2022年11月9日に発売されるPlayStation 5(PS5)/PlayStation 4(PS4)用ソフトウェア『ゴッド・オブ・ウォー ラグナロク』は、北欧神話の世界「九界」を舞台にしたアクションアドベンチャーゲーム。2018年に発売された『ゴッド・オブ・ウォー』の続編だ。
前作は、主人公クレイトスとその息子アトレウスが、クレイトスの妻であり、アトレウスの母である「フェイ」の遺骨を「世界で一番高い山」の山頂から撒くために冒険する物語だった。寡黙で不器用な父クレイトスは、アトレウスと十分なコミュニケーションが取れておらず、最初はどこかぎこちない関係性だったが、それでも、旅を通して会話を交わしていくことで、少しずつ絆は強くなっていった。
今作で主人公クレイトスと息子アトレウスは、敵対する主神オーディンや雷神トール、そして世界を終焉へと導く「ラグナロク」に立ち向かう。「戦争は避けるべきであり、息子の安全を何よりも優先させる」という考えのクレイトスと、「未来を示す予言で語られる巨人・ロキとしての役目を果たそう」と試行錯誤するアトレウス。少し成長したアトレウスは意見を主張するようになるが、自分の行動に理解を示さない頑固なクレイトスに苛立ちを募らせ、ときに衝突することもあった。
敵をなぎ倒していくバイオレンスなアクションがエキサイティング
ゲームの醍醐味は、ダイナミックなアクションだろう。スパルタの戦士として育った主人公のクレイトスは、氷の斧「リヴァイアサン」や炎の双剣「ブレイズ・オブ・カオス」といった武器を使い、襲いくる敵を次々と倒していくのだが、その圧倒的なパワーは操作しているプレイヤーをも驚かす。
特に、敵が弱った際に放つフィニッシュムーブは圧巻。首や胴体を容赦なく切り落とすバイオレンスなシーンには戦慄すら覚えた。また、大木を振り回したり、岩を投げ飛ばしたり、斧を投げて火薬樽を爆発させたりと、ド派手なギミックもバトルを盛り上げる。
大技「ルーンアタック」も健在。それぞれの武器に装備できる「ノーマルルーンアタック」と「ヘビールーンアタック」を使えば、「ンアァァァーー!!!!」と雄たけびをあげながら、クレイトスが「リヴァイアサン」や「ブレイズ・オブ・カオス」を振り回す。「ルーンアタック」を当てて敵を吹っ飛ばしたときは、かなり爽快だ。
とはいえ、武器をぶん回しているだけでクリアできるほど単純なゲームではない。「ルーンアタック」は好きなだけ使えるわけではなく、一度使うと、一定時間のクールダウンが発生する。
また、九界にいる魔物は複数で襲いかかってくることが多く、囲まれてしまえば、いくらパワフルなクレイトスといえど、ひとたまりもない。弱点属性がある敵もいるので、氷の近距離武器「リヴァイアサン」と炎の中距離武器「ブレイズ・オブ・カオス」の使い分けが大事だ。武器は十字キーですぐに切り替えられるが、戦闘中はあたふたしていることが多く、慣れないうちはスピーディに切り替えられずに苦労した。
さらに、強力な攻撃を使ってくる怪物も立ちはだかる。当然、必殺技を連発するだけでは倒せない。装備している盾で相手の攻撃をガードしたり、タイミングを合わせてパリィを決めたり、盾を使ったガード・ブレイクで相手の防御を崩したりと、臨機応変な立ち回りが必要だ。ダッシュ中や回避中に攻撃する技など、経験値を消費して獲得するスキルもうまく活用したい。
筆者は基本的にアクションゲームをプレイする際、盾を使わずにノーガードで戦うタイプだが、ローリングだけでは回避しきれない敵の技も多かったので、下手なりにパリィを実践。最初は慣れないガードやパリィに苦戦するも、チャレンジしているうちに上達し、ボスの攻撃をうまく受けられるようになった。中間難易度(Balance)でプレイしたが、戦闘は簡単すぎず、「程よい達成感を味わえるレベル」といった印象だ。
同行キャラクターとの連携が求められる奥深いバトル
人間離れしたパワーで敵を蹂躙していくクレイトスだが、九界を1人で旅しているわけではない。息子のアトレウスとともに行動することが多いため、2人のコンビネーションが重要になってくる。クレイトスの多彩な武器攻撃に加えて、同行キャラクターの操作も行うバトルは、戦術の幅が広く、奥深い。
アトレウスは、クレイトスの攻撃に続くタイミングで追撃をしてくれたり、敵を羽交い絞めにして動きを止めてくれたり、敵の注意を引き付けてくれたりと、さまざまなシーンで大活躍。敵がクレイトスの死角から攻撃を仕掛けてきたときに、「後ろだよ、危ない!」などと叫んでくれるのもありがたい。
ほかにも、アトレウスは弓矢による遠距離攻撃に長けており、指示を出せば「音波の矢」「刻印の矢」といった特殊な攻撃でサポートしてくれる。正直、戦闘ではかなり助けられた。
ステージ上では、アトレウスの協力を得てギミックを解除するシーンも多い。「音波の矢」で壊す仕掛けがあれば、指示を出し、そこに矢を打ち込んでもらう必要がある。アトレウスは息子であると同時に、戦闘とステージ攻略、どちらにも欠かせない頼もしいパートナーなのだ。
また、アトレウス以外の個性豊かな仲間が同行することもある。前作から引き続き登場するキャラクターや、今作から登場するキャラクターとの共闘は、プレイヤーを飽きさせない。
さらに、物語を進めていくと、アトレウスを操作することも。当然、父親ほどのパワーはないが、正確な弓の腕を活かして敵を射抜いていく、クレイトスとは真逆の操作でバトルを楽しめる。
父と子の成長ストーリーから目が離せない
