日産自動車と日立ビルシステムは1月27日、電気自動車からの給電で停電時のエレベーター利用を可能にするV2Xシステムの普及に向けた協創を開始した。
V2Xというワードは自動運転絡みの通信技術を指すこともあるが、ここではそちらの用例ではなく、V2H(Vehicle to Home)やV2B(Vehicle to Building)のような「駐車中の電気自動車から他の何かに給電し、走行用バッテリーを電源として活用する」アイデアの総称としての意。
日立ビルシステムは日立グループ内で昇降機の設計開発からメンテナンスまでの一連の事業を担う企業。今回の協創では、自然災害などによる停電時にも社会生活を継続できるよう、エレベーター用V2Xシステムの実現・普及を目指す。
近年、高層ビル・マンションでは停電時にエレベーターなど共用部の重要設備が使えなくなる事態を防ぐために蓄電池などの非常時電源を備える動きも進んでいるが、導入コストの課題に対するソリューションとして、電気自動車の活用を提案していく。
協創の第1弾として、日産の軽自動車「サクラ」と日立標準型エレベーター「アーバンエース HF」をV2Xシステムでつなぎ、電気自動車からの給電でエレベーターの運転を継続する実証実験を行った。
6階建ての試験棟に設置されたエレベーターを停電時向けの「低速運転モード」に設定し、実利用を想定した重りを積み込んで1階と6階の往復運転とドアの開閉を繰り返し、実稼働データを計測した。バッテリー容量20kWhのサクラからの給電で運転を続けたところ、サクラのバッテリー残量は100%→46%と半分近く余力を残しながら10時間・263往復の連続稼働に成功した。