一般社団法人ダークパターン対策協会は4月22日、Webサービスやネットショップの運営者向けに「ダークパターン対策ガイドライン」の最新版(ver1.1)を一般公開した。これは、1月30日に公開されたver1.0に対して寄せられた意見をもとに内容を見直したもので、各意見への対応方針も公表されている。

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「ダークパターン対策ガイドライン」は、同協会が今後運営開始を予定している「NDD(Non-Deceptive Design)認定制度」における審査基準を示すもので、誠実な事業者に求められる非ダークパターンの実装や組織的対策について詳しく解説したもの。NDDは、中立な第三者がWebサイトを審査し、ダークパターンを用いていないと認められた事業者に改ざん不可能な認定ロゴを付与する制度で、消費者が安心して利用できるサイトを見分ける手がかりとなることを目的としている。

このたび公開された「ダークパターン対策ガイドライン ver1.1」では、ver1.0に対して寄せられた意見のうち、特に実効性が高いと判断された内容が一部反映されている。たとえば、「購入前確認画面だけでなく、商品説明画面でも重要な情報を明示すべき」という意見を受け、将来的に商品説明画面も審査対象とする方針が明記されたほか、事業者が消費者をどれぐらい自社に有利なように心理的に誘導しているかをスコアリングするツールの導入が検討されている。

また、「SNSや検索広告、印刷物などWebサイト外の広告による誤認も審査対象とすべき」との意見に対しては、Web外部の広告表示も「画面と関係のないダークパターン」として新たに項目を設け、「強く推奨」としてガイドラインに追記された。

このほか、「規約に隠された情報がヘルプページなどでも補完されていない場合は問題」とする指摘を踏まえ、関連項目の表現が修正されたほか、「重要な情報がスクロールしないと表示されない」「薄いフォントや小さな文字で記載されている」といった視認性の問題についても、「視認しやすい実装であること」という表現に見直された。また、購入直前に税金が加算されることで総額が想定より高く見えるケースについても、本当に支払うべき代金を最終段階で示すものが「隠されたコスト」に含まれるよう修正された。

一方で、今回はガイドラインに反映されなかったものの、将来的な検討課題として扱われる意見もある。たとえば、現在は審査の対象外とされている「解約のしにくさ」については、金銭的被害に直結するとの理由から、早期に審査対象するように検討を進めるとし、「2年以内に審査対象にする予定である」と表明された。

さらに、競合事業者などによる虚偽の申告により健全な事業者が妨害を受ける懸念については、苦情受付時にスクリーンショットなどの「明確な証拠」の提出を求める仕組みの整備や虚偽申告への法的リスクの明示、適切な審査手順のガイドラインの整備を今後の課題として検討する方針を示した。

そのほか、削除を求める声があった組織的対策や窓口公開、レビュー体制などの項目については、「ダークパターンの発生は企業全体の問題であり、最低限のガバナンスとして必要」として現行の記載を維持している。また、ダークパターン被害の補償や消費者との対話については企業の自主判断を尊重し、審査対象とはせず「強く推奨」の位置づけにとどめている。

加えて、「Webサイトのみ」が対象となっているガイドラインのスコープを「ネイティブアプリ」にも拡大すべきとの意見に対しては、GoogleやAppleの審査に一定の拘束力があることから現時点では対象外としているが、将来的な対象拡大を検討課題とする方針が示された。

そのほか、ガイドラインが90ページを超えるボリュームであることや、「PDF形式のみで不便」との声について、今後はHTML形式での公開も検討しているとのことだ。

また、NDD認定取得後にガイドライン違反が発覚した場合の対応について具体的な記載がされていないという指摘を受け、方針が明らかにされた。具体的には、違反が判明した際には該当企業のWebサイト担当者に速やかに是正措置を求め、30日以内に改善の報告がない場合は認定を取り消すことも検討しているという。さらに、こうした違反の発見を促すため、協会では一般消費者からの通報を受け付ける制度を導入予定だ。