ゼンハイザーは、ノイマン(Neumann)ブランドの開放型スタジオリファレンスヘッドホン「NDH 30」を7月28日に発売する。価格はオープンプライスで、店頭価格は99,000円前後を見込む。予約受付を7月21日に開始した。

  • NDH 30

NDH 30は、密閉型スタジオリファレンスヘッドホン「NDH 20」(2019年発売)をブラッシュアップし、ノイマンが培ってきたKHモニタースピーカーの音をヘッドホンで再現することを目指して開発。新開発のドライバーを搭載して「KHモニタースピーカーのような高い解像度と鋭い定位感」を追求しており、ハウジングの構造もNDH 20と異なり開放型に変更。さらに、ドライバー以外の部分も性能向上を図っている。なお、NDH 20は引き続き併売する。

  • NDH 30は、KHモニタースピーカーの音をヘッドホンで再現することを目指して開発

ノイマンはモニタースピーカーにおいて、「録音された音を正確に再現する」というサウンド哲学に基づいた製品作りを続けてきている。今回、ゼンハイザーでハイエンドヘッドホン「HD 650」や「HD 800」、「HE1」の開発に携わってきたアクセル・グレル(Axel Grell)氏が、フリーランスとして現在ノイマンに所属しており、NDH 30の開発に深く関わっているとのこと。

  • ゼンハイザーで高級ヘッドホンの開発に携わってきたアクセル・グレル(Axel Grell)氏が、NDH 30の開発にも深く関わっている

NDH 30の主な特徴

一般的に、モニタースピーカーでの正確なモニタリングを行うには、フラットな特性を持つスピーカーを置いた空間において、定在波を減らすために平行ではない壁にしたり、フラッターエコーを減らすために音響拡散体を後壁にしたり、天井や側壁の反射、低音の共鳴を減らすための吸音材を置くといったルームアコースティックの調整が必須。さらにスピーカー側でも調整をする必要がある。

ノイマンは、モニタースピーカーのKHシリーズに加えて、自動で音場補正を行えるシステム「MA 1」と専用ソフト「Automatic Monitor Alignment」を提供している。NDH 30は、これらで調整したKHモニタースピーカーの再生音をヘッドホンで再現することを目指して開発した。

NDH 30は、低音域のレスポンスとリニアリティを向上させた新開発のダイナミック型ドライバー(トランスデューサー)を搭載している。従来のNDH 20と同様にネオジウム磁石を用いており、サイズも38mm径で共通だが、大きく異なるのは振動板の「膜」の枚数と素材。NDH 30で採用している新開発の膜素材は、NDH 20が2枚の膜で生み出していた特徴を、1枚の膜で実現する。

  • 新開発のダイナミック型ドライバーの振動板(右)と、従来のNDH 20の振動板(左)の違い

従来、NDH 20ではゼンハイザーの特許技術を含むDoufol(デュオフォール)膜を用いたドライバーを搭載しており、インパルス応答を良くする硬いフォイルと、部分的な共振を減衰させる柔らかいフォイルの2枚の膜を積層して使っていた。

NDH 30ではこれを1枚にし、共振周波数を低くしたことで低音域のレスポンスとリニアリティを強化。剛性と部分共振の減衰により、過渡応答(Transient Response)を向上させ、「KHモニタースピーカーのような高い解像度と鋭い定位感」を実現するという。

この新ドライバーのハウジング内での取り付け方にも工夫があり、耳に対して真横ではなく、斜めに角度を付けて配置。これによって、まるでステレオスピーカーを前にして音を聞いているときのような“最適なステレオトライアングル”を再現するという。このほか、NDH 30の歪率については、NDH 20の0.1%以下という高いパフォーマンスを超える、0.03%以下という数値を達成している。

  • 耳に対して斜めに角度を付けてドライバーを配置することで、“最適なステレオトライアングル”を再現

  • 開放型のハウジング

NDH 30専用のケーブルは新規設計で、一般的なヘッドホンケーブルと違って左右チャンネルのグランドを分離。チャンネル間の共通グランド導体の抵抗による電圧降下で生じるクロストークを大幅に低減し、チャンネルセパレーションを向上させたという。ケーブルは着脱可能で、ヘッドホン側の端子は2.5mm 4極バランス対応。入力側は3.5mmステレオミニプラグで、スタジオ機材でよく使われるアンバランス接続でも使える。

  • ケーブルは着脱可能

剛性感を維持しつつ軽量化を図り、長時間のスタジオワークでも快適な装着性を追求。具体的には、鉄製の壊れにくいヘッドバンドやタフなイヤーカップなどはNDH 20を踏襲しつつ、約10%軽量化。ケーブルを除いた重さは約352gとした(NDH 20は約388g)。イヤーパッドは耳あたりの良い素材を使い、「開放型という構造も相まって、大型ヘッドホンながら長時間の装着が苦にならない」とする。

周波数特性は12Hz~34kHz(-3dB)、最大許容入力は1,000mW、音圧は104dB SPL(1kHz/1Vrms)。インピーダンスは120Ω。6.3mm標準アダプタが付属する。

  • 剛性感を維持しつつ軽量化も図った

  • パッケージに収めたところ