ボーズ(BOSE)がノイズキャンセルヘッドホンの定番QuietComfortをリニューアル、QuietComfort 45(以下、QC45)が登場した。2021年10月28日の発売が予定されている。
今や、完全ワイヤレスイヤホンもアクティブノイズキャンセル機能を搭載するのが当たり前の状況だが、QuietComfortは、ノイズキャンセルの元祖といってもいい。
前モデルはQuietComfort 35 wireless headphones II(以下、QC35 II)ということになるが、そのデビューは2017年だったから実に4年ぶりのモデルチェンジだ。途中、2019年に別シリーズとしてBose Noise Cancelling Headphones 700が発売されたが、こちらは本家QuietComfortとは、ちょっとコンセプトが異なるモデルだった。
QC45の変わったところ、変わらないところ
QC45は、先代のQC35 IIから驚くほど変わっていない。独自のテクノロジーで周囲のノイズを継続的に監視・測定し、逆位相の信号でノイズをキャンセルという仕組みも同じだ。それどころか、ノイズキャンセルのレベルを2段階で変えられたQC35 IIに対して、QC45は有りと無しだけだ。
その代わりというわけではないが、2つのモードが用意されていて、最大レベルでのノイズキャンセルモードであるQUIETモードと、周囲の音もきこえるAWAREモードが用意されている。実にシンプルだ。10段階にノイズキャンセルレベルを変更できても、そんな機能は使わないということなのだろうか。
もちろん4年分の進化はいろいろなところに反映されている。バッテリーも長持ちするようになり、一回の充電で最大24時間の連続再生が可能だ。充電用のUSBポートもUSB Type-Cになった。これを使えば2.5時間でフル充電だ。
もちろん、同梱のケーブルで有線接続での再生もできる。有線の場合は、ノイズキャンセルをあきらめれば、バッテリなしでも再生可能だ。
バッテリボックスが別だった初代からゆるやかに進化
重量は240グラムで、先代のQC35 IIとさほど変わっていない。装着したときのフィーリングもほぼ同じだ。頭に装着して電源を入れると静寂が訪れ、ペアリング済みの機器と接続された旨のアナウンスがある。
電源スイッチはもちろん、曲の再生、停止、音量の上下などのオーディオコントロール用の物理ボタンもまったく同じなので、古くからのQCユーザーにとっては迷いようがない。
そういう意味では700シリーズとは一線を画する。同シリーズは、タッチによるコントロールや、ノイズキャンセルレベルの変更などの機能があって、それはそれで便利だったのだが、それは古くからのBOSEユーザーにとっては別のヘッドホンだったのだ。
ノイズキャンセルによって静寂を提供する機器の選択肢は拡がっている。だが、ノイズキャンセルを当たり前として古くから慣れ親しんできたのはBOSEのユーザーだ。
QCシリーズの初代の発売は2000年、別だったバッテリボックスがヘッドホンに内蔵され、単4形乾電池で駆動できるようになったQC2が2003年で、個人的にはこの機種からのユーザーだ。
以降、少し寄り道しては元に戻るを繰り返しながら、QCシリーズは進化してきた。何も変わらないように見えながらもだ。
大きな変化としては2016年のQuietComfort 35 wireless headphonesがBluetooth対応したことと、バッテリーが充電式になったことだ。
Bluetooth対応によるワイヤレス化は時代の流れとして当然だろうとしても、単4形乾電池をやめたことは賛否両論があるだろう。この手のデバイスにおいて、バッテリーの寿命が本体の寿命になりかねないのだから。だが、QC45もまた充電式だ。
コロナ禍が日常で使うヘッドホンを見直すきっかけに
コロナ禍は、日常的に使うヘッドホン類を見直すきっかけになったともいえる。オンライン会議が増えたかもしれないし、本来は仕事をする場所ではなかった場所で仕事をしなければならなくもなったかもしれない。
ヘッドホンを装着している時間が長くなったり、逆に、自分以外の人がいない場所で作業する時間が増えて、ヘッドホンがいらない環境になった人もいるだろう。
少なくとも、仕事に集中したい環境で、身の回りのノイズをシャットアウトするノイズキャンセルは大きな恩恵をもたらす。ただ、常時、耳穴に異物を入れることになるインイヤーのイヤホンは、どんなに装着感がよくてもつらく感じるかもしれない。
さらに、ちょっとしたことでイヤホンを耳から外すときも完全ワイヤレスイヤホンはやっかいだ。何しろ小さいので外した拍子に落としやすかったりする。屋外ではそれで無くしてしまったりすることもあるかもしれない。
ちゃんと充電ケースに入れればいいのだが、それには手間がかかる。だったらと、ネックバンド方式のイヤホンを使ったりもするのだが、最終的には昔ながらのオーバーイヤー型のヘッドホンに回帰してホッとする。これで不便を感じるのは、マスクを外すときと、さぼって横になるときくらいだ。確かに邪魔かもしれないが、着脱のしやすさは抜群だ。
「変わらないこと」がユーザーを受け入れる
いろんなイヤホン、ヘッドホンに浮気をしてきても、最終的に戻ってきたらそれを受け入れてくれるのがBOSEのQCシリーズだ。そして、そこにはかつてのQCシリーズとまったく同じ使い勝手がある。
Bluetooth接続にしても2台までのマルチポイント接続、そして、8台までの機器とペアリングしておき、電源ボタンのスライドで順次機器を切り替えるといった便利な使い勝手もそのままだ。
マルチポイント接続では、音楽の再生については早い者勝ちだが、電話の着信は両方を待ち受けできる。こうした容易な切り替えができるBluetoothサポートをしている製品は意外に見当たらない。
変わらないこと。それはBOSEが狙ってやっているとしか思えない。まるで古巣に戻ってきたかのような錯覚に陥る。まさに王者の自信と風格だ。
著者 : 山田祥平
やまだしょうへい
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