日本を代表する俳優・二宮和也。ビートたけしが初めて書き下ろした恋愛小説を実写化した映画『アナログ』で、ラブストーリーに挑んでいる。今作で二宮が演じるのは、手作り模型や手描きのイラストにこだわるデザイナーの水島悟。喫茶店「ピアノ」で、携帯を持たない謎めいた女性・みゆき(波瑠)と出会い、恋に落ちていく。

インタビューでは、「恋愛ものをやらない」と思っていた二宮がラブストーリーとどのように向き合ったのか、そして2度目のタッグとなるタカハタ秀太監督の演出によって生まれた“奇跡的な瞬間”について明かした。

  • 二宮和也

    二宮和也 撮影:島本絵梨佳 

■ラブストーリーへの挑戦は「新鮮」

――現代を舞台にしたラブストーリーに挑まれましたが、演じてみて、率直にどのような感想を持たれましたか?

これまであまりこういった毛色の作品には出ていなかったので、新鮮だったというのが最初の印象です。僕はどちらかというと、まだ見たことなかったり、メジャーではない表現を求めるタイプなので、それと“恋愛”というものがどこまでリンクしていいものなのか……。やっぱり“恋愛もの”って、いわゆる約束事みたいなものがちゃんと無いと、好きな人からしたら物足りないと思うんだろうなぁと思うんです。

――約束事にどれだけ色を足せるかというバランスは難しいところですよね。

やっぱりずっと肩透かしを食らっている状態だと、「じゃあ恋愛じゃなくて良かったじゃん」とか「もっと違う作品で表現すればよかったんじゃないの?」というように感じる人もいると思うんです。なので、そうならない塩梅を全体の形から探る作業が多かったです。

■タカハタ秀太監督の現場にフィット感「自由にやらせてくれる」

――また、タカハタ監督とは2015年に放送されたTBS年末ドラマスペシャル『赤めだか』以来のタッグとなります。

僕は比較的、現場で話をして、「ああしよう、こうしよう」とやっていくことが多いのですが、タカハタさんは「とりあえずやってみて」と対応してくれる。僕だけじゃなくて、今回出演している皆を信頼して自由にやらせてくれるので、言ってしまえば楽というか……。現場で僕たちが自分たちの表現をとりあえず一回やってみると、タカハタさんの中には、「こういうのがもうちょっと欲しいなあ」とか「もう十分足りた」というのが明確にあるんです。

撮影が半分終わったときに、タカハタさんはもう本編を繋いでいて。そのときに「もう4時間になっちゃった」とか言うから、撮影も半分なのに本編4時間ってどういうこと? 前後編のつなぎ方してるじゃん! と(笑)。画が見えているから、撮影が終わる頃には本編はもうほとんど全部繋ぎ終わっていて、あとはこのシーンをはめるだけみたいな形になっているんです。普通だと本編を繋いでいても言わなかったりするんです。でも、タカハタさんは適宜そういう進捗をみんなと共有してくれる。その上で「やっぱりこれがもうちょっと欲しい」という要望を回りくどくなく伝えてくれるので、出演者たちもちゃんとそこにミートできるんです。

――撮影半分で4時間は確かに前後編じゃないと難しいですね(笑)。お話しを伺っているとタカハタ監督への信頼感が伝わります。

今回の『アナログ』の話も「これ(アナログの映画化)をやりたいんだ」と言うから、「珍しいね。でもやったらいいんじゃない?」と返したら「お前とやりたいんだけど」と言われて(笑)。僕は勝手に恋愛ものをやらないと思っていたし、タカハタさんが恋愛ものをやるなんて珍しいな~と思っていたら驚きました(笑)。タカハタさんは、結構話をしに来てくれたり、壁を感じさせずにそういう相談をしてくれる人なので、僕はすごい信頼できる。

■二宮和也から見た監督・タカハタ秀太のすごさ「人間力とカリスマ性」

――様々なタイプの監督がいるかと思いますが、二宮さんから見てタカハタ監督はどういった監督ですか?

監督が一番上に立ってピラミッドができる現場もあれば、そうじゃなく、みんな横並びで行こうという組もあって、それぞれなんですけど、タカハタさんはどっちもある。その日の流れをすごく重要視する人なので、ノっているなと感じると、予定にないシーンの撮影もやってしまうんです。悟が海でみゆきに抱きしめられるシーンも、「これ、今やっちゃおう」と言い出して。これまでみんなで一緒にやろうねと横一列だったはずの人が急にリーダーシップをとって、図抜けるんです(笑)。

もちろん、みんな「えぇ~」と驚くんですが、さっきも話したようにタカハタさんには画が見えている。不思議な人だけど、周りから「めちゃくちゃだよ、あの人」「なんだよ、それ」みたいな声は一切上がらないのが、タカハタさんの人間力とカリスマ性。みんな、監督が求めているものに近づきたいという気持ちを持っていました。