毎年、春と秋の年2回開催されているヘッドフォン祭。コロナ禍でしばらくオンライン開催が続いていましたが、4月29日に「春のヘッドフォン祭 2022 mini」が約2年半ぶりに展示会形式で、東京・中野サンプラザにおいて開催されました。弊誌でもおなじみのオーディオ・ビジュアル評論家、野村ケンジ氏が当日会場で注目した3製品について語ります。

実は有線接続の音がイイ!? Austrian Audio「Hi-X25BT」

  • Austrian AudioのBluetoothヘッドホン「Hi-X25BT」

元AKGオーストリア本社のメンバーが中心となって設立されたオーディオメーカー、Austrian Audioの初となるBluetoothヘッドホン(直販22,000円)。これまでレコーディング用マイクやモニターヘッドホンなど、プロフェッショナル向け製品をメインにラインナップしてきたAustrian Audioだが、実はオーディオ製品のOEM/ODM開発・製造も手がけており、そのなかにはワイヤレス製品も含まれている様子。そのためか、初のワイヤレスヘッドホンながらも完成度はなかなかのもので、注目に値する製品となっていた。

シリーズ共通の洗練されたメカニカルなデザインはもとより、軽さと低反発イヤーパッドがあいまった装着感のよさ、持ち運びしやすいコンパクト設計、Bluetoothワイヤレス接続に加えてUSB-C接続やアナログの有線接続も可能な汎用性の高さ、シリーズ共通のオリジナル44mm径ダイナミック型ドライバーによる良質なサウンドなど、使い勝手、音質の両面から魅力ある製品に仕上がっている。

なかでも、いちばんの魅力となっているのが「アナログでの有線接続時の音の良さ」だ。Bluetoothワイヤレスヘッドホンの有線接続をほめるのもなんだが、表現のダイナミックさ、キレのよさでは上位モデルの迫るほどの実力を持ち合わせている。屋外ではワイヤレス、室内では有線接続を活用することで、「Hi-X25BT」の実力を十二分に発揮させられるだろう。コスパもよく、満足度の高い製品といえる。

  • シリーズ共通のメカニカルなデザインや装着性、使い勝手も良好なHi-X25BT

音良し! 操作性良し! Shanlingの小型ヘッドホンアンプ「UA5」

  • Shanlingの小型ヘッドホンアンプ「UA5」

ポータブルDAP(デジタルオーディオプレーヤー)をメインとしつつ、イヤホンやネットワークプレーヤーなど、幅広い種類のオーディオ製品をラインアップする中国・深センのオーディオブランド、Shanling(シャンリン)。

同ブランドの新製品「UA5」(直販32,780円)は、スマートフォンやパソコンに接続する小型ヘッドホンアンプ、今風の表現をすれば「DAC内蔵インライン・ヘッドホンアンプ」などと呼ばれるカテゴリーに当たる製品だが、その造りはかなりユニークな、特徴あるスタイルにまとめ上げられている。

まず、外観はこの手の製品にしては珍しい、ロータリー式コントローラーを装備。しかもプッシュ操作もできるので、音量調整やさまざまな設定を行うのも容易だ。これは、DAPにもダイヤル+プッシュ操作ボタンを採用し続けているShanlingならではのこだわりといえる。

さらに、USB端子からの給電とは別に、本体内蔵のバッテリー(容量220mAh)からアナログ部に給電を行う「ハイブリッドモード」を用意。さらなる高音質化とスマートフォンのバッテリー消費を低減するという、2つのメリットを実現している。

音質面でも、ESS製DACチップ「ES9038Q2M」のデュアル搭載など、徹底したこだわりの結果もあってダイレクト感の高いクリアなサウンドを楽しませてくれる。パソコン用のデジタル接続ヘッドホンアンプとしてもこれで充分、と思わせる実力の高さだ。

  • UA5の仕様一覧。なお、通常カラーは黒一色だが、会場には赤いカラーバリエーションもあった

お値段約50万円。上質なDITA最上位イヤホン「Perpetua」

  • DITAの最上位イヤホン「Perpetua」(パーペチュア)。製品名の由来は、英語で「永遠の」を意味するperpetualから来ているそうだ

独自のサウンドポリシーによって日本でも人気を集める、シンガポールに本社を置く高級イヤホンブランド、DITA。その最新モデル「Perpetua」(実売50万円前後)がお目見えした。

これまでの製品では、エッジの効いたイヤホン本体デザインが特徴だったが、Perpetuaは一変して丸みを帯びたデザインを採用。表面処理と合わせて、格段に上質な雰囲気を持つようになった。

肝心の音質も、かなり雰囲気が変わっている。これまではキレのよさや音のクリアさを重視した、エッジの鋭いサウンドを聴かせてくれていたが、応答性のよさやディテール表現のきめ細やかさは変わらず、それでいて高域が鋭すぎない、比較的耳馴染みのよい音色傾向にシフトしている。おかげで、クセのあるサウンドバランスを持つJ-POPを聴いても、鋭すぎずヘビーすぎず、聴きやすい音を楽しめるようになった。

  • Perpetuaには、テイジンの高い強度特性をもつ特殊樹脂、TEONEXを使った振動板を採用した、新開発の12mmダイナミック型ドライバー「PPT-D(Perpetua-Driver)」を搭載。内部配線にはAUDIO NOTEの純度99.99%の純銀線を使うなど、音質を突き詰めた設計となっている

もうひとつ、DITAの別売ケーブル「OSLO」にも採用されていた交換式プラグ(Awesome Plug)がさらなる進化を推し進め、着脱がいちだんと容易に、かつしっかりしたものになっている点も、地味ではあるが注目ポイントといえるだろう。

価格的にはハイエンドな製品だが、それに見合った高い満足度を得られる製品となってくれそうだ。

  • DITA製品で採用されてきた交換式プラグが「Awesome Plug2」に進化。3.5mm、4.4mm、2.5mmの3種類のプラグを付け替えて対応するヘッドホン出力につなげられる

  • Perpetuaの製品内容。パッケージは開閉時の感触にもこだわり抜いた設計を採用している