テザー(USDT)やUSDコイン(USDC)などのステーブルコインの価値は、米ドルなどの別の資産にペッグ(固定)されるように設計されている一方で、仮想通貨業界はこれまで長い間、大規模なデペッグ(固定解除)の可能性を心配してきた。特に、現在630億ドル以上の時価総額を持つテザーに関しては、米国で規制がかかることが懸念されている

そこである企業が、このシナリオに対して投資家へ任意の補償を提供しようとしている。そしてテザー自身が、その計画を支援している。

ブリッジミューチュアルは、スマートコントラクトのハッキングまたは悪用、取引所におけるハッキング・盗難、ステーブルコインの価格暴落、およびその他のデジタル資産の脆弱性に起因する資金損失のリスクを軽減することを目指している。

このステーブルコイン保険は基本的に複雑なものではない。ステーブルコインが一定期間にわたりペグ価格を下回った場合、保険契約者は補償を請求することができる。オラクルがステーブルコインの現在価格を確認してから、現在価格とペグ価格の差額を全て投資家に支払う。ただし、この支払は別のステーブルコインで行われる。

「スマートコントラクトの脆弱性は分散型金融(DeFi)における非常に大きなリスクとなり、消費者が数百万ドルの損失を出す主な原因となっている」と、テザーのパオロ・アルドイノCTOは言う。「ブリッジミューチュアルの導入によって、将来のハッキングを防ぎ、DeFi製品の信用をより高めたいと望んでいる」。

ブリッジミューチュアルが分散型ガバナンスモデルへ移行する際、テザーはすぐに財政的な支援を表明した。このステーブルコイン発行者は、トークンの取得に50万ドルを充てた。株式の保有を通してテザーリミテッドと密接な関係のある仮想通貨取引所ビットフィネックスも、同様の支援を行った。それらのトークンによって、両社はブリッジミューチュアルのガバナンスと確実に利害関係を有することになる。

ブリッジミューチュアル創業者のマイク・ミリオ氏は次のように説明している。

「テザーとビットフィネックスは当社と他の多くの高評価プロジェクトを結びつけることで、このプロジェクトに対してすでに大きな支援を示してきた。それらのプロジェクトは現在、当社のパートナーとなっている。また両社はこれまでに、ブリッジミューチュアルのマーケティング、設計の改善、他のプラットフォームやシステムへの統合でも、当社への支援に力を尽くしてくれた」

ミリオ氏によれば、保険契約者は自分のテザーをプールに預けて担保として使用し、その持ち分と引き換えにプラットフォームからの利益を共有して利回りを稼ぐこともできる。

「1日に何十億ドルもの取引高がステーブルコインとの間でやり取りされており、人々や機関投資家はステーブルコインの価値は安定したままであると暗黙のうちに信頼している」と、ミリオ氏は続ける。「ステーブルコインの補償がすぐに利用可能で使いやすければ、誰もが仮想通貨市場へのエクスポージャーを増やしながら、それらのコインに預けた価値の全てが一夜のうちにゼロになってしまう可能性を心配せずに眠れるようになるだろう」。