという。
三菱電機 専務執行役 インフラBAオーナーの高澤範行氏は、「エレベータや空調、シーケンサーなどの世界トップレベルのコンポーネントと、防衛などで培った先鋭的な技術、大規模プロジェクトで培った強いエンジリアリング力を活用し、グローバルの顧客に提供。カーボンニュートラルの実現や人手不足の解決に向けて、E&Fソリューションを本部横断で提供していく。また、ソリューション提供で得られた運用保守データをデジタル空間で分析し、デジタルツインによって導入効果を測定。次の効果に向けた一手を提案するコンサルティングサービスにより、新たな価値を創出する。E&Fソリューションは、コト売りビジネスを推進するものになり、コンサルティングから、データマネジメントなどのO&Mサービスまでを担い、収益性を高める役割を担う。また、循環型デジタルエンジニアリング事業のひとつに位置づけるものになる」などとした。
インダストリー・モビリティBAの取り組み
インダストリー・モビリティBAは、FAシステムと自動車機器事業で構成。パワーエレクトロニクス技術とモーター技術、制御駆動技術を強みに、付加価値が高いコアコンポーネントを提供。ここにデジタル技術を組み合わせることで、未来のモノづくりと快適な移動を支えることを目指しているという。
インダストリーでは、技術革新への貢献、次世代モノづくりの具現化、労働力や熟練工不足の解決の3点に取り組み、製造装置や生産設備の機能、性能の核となるシーケンサー、サーボなどの機器を強化。半導体やEV、バッテリーなどの成長業種への価値提供を推進し、デジタルツインやソフトウェアを活用したデータ基軸によるモノづくりのライフサイク全体に価値を提供する循環型デジタルエンジニアリング事業モデルの構築を加速する。
モビリティでは、カーボンニュートラルへの貢献、快適な移動機会の提供、交通事故の撲滅の3点に取り組む。自動車機器事業の構造改革を推進しながら、CASE領域でのシナジー創出が見込めるパートナーとの成長、拡大を図るほか、環境変化に対応した事業ポートフォリオの見直しにより、強みが活かせる領域への事業集中によって、競争力強化を図る。
三菱電機 専務執行役 インダストリー・モビリティBAオーナーの加賀邦彦氏は、「制御・駆動系のコア技術と、これを支える内製キーパーツを強みにしていく」と述べ、「FAシステムでは、高精度制御などの技術を活用することで、最先端の顧客ニーズに応えるほか、世界90カ国以上をカバーするグローバル販売、サービスネットワークを活用。パートナーとのエコシステムにより、様々な顧客ニーズに対応していく。スマート工場の実現に向けたe-F@ctoryアライアンスや、エッジ領域および産業用ネットワークでのパートナー連携などにより、価値を提供していく」とコメント。「自動車機器事業では、長年培ってきたモーター技術やインバーター技術を生かすほか、自動車の生産を支える高速自動化量産技術や小型化生産設計技術を、グローバルに供給する体制を構築。各種モーターの制御を行うソフトウェア開発技術に強みがある点をより広く訴求していく。これによりグローバルでの価値提供を進める」と述べた。
EV関連ビジネスでは、回路基板とパワーモジュール、チップによるインバーター分野と、長年の歴史を持つモーター分野を主力技術と位置づけ、「今後、どこに力を入れていくかが重要になる。モーター単品で付加価値を得ることが正しい選択であるかどうかも検討しなくてはならない」などと述べた。
さらに、インダストリー・モビリティBA内におけるシナジー戦略として、自動車機器事業で培った高速自動化量産技術をFAシステムに展開。「お客様との取引を通じて磨かれた高い生産技術力や製造開発拠点をFAシステムにも活用することで、FAシステムが持つコアコンポーネントのグローバル供給力を強化する」と述べた。また、豊富な設計経験と生産現場の経験、ソフトウェア技術を相互に活用。「三菱電機のFAシステムを活用して、自動車機器事業のモノづくり力を強化し、そこで得られたノウハウを、再びFAシステムの提案力強化に活かす。カーマルチメディアを通じて培ったソフトウェア技術をFAシステム領域にも活用し、デジタルツインの加速やソフトウェアのアドオン開発などを強化し、多様化する顧客ニーズに対応する」という。
