猛烈な暑さに対策するための製品・サービスに特化した展示会「猛暑対策展」が、東京ビッグサイトで開催中(会期:7月24日〜26日)。夏の暑さをしのぎ、熱中症を防ぐさまざまな工夫を、会場で実際に見てきました。
“飲む氷”アイススラリーに特化した冷蔵庫。シャープ参考出品
シャープブースで参考出品していたのは、“飲む氷”アイススラリーに特化した冷蔵庫。業務用製品として開発中で、7月から建設現場やスポーツ関連の複数企業・団体の協力の下、テストマーケティングを開始しているそうです。レンタルやリースなど、販売方法についても検討中とのこと。
アイススラリーとは聞き慣れない言葉ですが、かんたんに説明すると、液体をシャーベット状に凍らせつつ飲めるようにしたものを指します。細かな氷と液体が混じった状態になっていて流動性があるので、氷よりも飲み込みやすく、冷たい飲料よりも身体を冷やしやすいのが特徴。すでにいくつかの飲料メーカーがパウチ状のパッケージに収めた製品を展開していますが、特殊な作り方をしていることもあって、値付けが若干高いのが課題だそうです。
シャープでは、市販のボトル飲料から手軽にアイススラリーが作れることをコンセプトにした冷蔵庫を新たに開発。小型冷蔵庫で培った温度制御技術を応用し、猛暑・遮熱対策に使えないか模索した結果、アイススラリー作りに特化した専用品ができたというわけです。
実際にこの冷蔵庫から取りだした飲料ボトルでアイススラリーを作ってもらい、試飲してみましたが、確かに冷たく冷やしただけの飲料よりもスゥッと身体の芯から冷えていくような感じがしました。
説明員によれば、アイススラリー冷蔵庫は「温度帯の制御の細かさ」が通常の冷蔵庫とは異なるのが特徴だといいます。一般的な冷蔵庫の冷凍室であればマイナス18度まで冷やせますが、それでは液体がカチコチに凍ってしまうので、凍り始める温度以下になっても氷にならず、液体の状態を保つ「過冷却」と呼ばれるおもしろい現象を応用。マイナス5度程度で飲料ボトルをひと晩保管しておき、飲みたいときに冷蔵庫から出して強く振るだけで、アイススラリーが作れるようにしました(飲料によっては凍結したり、アイススラリーにならないこともあるとのこと)。
シャープでは、液晶材料の研究で培った技術をベースに開発した適温蓄冷剤「TEKION」を暑熱対策ソリューションとして展開しており、それに続き開発を進めているのが今回のアイススラリー冷蔵庫というわけです。製造業や土木関連業界などB to Bで展開していくことを想定しており、現在はプロスポーツチームにも実証実験というかたちで使ってもらっているそうです。
“唯一の水冷式”着るエアコン、富士通ゼネラルブースで体験。暖房にもなる
富士通ゼネラルのブースでは、2023年に発売したウェアラブルエアコン「Cómodo gear i3」を中心とした体験コーナーが注目を集めていました。
【訂正】初出時、実測23度と表示された写真を掲載していましたが、展示状態に不備があったため、当該写真をメーカー提供の写真に差し替えました(7月26日 12:00) |
Cómodo gear(コモドギア)シリーズは、炎天下の作業環境で働く人々のために開発されたB to B向け製品。3つのサーモモジュール(ペルチェ素子)を内蔵したネックバンドと、ペルチェ素子を冷やす液体を流すチューブ、ラジエーターとバッテリーで構成しており、“エアコンメーカーにしかできない唯一の水冷式”であることが最大の特徴とアピールしています。最新版の「i3」は冬でも使えるよう、暖房機能も追加しています。導入費用はレンタルで月額10,000円(税別)、買い切りで1台60,000円(同)。
首にある頸動脈を、アルミプレートでおおったペルチェ素子を使って冷やす点は一般的なネッククーラーと変わりませんが、市販製品ではペルチェ素子の発熱を空冷式で冷やすものがほとんど。
コモドギアシリーズは、ペルチェ素子を液体で冷やす水冷式を採用しており、放熱能力が高く「空冷式では得られない本格的な冷却効果を提供できる」点を特徴としています。たとえば周辺が40度の環境では、外気温よりも20度温度を下げられるとのこと。ブースの説明員は、同シリーズは空気を通さなくてよいこともあり、鉄鋼業界など熱源に近い現場から引き合いがあると話していました。
