2024年1月13日、新宿住友ビル三角広場にて、対戦格闘ゲーム『ストリートファイター6(スト6)』の公式リーグ「ストリートファイターリーグ: Pro-JP 2023(SFL2023)」のグランドファイナルが行われました。

7月から12月にかけて行われたリーグ戦で1位となった「FAV gaming(FAV)」と、2~4位のチームでグランドファイナル出場権を争ったプレイオフを勝ち抜いた「DetonatiN FocusMe(DFM)」による対戦です。結果は90-30で「FAV」が勝利しました。

  • 優勝した「FAV gaming」(撮影:志田彩香)

グランドファイナルは、リーグ戦と同じく3対3の星取戦で行われ、先鋒戦・中堅戦で勝利すると10ポイント、大将戦で勝利すると20ポイント獲得します。リーグ戦では20-20の同点になると延長戦に入り、決着を付けましたが、グランドファイナルの場合は、3戦を一巡とし、そのあとは2巡目に移行。先に90ポイント獲得したチームが優勝です。

対戦は、ホームアンドアウェイ方式。アウェイ側は先にオーダーを発表し、ホーム側はその対戦が始まる前に誰が出場するかを発表します。つまり、ホーム側は相手のオーダーに対して対応できる形。ホームとアウェイは1巡ごとに入れ替わります。1巡目はリーグ戦1位抜けの「FAV」がホームスタート、プレイオフから勝ち上がってきた「DFM」がアウェイスタートです。

  • 会場は新宿住友ビルの三角広場。前回のTFTホールより会場が大きくなり、観戦者も増えています

「FAV」は、ボンちゃん選手がリーグ戦の1stステージで6戦4勝、2ndステージでは12戦10勝と、絶対的エースの活躍を見せています。特に2ndステージは大将戦で出場することも多く、かなりのポイントを獲得し、チームの1位抜けに大きく貢献していました。

対する「DFM」は、このボンちゃん選手をいかに攻略するかが勝負の分かれ目となります。同じく絶対的エースが存在した「Saishunkan Sol 熊本(SS熊本)」戦では、エースのShuto選手に対してチームメンバー4人すべてが対戦し、その牙城を打ち破りました。今回はどんな作戦でボンちゃん選手を攻略するかが見どころと言えます。

そんな状況で「DFM」が選んだ作戦は、ボンちゃん選手に対してふ~ど選手を当てることでした。竹内ジョン選手のラシードも、ナウマン選手のケンも、ボンちゃん選手が使うルークに噛み合いづらいため、「SS熊本」戦のような総力戦はできないとの判断でしょう。可能性としては、リーダー板橋ザンギエフ選手のマリーザがどこかで登場するかです。

  • DFMが1巡目アウェイで選択したオーダー。大将にふ~ど選手を据え、ボンちゃん選手を迎え撃ちます

ボンちゃん選手以外のところで少しでもポイントを稼ぎたい「DFM」ですが、1巡目のアウェイでは竹内ジョンラシードがりゅうせいJPに、ナウマンケンがsako春麗に倒されます。大将戦もボンちゃんルークが勝利し、いきなり40ポイントの献上となりました。

2巡目のホームでは、りゅうせいJPにナウマンケンで、sako春麗に板橋ザンギエフマリーザで挑みますが返り討ちにあってしまいます。大将戦のボンちゃんルーク対ふ~どディージェイ戦でふ~ど選手が負けてしまうと、「FAV」は80ポイントに到達し、先鋒、中堅でも1勝すれば優勝となります。崖っぷちに立たされたふ~ど選手。攻撃的な戦いと読み冴えまくり、ボンちゃん選手相手に3-0のストレート勝ちでチームの窮地を救いました。

3巡目先鋒でも竹内ジョン選手がりゅうせい選手を破り、反撃の狼煙をあげます。しかし、抵抗もここまで。ナウマン選手がsako選手に敗れ、三度訪れたボンちゃん対ふ~ど戦も、2巡目での対戦を修正したボンちゃん選手が今度は3タテを喰らわせて勝利しました。

  • 2巡目大将戦でようやく勝ち星を挙げた「DFM」

リーグ戦のときは、対JP戦に絶対の信頼性を持っていたふ~ど選手がJPに対応していましたが、グランドファイナルではボンちゃんに対応せざるを得ませんでした。結果、りゅうせいJPにもポイントを稼がせるチャンスを与えてしまったのです。

もう1枚ルークに対抗できるカードがあるか、ふ~ど選手の代わりとなるJP要員がいれば、対応できたかもしれませんが、sako選手が今シーズン一番の動きをしていたので、それも難しかったでしょう。しかも、今回はときど選手がまさかの出番なしの状況。多少「FAV」を崩せたとしても、さらにときど選手への対応を考えないといけないわけです。「FAV」の選手層が厚く、いかに堅牢であるかが伺えます。

「FAV」は、これで「CAPCOM CUP X」で行われるワールドチャンピオンシップへの出場も決まりました。前回は「SFL JP」の「Good 8 Squad」が優勝しているので、今回も日本チームの優勝を期待したいところです。

  • 優勝を決め、両手を大きく掲げるボンちゃん選手

  • 惜しくも2位となりましたが、1stステージの崖っぷち状態を考えると、まさに快進撃を続けたといえる「DFM」

試合終了後に表彰式が行われました。その表彰式に登壇した辻本社長による発表で、「ストリートファイターリーグ:Pro-JP 2024」の開催が発表されました。2024年7月に開幕し、「Crazy Raccoon(CR)」、「FUKUSHIMA IBUSHIGIN(IBUSHIGIN)」、「Yogibo REJECT(RC)」の3チームが新たに参戦し、2リーグ制で実施されます。2023シーズン以上の盛り上がりが期待できることでしょう。

  • 2024年シーズンも開催決定。7月より開幕!