三菱電機では、2023年4月24日に、自動車機器事業を分社化する構造改革について発表している。
三菱電機の漆間社長兼CEOは、「CASEをはじめとして、産業構造が急速に転換するなか、意思決定プロセスを簡素化し、よりスピーディな事業運営を行うため、自動車機器事業の分社化を実施する。一段の事業運営の効率化と、事業ポートフォリオの再構築を図る」と説明。「自動車機器事業は、当初は、重点成長事業のひとつに位置づけていたが、急激な素材価格の高騰や物流費の増加など、コスト側の変動が想定以上となり、さらに、値上げの理解を得るまでにも時間がかかったため、損益が急速に悪化した。電動化の需要が当初計画ほど伸びていないという影響もあった。重点成長事業であることを一度見直す必要があると判断し、構造改革を推進しながら、設備投資をしていくことになる。今後、急速に拡大する電動化に向けてしっかりと対応できるようにしていく」と語った。
また、「市場ポテンシャルはあるものの、巨額投資を必要とする電動化やADASなどのCASE関連事業は、技術シナジーが見込める最適なパートナーとの協業を模索し、三菱電機の先端技術を活用しながら成長軌道に転換することを目指す」としたほか、「電動パワーステアリングシステム製品などの強みが活かせる事業については、コスト削減と効率化を推進するとともに、価格転嫁の加速などによる取引条件の見直し、不採算事業の削減、収益性の期待できるプロジェクトにリソースを集中させることに取り組む。また、課題事業であるカーマルチメディアは、収益改善が難しいと判断し、早期終息を図る」と述べた。
カーマルチメディア事業は、2,000億円弱の事業規模を誇るが、数年間に渡り赤字体質から脱却できていない状況が続いている。2022年度から新たな商談は停止しており、不採算プロジェクトでは価格交渉を推進。2023年度は黒字化を目指している。「カーマルチメディアは、一度黒字化した上で、プロジェクトごとに、2~3年をかけて、段階的に終息することを考えている。エンジニアリングリソースは、他の自動車機器事業での活用と、FAシステムなどの成長領域への投入を図る」(三菱電機 専務執行役 インダストリー・モビリティBAオーナーの加賀邦彦氏)という。
また、三菱電機の漆間社長兼CEOは、「2023年度の自動車機器事業全体で黒字化し、中期経営計画において収益をしっかりと出せる体制構築を目指す」とし、増田CFOは「自動車機器事業は、まずはしっかりと止血するところに力を注ぐ」と述べた。
2023年度は自動車機器事業全体で、約8,500億円の事業規模を誇るが、。カーマルチメディア事業の約2,000億円、CASE関連事業の約2,000億円を除いた、残りの4,500億円の事業についての収益性改善を図る計画だ。
「CASEの時代においても、三菱電機の価値を認めてもらい、利益が出せるところにまで戻せると考えている。かつて自動車機器事業部が達成していた7~8%の営業利益率は狙える。規模は追わずに利益確保を進めたい」(三菱電機 インダストリー・モビリティBAオーナーの加賀氏)とした。
ライフBAの取り組み
ライフBAは、空調・家電事業とビルシステム事業で構成。人々の生活を支える豊富な設備の提供、保守運用管理によりサービス事業を提供している。
三菱電機 執行役副社長 ライフBAオーナーの松本匡氏は、「あらゆる生活空間における人やモノの快適空間環境を創造するソリューションプロバイダを目指している。住宅やビル、工場など、ライフラインを支える設備を作り、見守り、進化をさせていく。クラウド基盤やZEBによるエネルギーマネジメント、入退出管理などのセキュリティシステム、遠隔監視、建物管理の省力化に資するロボットシステムなども展開しており、設備やシステムの開発、製造技術と、保守運用管理で培ったフィールドナレッジ、販売から保守、リニューアルまで行う事業体制、専門人材による事業基盤を保有している。さらに、設備の運用データをデジタル技術によって活用することで新たな価値を創出する統合ソリューションへの取り組みにより、顧客価値の創出を目指す」などとした。