ゲームに最も没入させる要素が、登場キャラクターの人間関係だ。特にクレイトスとアトレウスの親子の対話は、ゲームを語るうえで切っても切れない。アトレウスの成長だけでなく、クレイトスの父親としての葛藤や変化といった心理的描写にも心を動かされる。
子の安全を第一に考える父クレイトスだが、不器用な性格のため、アトレウスの主張を遮り、厳しい言葉をかけることもしばしば。そのうえ、寡黙で口下手で、いつも本心をうまく伝えられない。アトレウスに反発されると、さらに強い口調で押さえつけてしまう。
一方のアトレウスは、少しずつ自分の考えを主張するようになる。幼さゆえ、無鉄砲な面もあるが、自分なりに役に立とうと試行錯誤を繰り返す。ついには、何を言っても聞かない頑固なクレイトスに対して不満が積もり、隠れて1人で行動することが増えていった。
厳格な父に、無茶をする息子。本心では、互いのことを守りたいと考えているものの、意見が食い違い、すれ違う。プレイヤーとしてはもどかしさを覚えつつも、2人の関係性がどうなっていくのか気になって、コントローラーから手が離せない日が続いた。
また、ドワーフの鍛冶師で兄弟のブロックとシンドリ。息子バルドルをクレイトスに殺されたフレイヤと、その兄フレイ。主神オーディンを父に持ち、クレイトスに2人の息子を殺された雷神トールと、その妻のシヴ、娘のスルーズなど、クレイトスとアトレウス以外にも、さまざまな家族が描かれる点にも注目したい。当然、敵味方関係なく、それぞれに生活があり、ドラマがあるのだ。
仕掛けを解除しながら広大な九界を探索しよう
メインクエストのダンジョンは比較的1本道を進むことが多いが、九界にはそれぞれボートやソリで自由に探索できるエリアがあり、各所に宝箱が設置されているほか、「託されし想い」と呼ばれるサブクエストも豊富に用意されている。
このエリアが思いのほか広大。ギミックを使って進むところも多く、隅々まで探索しつつ、仕掛けの解読にあれこれ試行錯誤していたら、かなりの時間を使うことになるだろう。しかも、強敵が待ち構えている場所もあり、攻略は一筋縄ではいかない。だが、強力な装備が入っている宝箱や、やりこみ要素としての収集アイテムも多く、ついつい寄り道をしてしまった。
なかでも、九界に点在する「ベルセルクの墓石」と呼ばれる場所でのバトルはスリリング。敵の攻撃パターンをしっかりと見極め、回避とパリィでスキを伺い、タイミングよく攻撃する正確さが求められる。そのうえ、数回のミスでやられてしまうので、最後まで気が抜けない。
敵を追いつめたら、多少のダメージ覚悟で押し切ってしまおうとつい気がはやってしまい、あと少しのところで体勢を崩され、やられることが何度もあった。しかし、そんな悔しさを乗り越えて勝利した瞬間や、キレイなパリィを連続で決めて一方的な展開で勝てたときの達成感は大きい。
また、宝箱には簡単に開けられないタイプがあり、特に3つの刻印がある宝箱を開けるには、近くにある仕掛けを解く必要がある。ギミックのタイプも、斧を投げて仕掛けを回転させ、宝箱の刻印と同じものを表示させる簡単なものから、同行するパートナーにルーンの効果を発動してもらい、「ブレイズ・オブ・カオス」で燃やすといったものまでさまざま。解き方を考える以前に、ギミックの場所を探すのが大変なものまであって、開封にはかなり苦労した。というか、未だに開けられない宝箱もあるくらいだ。
『ゴッド・オブ・ウォー ラグナロク』は、PS4版も発売されるが、PS5版では、高速SSDの読み込み、美しいグラフィック表現、DualSense ワイヤレスコントローラーのハプティックフィードバックとアダプティブトリガーなどが体験をよりリッチなものにしてくれる。
ソリに乗って雪原を走り回るときは、氷の上と雪の上でハプティックフィードバックの振動が変化。ツーっと細い振動が氷上を滑る感覚をリアルに伝えてくれた。
また、筆者はPS5版の「パフォーマンス優先」モードでプレイしたが、それでも、吹雪の表現や木々の揺らめき、クレイトスの肌のシワまで、細部まで、丁寧に作りこまれた美しいグラフィックを堪能できた。
なお、『ゴッド・オブ・ウォー ラグナロク』は、『ゴッド・オブ・ウォー』の続編なので、当然、前作をプレイしたほうが、登場キャラクターの性格や過去の出来事などを把握でき、物語へスッと入れる。
特に『ゴッド・オブ・ウォー』は、「PlayStation Plus エクストラ」「PlayStation Plus プレミアム」のどちらかに加入していれば追加料金なしでプレイできる「ゲームカタログ」にラインアップされているうえ、「PlayStation Plus プレミアム」で楽しめる「クラシックスカタログ」には、過去作『God of War HD』『God of War II HD』『God of War III Remastered』もある。時間があればプレイしてみるといいだろう。
とはいえ、『ゴッド・オブ・ウォー ラグナロク』内にもあらすじは用意されているし、前作を振り返る動画「ミズガルズの神話」も公開されている。弊誌ではPC版『ゴッド・オブ・ウォー』のレビュー記事も掲載しているので、それらをチェックすればプレイに支障はないと思う。
ストーリーの詳細についてはここでは触れないので、ぜひ、神話の世界を冒険し、成長していく親子の物語の結末を、その目で見届けてほしい。
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