ソニーの「VLOGCAM ZV-1」とパナソニックの「LUMIX G100」は、ともにVlog(日常を記録する動画ブログ)用の動画を撮影するための機能を強化したビデオブロガー向けのカメラとして登場しました。しかし、いずれも本体サイズの割に比較的大型のセンサーを搭載しており、Vlog用途だけではもったいないほどの性能を備えています。これらのVlog用カメラ、普通のスチルカメラとして写真の撮影に使っても満足できるのか…?と疑問に感じた落合カメラマンに、使用感をリポートしてもらいました。前回のZV-1に続き、今回はLUMIX G100です。

Vlog撮影や動画撮影にあまり傾倒しすぎていない

そもそも「ぶいろぐ」っていう音の響きが嫌……という導入は、ソニー「ZV-1」の記事と同じだったりするのだけど、実際に使い比べてみたら、お仕着せな要素はZV-1に濃厚であることが判明。それってつまり、「Vloggerが好みそうな機能を載っけましたぁ! ありがたく思え!! 使え!!」ってな姿勢や態度はZV-1の方にあからさまである一方、パナソニック「G100」はもっと控えめというか、Vlog撮影に係る利便性の向上は図りつつも、一歩踏み込んだところの使い方や楽しみ方には「どうぞご自由に」というスタンスが感じられたということ。どちらがありがたいのかはユーザー自身が感じ判断することになると思うのだけど、個人的にはG100の慎ましやかなたたずまいが身に沁みました。グイグイ来られると引いちゃうタイプなもんで(笑)。

  • パナソニックが2020年8月に発売した「LUMIX G100」。実売価格は、標準ズームレンズが付属するDC-G100Kが105,000円前後、トライポッドグリップも付属するDC-G100Vが111,000円前後。8月29日までキャッシュバックキャンペーンを実施しており、DC-G100Kは8,000円、DC-G100Vは10,000円が還元される

「G」の名が示すとおり、G100はコンデジではなくレンズ交換式のマイクロフォーサーズ機。規格上はG9やGH5シリーズなどと肩を並べるともいえるモデルなので、それら上位機種と同様、豊富な交換レンズ群を存分に使い倒すことも可能な高いシステム拡張性を持っている。

ボディは、中央部に一眼レフでいうところのペンタプリズム部っぽい出っ張りのある、いわゆる「一眼スタイル」で、当該部分には十分な視認サイズを持つEVFを装備。全体の雰囲気は、「古き良きパナのG」といった感じで、GHシリーズが登場した後しばらくの間、入門機やパパママカメラ、果てはベテランの好む有能な中堅機など、さまざまな顔を持つことになったG5あたりの存在感とダブる印象があったりもする。

でも、実際には、写真を撮るためのカメラとしてみた場合は、かつてのG5クラスよりもハードはさらにシンプルだ。製品写真では、ボタンやダイヤルの存在が余りにシンプルすぎて、ガチャで出てきそうなミニチュアに見えちゃうほど。質素なことこの上ない外観には、ぶっちゃけ安っぽさもチラホラ漂っていたりするのだけど、でも考えてみると、この「チョ~簡素で軽くてちっちゃい一眼スタイル」って、現代のミラーレス機がどこかに忘れてきてしまっている有益なキャラの復活にもなり得るのでは? かつては「女流一眼」でならしたことのあるGシリーズも、いつの間にか果てしなく高いところまで上り詰めてしまっているからねぇ…。

しかも、キットを組むレンズが懐かしの(?)LUMIX G VARIO 12-32mm F3.5-5.6 ASPH. MEGA O.I.Sときた。いや、まだ現行品なので懐かしんではイケナイと思うのだけど、このレンズってあの超小型名機「GM1」とコンビを組んでいた超小型標準ズームレンズだよね? GM1、良かったなぁ。コロナ禍の混沌に抗えず、同レンズを装着したまま数カ月前、ついに手放してしまったのだけど、まさかそのキットレンズにこんなカタチで再会することになるとは!