需要家設備側での省エネへの取り組みだけでなく、エネルギー供給データによる需要予測を連動させた再生可能エネルギーの有効活用、カーボンニュートラルなどに取り組む「グリーンエナジーソリューション」、設備の運用データなどに基づいて異常兆候予知を行い未然の故障防止や保守の合理化を実現したり、人の感覚データや人流データをもとに、パーソナルな快適性を実現したりする「安全・安心&快適ソリューション」、設備運用データによるビルの自動管理やロボットの活用による省人化によるコスト抑制に貢献する「ビルマネジメントソリューション」に注力。「保守運用から得られるデータをデジタル技術によって活用していく循環型デジタルエンジニアリング企業を目指す」とした。
空調・家電事業では、空調、暖房給湯、換気送風、冷凍冷蔵で構成するHVAC&R分野に資源を投入。成長市場における地産地消型の施策を展開する。また、ビルシステム事業では保守運用管理サービスを強化。保守事業者との提携や、グローバルでのM&A投資を行っていくほか、E&Fソリューション事業にも参画し、シナジー効果を発揮するという。
「空調市場は全世界で20兆円の市場規模が想定されており、三菱電機が得意としているのは、ヒートポンプを中心とした直膨式やダクトレスであり、ここでは、省エネを武器にして技術を磨いている。欧州におけるボイラーからの切り替えによるA2W(Air to Water)や、北米でのダクトレス需要の増大によるオーガニックな成長を目指している。一方で、デルクリマの買収によって、チラー方式の製品を獲得。フロン規制のなかで直膨式が減少した際に、チラー方式のポートフォリオが必要だと考えて実施した。直膨式とチラー式を組みあわせて、社会課題にも対応できるようにしていく。現時点では、新たなM&Aについて、具体的な案件はない」とした。
ビジネス・プラットフォームBAの取り組み
ビジネス・プラットフォームBAは、循環型デジタルエンジニアリング経営基盤を構築し、各BAにサービスを提供することで、統合ソリューションの創出、拡大に貢献するという。
金融機関や航空管制などの大規模ミッションクリティカルシステムの開発などで実績を持つ社外向けの情報サービスシステム事業部門と、グループ社員15万人を対象にした業務システム、情報インフラの開発、運用保守、サイバー攻撃に対応する高度なセキュリティを実装する社内向け情報システム部門で構成。三菱電機が、2023年4月に社内に設置したDXイノベーションセンターとも連携する。
三菱電機 常務執行役 ビジネス・プラットフォームBAオーナーの三谷英一郎氏は、「大規模システム構築力、大規模プロジェクトマネジメント力といったスキル、プロセス、技術力を強みとしているほか、社内システムの開発、運用保守のスキルと経験、ノウハウに加えて、一昨年から取り組んできた全社業務DXプロジェクトで得られた知見なども強みとなる」とし、「循環型デジタルエンジニアリング経営基盤には、統合ソリューションをスピーディに創出するために必要となる各種サービス、技術を実装するとともに、運用保守サービスや高度なDX人材の活用サービスを各BAに提供し、既存コンポーネトンの強化にも貢献する。社会課題の解決のために創出した統合ソリューションは、様々なデータを生み出し、循環型デジタルエンジニアリング経営基盤にデータを循環することができ、データマネジメントサービスによって分析し、さらなる価値の発見や新たな統合ソリューションの創出につなげることができる」などとした。
さらに、「今後は、他のBAとのシナジー効果を出すための下支えとしての役割を強化していく。自前主義から脱却して、社外パートナーとの連携も意識したい。データを活用したサービスの付加価値を創出し、それを循環させることを変革の柱に据える」と述べた。
SiCパワー半導体の投資倍増、前工程だけでなく後工程も
一方、社長直轄組織である半導体・デバイス事業本部の取り組みとしては、SiCパワー半導体事業について説明。生産体制の強化に向けて、約1,000億円を投じる新工場棟の建設をはじめとして、2021年度から2025年度までの累計設備投資を、従来計画の倍増となる約2,600億円に引き上げることを示した。
