• 「Nreal Air」au版:39,799円、ドコモ版:39,800円

auとドコモが、4万円切りのARグラス「Nreal Air」を3月4日に発売しました。

Nreal Airは、対応Androidスマホと接続することで「AR体験」が楽しめるサングラス型ディスプレイ機器。アクティベーションやファームウェア更新には専用アプリ「Nebula」をインストールしたAndroidスマホが必要ですが、いったんアクティベーションを済ませれば「Display Port Alternate Mode」に対応したデバイスからNreal Airに映像を出力可能。具体的にはノートPCやiPadなどの外部ディスプレイとしても利用できます。

なお、同時発売の「Nreal Streaming Box」と組み合わせれば、Android、iOS、macOS、Windows端末とワイヤレス経由でミラーリング表示が可能です。ただし、専用アプリ「Nebula」が使えない、DRMコンテンツを視聴できないなどの制限があります。

専用アプリ「Nebula」には、「MR Space(MRモード)」、「Air Casting(フルスクリーンミラーリング)」、「Air Casting(サイドスクリーンミラーリング)」の3つのモードが用意されており、MR Spaceでは空間内に最大5枚までの「Web View画面」を表示可能です。

  • Air Castingはスマートフォンの画面をミラーリング表示する機能。フルスクリーンでは全画面に、サイドスクリーンでは画面半分に表示します

Nreal Airは加速度センサー、ジャイロスコープ、磁力計を搭載し、頭の回転や傾きを検知する「3DoFヘッドトラッキング」に対応しており、MR Spaceで表示しているWeb View画面の位置を固定できます。

Air Castingはスマホの画面をミラーリングする機能で、フルスクリーンと、左半分だけに表示するサイドスクリーンの2種類が用意されています。

  • 「Web View」はアプリ内でウェブページを表示するための機能。専用アプリ「Nebula」はMR Spaceで「Web View」を利用して、最大5枚のウェブ画面を表示できます。「3DoF」モードでは頭を回転させたり、傾けてもウェブ画面の位置は固定されていますが、「0DoF」モードに変更すると頭の動きにウェブ画面が付いてきます

画面サイズの表記から期待を膨らませすぎないようにご注意

Nreal Airは1,920×1,080ドットの有機ELディスプレイを左右に1枚ずつ搭載。ディスプレイの輝度は400cd/平方メートル、コントラスト比は100,000:1、色域はsRGB比108%。視野角は46度で、4mで130インチ(Air Casting時)相当、6mで201インチ(MR Space時)相当で表示できると謳われています。

ちなみに筆者が約60cmの近距離で実測したところ、Nreal Airの画面サイズは20.5インチ前後でした。4m、6mでの画面サイズ表記から期待を膨らませすぎないようにご注意ください。

本体サイズは使用時が148×52×159mm、収納時が148×52×60mm。重量はNreal Air単体で実測82.7g、USB Type-C ケーブルと合わせて実測111gです。

Nreal Airを数時間装着すること自体は超余裕ですが、サングラス、メガネのようなかけ心地とまではいきません。筆者の体感的には2~3時間なら問題ないですが、6~8時間はちょっと厳しいかなというところです。

各部を見ると、右ツル下にはマイク、ディスプレイのオン/オフボタン、輝度ボタン、立体音響スピーカー(右)、左ツル下には立体音響スピーカー(左)、右ツル上にはマイク、左ツル最後尾にはUSB Type-C端子が配置されています。外観は意外とシンプルです。

  • 前面。外界を認識するカメラ、センサーは搭載されていません

  • 顔側。中央には近接センサーが内蔵されています

  • 外レンズ手前に、ハーフミラーが斜めに取り付けられています

  • Nreal Airの上側には左右それぞれ1,920×1,080ドットの有機ELディスプレイが内蔵されています

  • 上がハーフミラーにピントを合わせた写真、下が映像にピントを合わせた写真。有機ELディスプレイの映像がハーフミラーに投影されることで、実際の視界と合成されて見えるわけです

  • 右ツル上にはマイクを内蔵

  • 右ツル下にはマイク、ディスプレイのオン/オフボタン、輝度ボタン、立体音響スピーカー(右)、左ツル下には同じく立体音響スピーカー(左)が用意

  • 左ツル最後尾にはUSB Type-C端子が配置

  • 両側面には特に操作部は存在しません

  • Nreal Air本体の実測重量は82.7g

標準アクセサリーは豊富で、ライトシールド、トラベリングケース、ノーズパッド3種(内ひとつは装着済み)、視力矯正レンズフレーム、USB Type-C ケーブル(着脱式、実測127cm)、クリーニングクロスなどが同梱されています。

Nreal Airのレンズ、光学系がどのくらいの強度、ホコリの混入を防ぐ密封性を備えているのかは不明なので、持ち歩きの際にはトラベリングケースに収納したほうがよさそうです。

  • パッケージには、Nreal Air以外に、ライトシールド、クリーニングクロス、USB Type-C ケーブル(着脱式)、トラベリングケース、視力矯正レンズフレーム、ノーズパッド3種(内ひとつは装着済み)が同梱されています

推奨端末に含まれていないGalaxy Z Fold3 5Gで動作を確認

セットアップの流れは、専用アプリ「Nebula」(Nreal Technology Limited製)のインストールおよび起動、Nrealアカウントの作成、Nrealアカウントでログイン、ユーザー名/国・地域/生年月日/性別/瞳孔間距離(IPD)の入力、権限の付与、ファームウェアのアップデート、アクティベーションの完了……という流れになります。

