富士通ゼネラルは2月14日、ルームエアコン「ノクリア」の新ミドルクラスとなるWシリーズを発表しました。2月23日から順次発売し、価格はオープン。推定市場価格は、6畳用から29畳用で22万円前後~34万円前後(税・工事費別)です。
8機種のラインナップと対応畳数は以下の通り。
- 6畳用「AS-W223N」
- 8畳用「AS-W253N」
- 10畳用「AS-W283N」
- 12畳用「AS-W363N」
- 14畳用「AS-W403N2」
- 18畳用「AS-W563N2」
- 20畳用「AS-W633N2」
- 23畳用「AS-W713N2」
Wシリーズ最大の特徴は、2022年6月からの新しい「省エネ基準」を8機種すべてがクリアしている点。昨今の物価高や電気料金高騰を考えると、省エネ設計による節電効果は家計にとってありがたいところです。本体を紹介する前に「そもそも省エネ基準って何?」というところを整理しておきます。
新「省エネ基準」とは?
経済産業省では、「エネルギーの使用の合理化等に関する法律(省エネ法)」に基づき、エネルギー消費効率の向上を図ることが必要な電化製品などについて、製造事業者が目標年度までに満たすべき「省エネ基準」を設定しています。
省エネ基準(基準エネルギー消費効率)とは、電化製品などに対して定めた、省エネ効率目標の基準値のこと。省エネ基準を目標年度クリアできている製品には、家電量販店などで緑色の「統一省エネラベル」が貼られています。
これまで各メーカーは、2004年・2010年を目標年度として(壁掛形の家庭用エアコン。壁掛形以外とマルチエアコンは2007年・2012年)、省エネ基準をクリアしてきました。
そして、2022年5月31日に家庭用エアコンの新しい省エネ基準について定めた告示が公布、6月1日から施工されました。目標年度は壁掛形が2027年度、壁掛形以外とマルチタイプが2029年度です。
この目標値は、ユニット形態や、冷房能力、仕様(一般地/寒冷地)に応じた10区分で設定。年間を通してどれだけの効率で部屋を冷やしたり暖かくしたりできたかを表す「APF」(通年エネルギー消費効率)という値で指定しており、数値が大きければ大きいほど、高い効率で電気を冷気や暖気に変えていることになります。
新省エネ基準は、旧省エネ基準と比較し、最大で34.7%(壁掛形4.0kW)引き上げられ、より高い水準で省エネ効率が求められるようになりました。例えば、壁掛形エアコン(冷房能力2.2kW)は、旧基準のAPFが5.8だったのに対し、新基準は6.6。メーカーは、今後、緑色の省エネ統一ラベルを取得するために、この目標値を達成する必要があります。詳細な基準表は経済産業省のニュースリリースを参照のこと。
従来モデルの人気機能も山盛り
このように、より達成が厳しくなった新しい省エネ基準を、Wシリーズの全8機種はクリアしています。富士通ゼネラルの空調機商品企画部 主席部長 平律志氏は「元々APF6.6という基準をクリアしているモデルは高級機には存在していたが、(Wシリーズは)ミドルクラスのため、いかにコストを抑えつつ省エネ効率を上げるかという点に注力した」とコメント。達成するために、最適な熱交換器の設計・調節なども行ったといいます。
ノクリア独自の清潔・除菌機能である「ノクリア・クリーンシステム」の拡充も図っています。なかでも特筆したいのは、清潔機能が強化されたプレミアム機のXシリーズ2023年モデルと同様に、室内機フィルターが「ウイルカット・フィルター プラス」へと強化され、送風路が「防カビ送風路」となった点。
ウイルカット・フィルター プラスは、室内機のフィルターにウイルス抑制作用のあるコーティングを施してウイルスや細菌を抑制し、カビの繁殖も防ぐ「ウイルカット・フィルター」を強化したもの。新しくアレル物質(花粉・ダニの死がい・カビ)の抑制効果も追加しています。
防カビ送風路は、防カビ効果を持つ材料を採用した室内機内の送風路。風の吹き出し口でも、カビの繁殖を抑制します。
なお、ノクリア・クリーンシステムにおいてXシリーズと異なるのは、室内の空気を清浄化する「プラズマ空清」や、フィルターに抗菌加工を施した「抗菌空清フィルター」、カビが増殖しやすい条件(温度・湿度など)がそろっていないかを1日1回確認し、そろっているとカビ抑制運転を自動で行う「カビ抑制タイマー」を搭載しない点(Xシリーズはいずれも搭載)。より高機能な清潔機能を求めるユーザーには、Xシリーズが適しています。
暖房機能は、霜取り運転で暖房を一時的に停止させる前に、あらかじめ温度を上げておいて室温の低下をおさえる「ホットキープ除霜」を搭載。また、最大12m先まで暖気を運ぶ「ロング気流」と、180度まで暖気を広げる「ワイド暖房」で温かい風を部屋の隅々まで届けます。
“手すきで作られた紙”のようなデザイン
室内機のパネルも印象的です。富士通ゼネラルはこれまで、こだわりとぬくもりを感じる「CRAFT DESIGN series」をコンセプトとして、室内機のデザイン向上に取り組んできました。第1弾として、室内機パネルにファブリック調のデザインを取り入れた「SVシリーズ」(販売終了予定)、第2弾として、陶器の造形を樹脂成型パネルで表現した「Xシリーズ」があります。
第3弾となったWシリーズは、“手すきで作られる紙”のような繊細な陰影を表現する紋様を施し、温もりある自然な風合いを演出します。新製品発表会に展示してあったモックを触ったところ、「上質な和紙」を触っているような感触。見る方向によって表情が変わるのも楽しく、飽きが来ないデザインに仕上がっていると感じました。
ミドルクラスという立ち位置ながら、8機種すべてが省エネ基準をクリアしているWシリーズ。見た目のほかに、エネルギー消費効率の高さによる節電効果と、フラッグシップシリーズより本体の価格を抑えられる点が魅力的でした(フラッグシップはそのぶん高機能ですが)。電気代や灯油代が高騰している今、エアコン購入を考えている人には一考の価値アリです。