ニコンがZマウントのAPS-Cミラーレスの新製品「Z fc」を発表しました。若年層に人気のフィルム一眼レフカメラ「FM2」風のクラシックデザインや薄型ボディを採用しつつ、2019年発売のAPS-Cミラーレス「Z 50」を上回る性能や装備に仕上げており、実力も十分。ブラックの張り革を全6色の別カラーに張り替えるユニークなサービス(期間限定で無料)も実施します。古くからニコンのカメラを愛用していた熱心なファンだけでなく、これまでニコンがリーチできていなかった「ニコンのデジタルカメラを買ったことはないが、レトロな一眼レフやフィルム風の色味を好む新規層」の獲得を狙う意欲作に仕上がっています。

  • ニコンがクラシックなフィルム一眼レフカメラ風のデザインを採用したAPS-Cミラーレスの新製品「Z fc」(中央)を発表。往年のフィルム一眼レフ「FM2」に似たスリムデザインで、フィルムカメラに興味を持つ若年層を狙う

価格はオープンで、ボディ単体モデルが13万円前後、ズームレンズキットが15万円前後、特別デザインの単焦点レンズ「NIKKOR Z 28mm f/2.8(Special Edition)」が付属する単焦点キットが16万円前後。発売は7月下旬の予定です。ボディカラーはシルバーのみを用意します。

デザインにこだわりつつ、Z 50を上回る機能に仕上げている

Z fcは、基本的な装備や機能をZ 50とほぼ同等に仕上げながら(動作撮影時の瞳AFなどZ 50にはない機能も一部搭載)、往年のフィルム一眼レフ「FM2」に似せたデザインや、ダイヤルを多用した操作性に仕上げているのが特徴です。FM2は、さまざまな個性を持つフィルムで撮影したいと考える20~40代の若年層に人気を集めており、見た目のインパクトでそのような若年層にリーチしたいという狙いがあります。

  • 基本性能はAPS-Cミラーレス「Z 50」(右)と基本的に同じで兄弟モデルといえるが、見た目はガラッと変わっている

  • Z 50ではタッチ操作にしていた拡大縮小などのボタンは、Z fcでは物理的なボタンになったのがポイント

  • 撮像素子はAPS-C型センサーを採用。ボディの外装はマグネシウム合金製で、全体に質感は高い

  • 一般的なモードダイヤルをなくし、ダイヤルやレバーを多用した操作部。実用性はともかく、デザイン的にワクワクさせられる

  • シャッターボタンの手前には、絞り値を表示する小さなパネルを搭載する。ストラップ取り付けはニコン伝統の三角環を採用する

  • キットモデルに付属する特別デザインの単焦点レンズ「NIKKOR Z 28mm f/2.8(Special Edition)」を装着したところ。ボディの薄さが分かる

  • ファインダー接眼部はニコン上位機種の象徴となっていた丸窓をおごる

各種操作はダイヤルを利用したマニュアル操作も可能ですが、これまで通りiメニューを用いた画面+ボタンの操作にも対応。「かつてのフィルム一眼レフ感覚で操作したい」と考える人も、「これまでのデジタルカメラで扱い慣れた操作で使いたい」と考える人のどちらも満足できるようにしています。

  • ダイヤル操作ではなく、iメニューからさまざまな設定を変更しての撮影も可能

  • 電子ダイヤルは前後に搭載する

50~70代を中心とした古くからのニコンファンのハートをつかむ工夫も凝らしています。ファインダー接眼部は、ニコンのレンズ交換式カメラで上位モデルのみに用いられていた「丸窓」にしたほか、ペンタ部の「Nikon」ロゴはフィルム一眼レフ「F3」まで用いられていた旧ロゴを採用。2013年登場のクラシック風デジタル一眼レフカメラ「Df」と見た目は似ていますが、だいぶスリム化&軽量化が図られており、ふだん使いに向くカメラに仕上がっています。

  • ペンタ部のNikonロゴはFM2と同じ旧ロゴを採用。プリントではなく、ちゃんとくぼんでいる

  • 「ニコンの伝統」と「カジュアルに使える」の意味合いを込めて名付けられたZ fcのロゴ

  • 単焦点キットには、外装をAiニッコール風のデザインに変更した特別モデルの単焦点レンズ「NIKKOR Z 28mm f/2.8(Special Edition)」が付属する。年内をメドに、単品でも販売する予定

  • Dfのキットレンズとして用意していた「AF-S NIKKOR 50mm f/1.8G(Special Edition)」とデザインは似ている

  • NIKKOR Z 28mm f/2.8(Special Edition)は前玉が小さいのが物足りない

フィルム一眼レフカメラ「FM2」と比較

  • 今なおファンの多いフィルム一眼レフ「FM2」(右)と並べたところ。FM2のテイストをうまく再現している

  • ペンタ部周辺の張り革の造形もそっくり

  • バリアングル液晶を内側にして格納すれば、フィルム一眼レフ感覚で撮影できる

  • ボディの薄さもFM2に迫る。この点は評価したい

デジタル一眼レフカメラ「Df」と比較

  • Fマウントのデジタル一眼レフカメラ「Df」(右)と並べたところ。ボリュームはだいぶ異なる

  • Dfと比べると、Z fcは高さがだいぶ抑えられている

  • ダイヤルの配置や役割はだいぶ異なる。ちょっと特殊なDfに対し、Z fcのほうが明らかに扱いやすそう

  • スリムなZ fcと並べると、Dfの分厚さに改めて驚く

6色のおしゃれな張り革にチェンジ可能 期間限定で1回は無料

購入後の拡張性や好みに応じたアレンジを用意している点も注目できます。

本体前面は凹凸のないスリムなデザインに仕上げていますが、別売のグリップ「Z fc用エクステンショングリップ Z fc-GR1」(希望小売価格は18,700円)を装着すれば、握りやすい形状のグリップを加えられます。このグリップはアルミニウム製なので、手に触れる部分の触感が高まるのも魅力といえます。

  • オプションの「Z fc用エクステンショングリップ Z fc-GR1」を装着すると、握りやすい形状のグリップが備わり、ホールド性が向上する

ボディやペンタ部に張られたブラックの張り革を張り替える「プレミアムエクステリア」も用意します。交換できる張り革は全6色で、料金は4,950円(配送料は別途1,870円必要)。数量限定で、1回のみ無料で好みの色に張り替えられる「プレミアムエクステリア張替キャンペーン」も実施します(配送料のみ負担)。さらに別の色の革に張り替えたり、オリジナルのブラックに戻すことも可能です(いずれも有料)。

  • 張り革交換サービスで提供するカラフルな張り革。カラーはホワイト、ナチュラルグレー、サンドベージュ、コーラルピンク、ミントグリーン、アンバーブラウンの6色を用意

  • ホワイトモデル(モックアップ)

ストラップは、ニコンのイメージカラーであるイエローの配色をなくし、モノトーンに仕上げたオリジナルストラップが付属します。イエローは服のコーディネートに合わない…と感じていた若年層に評価されそうです。

  • ニコンイエローを排したZ fcの付属ストラップ(下)。ブラックの部分はつや消しの素材の上につやありのプリントが施されており、立体感がある

風変わりに見えるZ fcのネーミングですが、「f」は伝統のFマウントのFに加えて「融合」を意味する「Fusion」のF、「c」はカジュアル(Casual)のCからきているそうです。ニコンのDNAを受け継ぐカメラを、多くの人に日常的に携帯して気軽に使ってほしい、という思いが感じ取れます。