シャープの沖津雅浩社長兼CEOは、2月20日、社内イントラネットを通じて、社員を対象にしたCEOメッセージを配信。そのなかで、2025年5月に、次期中期経営計画を発表することを明らかにした。

これまでにも、「次期中期経営方針」について発表することを示していたが、CEOメッセージのなかでは、「次期中期経営計画」とし、一歩踏み込んだ内容を発表することに言及した格好だ。

  • シャープの沖津雅浩社長兼CEO

次期中期経営「方針」から次期中期経営「計画」への踏み込み

2024年度を最終年度として中期経営方針では、ブランド事業に集中した事業構造の構築に取り組むことを掲げ、デバイス事業のアセットライト化、新たな成長モデルの確立、本社機能の強化を骨子に掲げたものの、具体的な数値を示すことはなかった。

同社では、「方針」と「計画」という言葉を使い分けており、今回のCEOメッセージでは、沖津社長の就任以降、初めて「次期中期経営計画」としたことで、具体的な数値目標を伴った「計画」を発表することが見込まれる。

沖津社長兼CEOは、CEOメッセージのなかで、「2024年度第3四半期の決算発表以降、以前にも増して、今後の見通しやブランド事業の成長戦略に対する質問および期待の言葉をもらう機会が増えており、5月を目途に公表予定の中期経営計画に大きな注目が集まっている」とし、「今後の成長の中心となるブランド事業の業績は、現時点では堅調に推移しているが、市場環境が刻一刻と厳しさを増すなか、他社に先んじてより大胆な変革に挑戦していかなければ、早晩、競争力を失う。こうした危機感を背景に、今回の中期経営計画では、従来の延長線上に留まるのではなく、将来を見据えたよりチャレンジングな目標を設定し、その道筋を付けることを狙いとしている。とくに、昨年の中期経営方針で示したブランド事業営業利益率7%という水準にはこだわりを持って進めていく」と述べた。

決算は上方修正、シャープ復活は見えたのか?

今回のCEOメッセージでは、「ゴールはもう目の前、修正公表値達成に全力を挙げよう」というタイトルで、2月7日に発表した2024年度第3四半期連結決算について報告している。

シャープが発表した2024年度第3四半期累計(2024年4月~12月)の連結業績は、売上高が前年同期比6.0%減の1兆6579億円と減収になったものの、営業利益は前年同期のマイナス35億円の赤字から203億円の黒字に転換した。また、経常利益は前年同期比87.4%減の8億円、当期純利益は前年同期から56億円悪化し、マイナス35億円の赤字となった。

沖津社長兼CEOは、「2024年11月に、2024年度第2四半期決算を発表して以降、年間公表値達成には、第3四半期での営業利益の積上げが重要であると話してきた。この間、全社一丸となって取り組んだ結果、第3四半期の営業利益は、前年同期比8.8倍の大幅増益を確保することができた。皆さんの努力に改めて感謝する」とし、「第3四半期は、ブランド事業は、厳しい円安環境下にありながらも、当面の目標としている営業利益率7%を上回る水準を確保した。また、デバイス事業も、第1四半期、第2四半期に引き続き、赤字幅が着実に縮小しており、総じて順調な業績となった」と総括。「こうした結果を受け、今回の決算では、通期の営業利益予想を、当初の100億円から200億円に上方修正した。一方、最終利益は、今後発生が見込まれるグリーンフロント堺の不動産売却に伴う収益や、アセットライト化、ディスプレイデバイス事業の構造改革に関連する費用など、合理的算定が現時点では困難なことから非公表とした。だが、当初予想の50億円を上回る見通しである」とした。

新たな修正値では、売上高は300億円増額の前年比8.3%減の2兆1300億円、営業利益は100億円増額して200億円を見込み、黒字化という当初計画を維持した。また、経常利益は90億円減額の10億円とし、これも黒字化の計画を維持する。

  • 2024年度Q3決算の発表の場では、通期黒字化を最低限の目標としていた

決算発表以降、メディアやアナリスト、金融機関、格付け機関をはじめとした様々なステークホルダーから、「第3四半期の営業利益が市場予想を上回り、ポジティブな印象」、「ブランド事業が増益、デバイス事業が赤字縮小、全社で大幅増益と良い内容の決算だった」、「アセットライト化も着実に前進しており好印象など、前向きな評価があることも紹介した。

発表は2025年5月、注目すべき中期経営計画

沖津社長兼CEOは、「2024年度も残すところ1カ月半を切った。今回、上方修正した通期営業利益目標を、社員全員の力でやり遂げ、来年度以降の再成長に弾みをつけていこう」と呼びかけ、「ゴールはもう目の前である。あともうひと踏ん張り、最後の努力をお願いする。ともに頑張ろう!」と、黒字必達の目標に達成に意欲をみせた。

2024年度を最終年度とする「中期経営方針」を達成し、それを発射台とする「次期中期経営計画」は、果たしてどんなものになるのだろうか。

沖津社長兼CEOが語るように、従来の延長線上に留まらない、将来を見据えたよりチャレンジングな目標は、具体的な数値計画が加わることで、シャープの復活に向けた明確な道しるべになるだろう。

2025年5月に発表される「次期中期経営計画」の内容がいまから楽しみだ。