三菱電機の漆間社長兼CEOは、「脱炭素社会の実現に向けて、世界的に省エネ指向が高まるなか、SiCパワー半導体は、電気自動車向け需要の拡大に伴い、急速な市場拡大が見込まれるとともに、様々な応用分野での市場拡大が見込まれる。新工場棟では、8インチによるウェハーの大口径化に対応した生産能力を大きく増強する。2025年度に向けて大きく成長させる計画であるほか、今回の追加投資により、2026年度以降のパワー半導体事業の成長をさらに加速させたい」とした。
これまでの投資は前工程に対する投資であったが、パワーモジュールの設計、開発、生産技術検証までを一貫して行える体制を構築。約100億円を投資して、パワー半導体の後工程の新工場棟を福岡地区に建設し、各部門の連携強化を図ることで、生産開発から量産化までの開発効率を飛躍的に高めるほか、開発リードタイムも短縮。市場ニーズな対応するという。SiCパワー半導体事業は、2030年度にはパワー半導体事業全体の30%以上の構成比を目指す計画だ。
過去最高の売上で増収増益、海外売上比率が半数超え
三菱電機が発表した2022年度の連結業績は、売上高が前年比11.8%増の5兆36億円、営業利益は4.1%増の2,623億円、税引前当期純利益は4.5%増の2,921億円、当期純利益は5.1%増の2,139億円となった。
三菱電機の漆間社長兼CEOは、「円安の影響に加えて、量産系事業の需要拡大などにより、売上高は過去最高を更新した。売上高は為替影響を除いても、約6%の実質増収となっており、すべてのセグメントで増収になった。営業利益については、部材調達コストや物流費の増加、自動車機器事業での減損損失があったが、円安の影響に加え、売上増や価格転嫁の効果、土地の売却益などにあり増益になった」と総括した。
営業利益においては、電子部品の価格高騰で370億円のマイナス、、物流費で270億円のマイナス、部材調達難で170億円のマイナスがあったが、価格転嫁で870億円のプラス、為替影響で830億円のプラスがあった。
また、海外売上高が2兆5,366億円となり、海外売上比率は51%を占めた。「年間で海外売上比率が50%を超えたのは初めてになる」(三菱電機 常務執行役 CFOの増田邦昭氏)という。今後、海外事業が過半数を超える状態が続くと見ている。
なお、検査不正問題による業績への影響は、売上げに対しては軽微であるとする一方、営業利益には約100億円の損益影響があったとし、ここには修理や再検査費用、調査経費、品質保証の体制強化に向けた設備の償却費などが含まれるという。品質保証体制の強化に向けた投資は2022年度末までに150億円に達しているという。
検査不正問題では、2023年4月に、子会社5社で、12件の不正が判明したことが新たに明らかになったが、三菱電機の漆間社長兼CEOは、「子会社に対しても、しっかりと調査を行い、すべてを出し切ることに取り組んでいる。本体側で行われていたことが子会社にも及んでいることがわかり、真摯に受け止める」と述べた。
セグメント別では、インフラの売上高が前年比2.9%増の9,731億円、営業利益は33.7%減の275億円。社会システムは国内外の公共分野における投資が堅調に推移したほか、電力システムは国内電力会社の設備投資が継続。防衛・宇宙システムは大口案件の増加が貢献した。だが、営業利益では、案件変動や費用増のほか、防衛・宇宙システム事業の採算悪化で75億円の赤字を計上。3つのサブセグメントすべてで減益となった。
「防衛・宇宙システムは難度が高い開発案件において、大きなロスを出し、不本意な結果となった。プロジェクトの立て直しとともに、お客様のとの契約形態などの見直しを図っている。その点でのお客様の理解も進んでいる」(増田CFO)という。