小型軽量でシンプルな作りながら、写真カメラとしても有能

今回G100で撮った写真は、細部に緩めの印象を抱くことが多かった。これ、最初はカメラの画作りがそうなのかと思ったのだけど、アレコレ試してみた結果、どうやらLUMIX G VARIO 12-32mm F3.5-5.6 ASPH. MEGA O.I.Sの描写にその傾向があるようだ。現代の感覚でいうと、まぁまぁよく写るけど超絶高画質なレンズではないってこと。まぁ、実勢価格2万円台の超小型な標準ズームレンズに何をいってるんだいって感じではありますが。

そして、キットレンズの描写に不満があるのなら、もっといいレンズを使えばいいだけの話でもある。なんてったって、G100はレンズ交換できるんだから。この「小ささ軽さを優先しうる高い拡張性」は、マイクロフォーサーズならではの強みだといえるだろう。他のシステムには容易にマネのできないところだ。

動画撮影時にモニターしている撮影画面を赤い枠がガッと囲むという、シンプルながら高い視覚効果をもたらす工夫は、「今、撮ってまっせー」のアピールに最高効率の効果を与えることになっている。そういった身近なところでさりげなくVlog撮影をフォローしている姿勢がいい。AFも、瞳AFを含め最新の使い心地に近いものが備わっており、安っぽい外観に似合わず中身は手堅く硬派。フォトスタイルも最新の態勢で固めているなど、写真を撮る道具として不満を感じさせるのはスピード(連写コマ速や書き込み速度)以外にはないって感じ。ナニゲに有能なお散歩スチールカメラになってくれそうなG100なのであります。

  • 操作系がシンプルすぎて、設定をいろいろいじろうとしたときには機動性に欠ける手応えとなることもあるけれど、そういうキャラクターの簡素なカメラだと思えば楽しく使える。フォトスタイルもフル装備だ。作例はフォトスタイル「L.モノクロームD」で撮影したもの(LUMIX G VARIO 12-32mm F3.5-5.6 ASPH. MEGA O.I.S使用、ISO200、1/120秒、F4.5、12mm)

  • 自分には似合わないだろうなぁと思いつつ、トライポットグリップを握るスタイルでも撮ってみたのだけど、今の世の中、EVFを覗いているよりもトライポットグリップを握って撮っている方が怪しさは半減するような気がした。困ったな。新たな発見だ(笑)(LUMIX G VARIO 12-32mm F3.5-5.6 ASPH. MEGA O.I.S使用、ISO200、1/400秒、F6.3、12mm)

  • Vlog向けのカメラだろうが何だろうが、写真ってのは最終的には人間が撮るものなので、G100を使っても結局、私には私が撮る写真しか撮れないってのが現実。それが写真なのだ。G100でもその面白さ、楽しさは存分に味わえる(LUMIX G VARIO 12-32mm F3.5-5.6 ASPH. MEGA O.I.S使用、ISO200、1/320秒、F7.1、17mm)

  • EVFは大きく見えるのだけど、画角内全域がクリアに見渡せるポイントはピンポイントで存在するので、じっくり目の位置を合わせる必要がある。役者な雲のおかげでイイ感じの立体感が出た。オリンパスのプロレンズで撮影(M.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PRO使用、ISO200、1/1300秒、F5.6、7mm)

  • 使っていて気になったのは、EVFと背面モニターの色再現が全然違うところ。モニターの方が仕上がりイメージに近い表示で、それと比較するとEVFの色はシアン~グリーンに大きく傾いていた。調整すりゃいいのだろうけれど、デフォルトで見せるこのアンバランスさはちょっといただけない(M.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PRO使用、ISO200、1/5000秒、F5、-0.7補正、7mm)

  • 昨今のミラーレスでは珍しいほどの小型軽量ボディに不満のない撮影性能を備え、スチルカメラとしての感触も上々だと語る落合カメラマン。モデルチェンジごとに姿形を変えつつ肥大化していったLUMIX Gシリーズの歴史を知るだけに、古き良きGシリーズが戻ってきたようだと感慨深そうだ