ブースでは冷却モードに加えて暖房モードの実演も行っており、首元をしっかり冷やしたり、反対にゆっくりと温めていったりするのを実感できました。冷却モードから暖房モードに切り替えるのにかかる時間は30秒ほど。なお、暖房モードではペルチェ素子を冷やす必要がないので、水冷の仕組みはストップするそうです。
連続使用時間は約2〜7時間で、冷却モードはノーマル、フル、エコの3つから選べ、ノーマルでは4時間使用可能。バッテリー部には国内メーカーのセルを採用し、延焼防止に配慮した設計になっているとのこと。作業環境に合わせて、ポシェットやボディバッグ、ワークベストなど5つの装着方法が選べます。
赤ちゃんと外出するときの暑さ対策「空調ベビーケープ」
空調服のブースで注目したのが、ダッドウェイのオリジナルブランド「BabyHopper」(ベビーホッパー)と共同開発した「空調ベビーケープ」。赤ちゃんが涼めるように、ケープの内部に空気を通す空冷ファンを備えた製品で、抱っこひもとベビーカーのどちらにも固定して使えるように設計。首がすわった赤ちゃんを対象としています。
空調服が展開するファン付きウェア「空調服」とBabyHopperの共同開発は、実はこれが2回目。「空調抱っこひもカバー」と「空調ベビーカーシート」というふたつの製品を2020年に発売しており、赤ちゃんの暑さ対策の新しい定番製品として多くのファミリーに認知されたそうです。
2024年4月に新しく投入したオールインワンタイプ「空調ベビーケープ」では、「抱っこひもとベビーカーのどちらにも使えるタイプが欲しい」との声を受け、前回のコラボ商品の課題を解決。ダッドウェイの直販ストアや店舗などで12,100円で販売していますが、直販Webストアをのぞいてみると人気のためか、既に売り切れていました。
ケープの下部には小型ファンがあり、外から取り込んだ空気がケープの中を流れて赤ちゃんの汗を気化・冷却。内部の空気は首元から排出するようになっています。全体に風を行きわたらせるメッシュ構造「スーパースペーサー」がポイントになっているとのこと。風量は2段階で調整でき、屋外では「強」、冷房の効いた屋内で「弱」など、暑さや場所に合わせた使い分けが可能です。電源は単3形乾電池×4本で、充電タイプであれば繰り返し使えるとしています。
抱っこひもとベビーカー(バンパーバーがあるタイプ)のどちらにも装着できるよう、4点で固定するパーツを装備。表生地には紫外線カットとはっ水加工を施し、「夏のファッションになじむベーシックなカラー」にもこだわりました。ケープは手洗いできるよう、空冷ファンなど電気部品を着脱可能。本体サイズは68×87cm(幅×高さ)、重さは電池含めて約451g。
19,800円で買えるサンコー「全身水冷スーツ」、ネッククーラーも多数展示
サンコーブースの前面では、首掛け式の「ネッククーラー」シリーズを大量展開。さらに、冷水を全身に循環させる「全身水冷スーツ」(19,800円)などさまざまな冷感ギアを紹介していました。
全身水冷スーツは、上半身のベストと、太もも部分に巻いてセットするパンツパーツで構成したフリーサイズの製品。ベストの背部に冷水を入れる容量2Lのタンクがあり、各部に張り巡らしたチューブに冷水を流して循環させることで涼を取れるようになっています。タンクには氷水や凍らせたペットボトルを入れて使い、ぬるくなったら入れ替えて冷たさを継続させられるといいます。説明員によると、水を送り出すポンプとタンクをつなぐパーツは着脱可能で、水漏れを起こさないよう精度の高いのものを使っているのも強みとのこと。
薄型設計で、水冷スーツの上からジャケットや作業着などを着られるのも特徴。下半身のパンツパーツを外してベストのみ着用することもできます。電源はモバイルバッテリーで使えるUSB給電式で、10,000mAhのモバイルバッテリー使用時は約21時間使用可能(強モード時)。強/弱/エコの3モード切り替えに対応しています。