  • 正確な瞳孔間距離は眼科や眼鏡店で計測が可能です

  • 権限を付与すると、ファームウェアのアップデートが自動的にスタートします

  • アクティベーションが完了すれば、「Display Port Alternate Mode」に対応したノートPCやiPadなどから映像出力可能となります

専用アプリ「Nebula」で動作確認が取れている機種は、au製品公式サイトドコモ販売サイトに掲載されています。

筆者は2月14日時点でどちらにも記載されていない「Galaxy Z Fold3 5G」で設定し、使用していますが、いまのところ特に不具合は発生していません。ただし、セットアップ時に「Samsung DeX」を終了する必要はありました。

なお、不具合に筆者が気づいていない、または不具合が発生する機能を使用していない可能性もあります。もしNreal AirとGalaxy Z Fold3 5Gの組み合わせで利用する際には自己責任でお願いいたします。

  • auもドコモも、メインストリーム機よりも数が出ていないGalaxy Z Fold3 5Gは動作確認を後回しにしているのではと個人的には考えています

NeburaのMR Spaceはまだコンテンツが少ない

さて実際にNreal Airを使ってみた感想ですが、NeburaのMR Spaceは現時点では用途がかなり限られていますね。と言うのも現状アプリは、使い方を解説する「Tutorial」、ウェブブラウザー「Browser」、画像閲覧アプリ「Photos」、世界各地の自転車走行動画を鑑賞できる環境アプリ「Cycling」と圧倒的にコンテンツが少ないんです。

  • 中央の「お気に入り」に入っているのはすべてウェブサイトのブックマークです

  • 上のスクリーンショットで出ている線がレーザー。スマホを上下左右に動かすとレーザーも同じように動くので、レーザーの先をアイコンなどに合わせてスマホの画面をタップして選びます。スマホの「ホーム」アイコンをタップするとホーム画面が表示されます

また、NeburaのMR Spaceのブラウザーでは、「Abema TV」、「Amazonプライム・ビデオ」の動画を再生できませんでした。さらに「Netflix」では「この作品はストリーミング再生でご覧いただくことができません」というエラーメッセージが表示されてしまいました。YouTubeは再生できましたが、個人的にはAbema TV、Amazonプライム・ビデオ、Netflixのコンテンツを観られないのであれば常用は厳しいです。

  • Netflixのサポートページには、「ご利用のコンピュータでエラーコードM7121-1331が表示される場合は、通常お使いのブラウザに問題があることを示しています」と記載されています。NeburaのMR Spaceのウェブブラウザー「Browser」がNetflixに対応していない可能性が高いです

スマホ画面のミラーリングは実用的! 仕事もできそう

しかしNreal Airが実用的ではないのかというと、そんなことはまったくありません。Air Castingでスマホの画面をミラーリングすれば、0DoFにはなりますが、すべてのアプリを利用可能です。また、Galaxy Z Fold3 5Gでは「Samsung DeX」も使えました(記事執筆時点)。

キーボードやマウスと接続すれば、約60cm先に20.5インチ前後のディスプレイが浮かび上がるので、スマホより圧倒的に大きな画面で作業できます。これはすっごく便利ですよ。

  • フォルダブルスマホ「Galaxy Z Fold3 5G」よりもさらに大きな画面で書類などを作成できちゃうわけです(※写真はNreal Airの映像を表示させたイメージです)

  • 【Nreal Airの映像を表示させたイメージGIF】

ただちょっと……いいえ、かなーり残念なのがAir Castingで3DoFを利用できないこと。ノートPCに接続すればセカンドディスプレイとして使用できるのですが、0DoFだと頭が動くと画面も動いてしまいます。

Android以外ではMR Spaceを使えないこと自体は仕方ないですが、ボタン操作などで画面位置を固定できるような機能がほしいなと思います。

  • モバイルディスプレイを持ち運ぶのはしんどいですよね。Nreal Airをサクッと挿すだけで、仮想的なセカンドディスプレイを「固定」して利用できればすっごく便利だと思います(※写真はNreal Airの映像を表示させたイメージです)

  • 【Nreal Airの映像を表示させたイメージGIF】

最後に映像の見やすさについてお伝えします。まず、晴れの日に屋外で装着してみましたが、日向ではほとんどNreal Airの映像は見えません。日陰に入るなり、手で日差しを遮るなりする必要がありますね。どうしても明るい場所で本製品を使いたい場合は、完全に光を遮る「ライトシールド」を装着しましょう。

  • 「ライトシールド」は完全に光を遮るので、周囲の安全を確保できる場所専用のアクセサリーです

また、夜間にNreal Airを装着して自宅の敷地内をちょっと歩いてみましたが、半分だけにスマホ画面を表示する「Air Casting(サイドスクリーンミラーリング)」でも、周囲がほとんど見えなくて怖かったです。薄めですが色ガラスが入っているのだから当たり前ですね。Nreal Airを装着して夜間に屋外を歩くのは絶対にやめたほうがよいです。

初めてのARグラスとしては現時点でも満足度が高い

Nreal Airはカメラやセンサーが搭載されていないのでARグラスとしては廉価版という位置づけです。しかし、それでもマップアプリを表示しながら道を歩いたり、YouTube動画を鑑賞しながら家事をしたりすると、未来感をひしひしと感じます。

4万円切りと比較的入手しやすい価格設定なので、初めてのARグラスとしては現時点でも満足度が高いです。本製品のソフトウェア的な進化を楽しみつつ、今後発売されるであろう本格ARグラスをじっくりと待ちたいと思います。