インダストリー・モビリティは、売上高が前年比12.1%増の1兆6,602億円、営業利益は0.5%減の959億円。FAシステムがスマホや半導体などのデジタル関連分野の需要は減少したが、リチウムイオンバッテリーなどの脱炭素関連分野を中心に需要が堅調であり、過去最高の売上高および営業利益を達成。自動車機器では新車販売台数の増加や、電動化関連関連製品や自動車用電装品の需要増がプラスに働いたが、素材価格や物流費の上昇、固定資産の減損損失の計上などがあり、462億円の赤字となった。
ライフは、売上高が前年比16.4%増の1兆9,471億円、営業利益は9.3%増の1,012億円。ビルシステムは市況低迷からの回復の動きが見られたほか、空調・家電では第2四半期以降、電子部品の需給状況に改善の動きがあり、円安の影響や欧州、日本、北米向けの空調機器の増加により、2年連続で過去最高の売上高を更新した。また、素材価格や物流価格の上昇、第1四半期の上海ロックダウンによる操業度の低下、部材調達難による悪化はあったものの、それを為替や価格改善によりカバーして増益となっている。
「例年であれば、空調関係は上期の売上げが大きいが、部品不足などにより、需要に対して製品が出し切れず、機会損失が生まれていた。2022年度は下期の方が高くなっている」(三菱電機の増田CFO)という。
ビジネス・プラットフォームの売上高は前年比12.2%増の4,293億円、営業利益は51.1%増の399億円となった。情報システム・サービスは、半導体部品の需給逼迫の影響はあったが、新型コロナウイルス感染症の影響で延期されていた案件が再開。システムインテグレーション事業やITインフラサービス事業の増加などにより、受注高、売上高、営業利益ともに前年度を上回った。また、電子デバイスは、民生・産業向けのパワー半導体の需要などが堅調に推移。売上高、営業利益ともに過去最高となった。
2023年度の連結業績見通しは、売上高が前年比3.9%増の5兆2,000億円、営業利益は25.8%増の3,300億円、税引前当期純利益は21,5%増の3,550億円、当期純利益は21.5%増の2,600億円とした。「各国での金融引き締めや地政学リスクの高まりなどの不透明感はあるが、空調・家電を中心とした量産系事業でのさらなる需要拡大や、各事業での価格転嫁の効果などにより、増収増益を計画している。売上高、利益ともに過去最高を見込んでいる」(三菱電機の漆間社長兼CEO)とした。
価格転嫁により、売上高、営業利益で年間1,100億円の押し上げ効果を見込んでおり、そのうち、空調・家電が約4割を占めるという。また、将来に向けた開発費やIT投資などの資源投入では520億円を見込んだほか、不正品質問題への対応として、2023年度には90億円の影響を見込んでいる。
素材価格の影響としては、アルミ、銅は改善要素もあるが、鉄、樹脂、磁石はマイナス影響があるほか、電子部品の需給状況は改善しつつあるものの、コスト上昇圧力が強いという。物流費は一定の改善を見込んでいる。
セグメント別業績見通しは、インフラの売上高が前年比3.8%増の1兆100億円、営業利益は23.6%減の210億円。インダストリー・モビリティは、売上高が前年比4.8%増の1兆7,400億円、営業利益は50.2%増の1,440億円。ライフは、売上高が前年比8.4%増の2兆1,100億円、営業利益は51.2%増の1,530億円とし、そのうち、空調・家電では売上高が10.2%増の1兆5,000億円、営業利益が51.4%増の1,100億円。「増益幅が最も大きい空調・家電は、国内、欧州、北米を中心に全地域での増加を想定している。欧州ではエネルギー価格が高騰するなか、省エネ性に優れたA2Wの需要が大きく伸びており、北米でもヒートポンプ需要が拡大する。日本では価格改善した業務用製品の投入を図り、増益を目指す。中国も少し明るさが出ており、業務用、家庭用ともに伸ばしたい」(三菱電機の増田CFO)とした。ビジネス・プラットフォームは売上高が前年比0.1%増の4,300億円、営業利益は42.4%減の230億円としている。
品質不正問題の影響や自動車機器事業の再編などの課題はあるが、空調・家電事業の好調ぶりやBA間のシナジー効果の創出などの明るい材料もある。社内文化の改革を進めながら、成長戦略を推進できるかが当面の鍵になる。