昨年を上回る入場者数で幕を閉じたCP+2025。写真撮影のワークフローとしては過去の写真の管理が重要ですが、そこで活躍するのがNASやNASキット。大容量ストレージの選択肢の1つとしてNASが登場してかなり経ちますが、SynologyはコスパとOSの機能・進化でリードする存在です。
CP+にも数年前から出展しており、カメラマンにNASを使ってもらおうという試みを続けていますが、今年のブースは「あまり変わらない」感がありました。
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CP+2025のSynologyブースは構成も内容も昨年とほぼ同じ?
もともとSynologyのNAS製品の真価はOSにあり、かなり古い製品でも最新のOSを適用すれば最新の機能が使えるのが魅力です(筆者の自宅には2台のSynology NASがありますが、1台は2016年モデルです)。逆に、最新製品を次々とリリースする会社ではなく、展示製品もあまり変化がありません。
ブースの担当者は「今年は展示がメインではない」と語ります。以前からNASの紹介やカメラマンによるブース内セミナーを行っていましたが、今年はカメラマンのセミナーを大増強。5人のカメラマンがセミナーを行い、ブース内だけでなく館内ステージでもセミナーを実施していました。
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「今年はブースよりもセミナーを重視した」とカメラマン5名を起用。ブース内のセミナーだけでなく、別会場のステージも活用していました
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セミナーのタイムテーブル。ステージセミナーは2回行われました
NASを活用しているカメラマンによるステージセミナーの1つを聴講してみると、数年前から利用できるPhotoとCloudSync、そしてアカウント管理を活用していることが分かりました。
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ステージセミナーの2回目として、イルコ・アレフサンダロフ氏が講演していました
SylonogyのNASは複数のアカウントを設定できるため、クライアントだけでなくモデルにもアカウントを発行。モデルさんが自分の画像のフォルダを使えるようにしています。使い慣れた人には閲覧だけでなく、ダウンロード、アップロードも許可しており、個人ワークスペースとしても利用可能とのこと。
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イルコ・アレフサンダロフ氏はいくつかのテクニックを紹介していましたが、クライアントだけでなくモデルにもアカウントを発行し、必要に応じた権限を付与して活用し、ダウンロード可能な権限のあるモデルさんは自分の画像をインスタグラムにアップするという使い方をしているとのこと
写真そのものはPhotoというアプリがあるので、手動でも自動でも分類が容易ですが、セミナーを聞いている範囲では全部手動で管理しているような印象を受けました。iOS/Androidのアプリの使い勝手もよいと大絶賛。
NASへのデータアップロードにも工夫があり、出先からDropboxにアップロードするだけで、自動的にDropboxから2つのNAS(静止画と動画用)にバックアップされ、さらに自宅作業用のパソコンにもデータが送られるよう設定しているそう。複数のデバイスにアップロードすることで最悪の事態を避けられますし、出先からアップロードするだけでよいという手間の少なさも魅力的です。
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100名超+立ち見とかなりの人気でした
ブースセミナーの1つでは、容量不足でステップアップするのにSynology独自のSHR(Synology Hybrid RAID)の有用性や、「ブラウザでRAWのサムネイルが表示されるので非常に分かりやすい」という発言が印象的でした。
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こちらは最終日の成澤広幸氏のブース内講演。椅子10個程度+立ち見という状態でした
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ポイントとして紹介していたのは「(Nikonの)RAWファイルが一覧で見えるので作業性がよい」こと。作業に使っているWindowsのエクスプローラーでは見えないので、作業効率が高まります
カメラマンにとっては、複数の作業環境から一元的にアクセスできるNASの存在だけでなく、本来現像作業が必要なRAW画像の中身が分かるというのは、作業効率の大幅なアップにつながります。これは、デジカメで作品撮りをしている人のハートに刺さるコメントだったと思いました。
また、成澤氏が使用しているモデルは、オプションで10G LANに対応します。作業用のパソコンと10G接続を行うことで2台同時に利用しても十分な速度を発揮し、静止画のファイルサイズが大きくても十分なパフォーマンスを発揮しているようです。
以前、操作ミスでファイルを全消去してしまったことがあったそうですが、適切な設定ならば消したファイルを復活させることが可能。3日ほどかかったそうですが、無事復旧したそうです。
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NASとは10GのLAN接続を行っているため転送速度も速く、静止画用と動画用(と出先・原稿用)のパソコンでファイルを共有できることをメリットとして挙げていました
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こちらのセミナーも通路まで立ち見があふれる状況でした
ちなみに、CP+に出展してほしかったなぁと思っていたのがUGREEN。この会社もNASキット市場に参入し、先日行われたクラウドファンディングでの日本での先行販売は初日にサイトがダウンしかかるほどの超人気で、まだ期間を1カ月ほど残していますがすでに5億円を超える支援額を獲得しています。
この成功をバックに、CP+に出展すれば話題になったと思いますし、Synologyブースでスタッフと話をしていた際も、彼らの製品がどのようなものか気になっているようでした。日本のカメラもライバルと切磋琢磨した結果が、現在のカメラ市場勢力図になったので、このあたりの出展にも期待したいところです。