  • 新たに「CR」、「IBUSHIGIN」、「RC」が参入

せっかくなので、この発表と会場でのさまざまな人の発言を踏まえ、来季のSFL2024の予想をしていきたいと思います。

まず、新チームについてですが、現状だと「IBUSHIGIN」は、ストリートファイター部門に4人の選手(かべ選手、Yanai選手、ササモ選手、翔選手)がいるので、「魚群」、「忍ism」に続く純正チームで参加すると思われます。

「IBUSHIGIN」のスタッフであるおこめ氏のXの発言でも「ここの舞台を目指して強い4名体制を維持してきました」と投稿しており、おそらくメンバーの入れ替えはないと思われます。

次に「CR」と「RC」ですが、現状、CRにはどぐら選手、RCにはときど選手しか所属していません。なので、新メンバーの追加とほかのチームからのレンタルで構成されると予測がたちます。

そして、今回の新チームに入っていない注目のチームと言えばウメハラ選手が所属するTeam Beast。チームでの参加ではなくなりましたが、ウメハラ選手の来シーズンの参加は十分あり得るでしょう。

そうなると、ふ~ど選手とのセットでの移籍となるので、3人枠のある「CR」と「RC」は取りやすいと言えます。

表彰式でのインタビューで、ふ~ど選手は来シーズンの動向について「天が決める感じなんですけど、(DFMで)一緒だったらよろしくお願いします」とコメントしていました。

深読みをするのであれば、ふ~ど選手が示した“天”は、格ゲー唯一神であり、格ゲーの王であるウメハラ選手。つまり、ウメハラ選手の意向によってはほかのチームへ行く可能性があることを示唆しているのではないでしょうか。

筆者の予想として、参加チーム数が増えた場合の大本命は「IBUSHIGIN」でしたので、これは予想通りですが、対抗馬と考えていたのが「BURNING CORE TOYAMA(BCT)」でした。見事なカムバックをしたかずのこ選手、コーチとしての手腕も発揮しただけでなく選手としても活躍した立川選手、先の「CPT 日本大会」で準優勝し、SFLの参加経験のある大谷選手と、選手はそろっています。

残念ながらチームとしての参加予想は外れてしまいましたが、選手の参加は濃厚だと思います。今季のようにバラバラで「SFL」への参加もありえますが、もしかしたら3人一緒に「CR」か「RC」へ行くなんてこともあるかもしれません。まあ、そうなるとチームカラーが「BCT」に寄ってしまうので、さすがに難しいかもしれませんが。

新チームが参加することで、既存のチームにも影響が出ます。どぐら選手、ときど選手、かべ選手、ササモ選手が抜けることがほぼ確定の「CYCLOPS ATHLETE Gaming(CAG)」と「FAV」、「SS熊本」は補強が必須となります。

いずれも1名ずつ抜けるので、おそらくはほかのチームからのレンタルになるのではないでしょうか。うりょ選手、YHC-餅選手、NISHIKIN選手、MOV選手などの中堅・ベテランの復帰か、Jr.選手、ひかる選手などのニューカマーが参加するのか、どの選手が浮上するか気になるところです。

なんなら、これから数カ月の競技シーンでの活躍度合いによっては、白羽の矢が立つ可能性も十分にあると考えます。もしかしたら、トレードや大型移籍すらあるかもしれません。

また、「広島Team iXA」を純正チームにしたとしても、6名の選手を抱えているので、前代未聞の参加チームによるレンタル移籍が起こる可能性も捨てきれません。

最後に、選手ではないですが、解説者についても予想していきたいと思います。表彰式でアール氏がハメコ。氏に「ほぼ皆勤賞のハメコ。さん」と振っていたのに対して「今度は皆勤賞かわからないです」とコメントしていましたが、これは2リーグになることで、試合数が多くなることや場合によっては2リーグ同時開催でどちらかの解説ができないことを意味しているものと予想しました。

つまり、ハメコ。氏以外に解説者を増やす可能性もあります。新たに解説者として参加する人物は、ハイタニ氏が濃厚。ハイタニ氏自身が解説者として競技シーンへの参加希望を述べていますし、「RC」がチームとして参加したことで、「RC」がSFLに大きく関わってくるとも考えられます。まあ、先のことはわからないという意味だったかもしれませんが。

ともあれ、こうやっていろいろ考察するのは、オフシーズンの楽しみの1つ。まだ、ワールドチャンピオンシップは残っていますが、ファンであればいろいろ考えてしまうのは性というものでしょう。

あとは、2リーグ制になることで、1リーグの参加チームが少なくなります。そのため、今シーズンのような2シーズン制ではなく、1シーズン制に戻ると思われます。各リーグの上位チームがプレイオフに出場し、それぞれのリーグの優勝チームがグランドファイナルに進出することになるでしょう。いわゆるプロ野球のペナントレース、クライマックスシリーズ、日本シリーズの形を踏襲するのではないでしょうか。

  • 来シーズンは、各6チームの2リーグ制で開催。詳細は発表されませんでしたが、おそらく2シーズン制は廃止されるのではないでしょうか

試合は今シーズンと同様にオンラインによる対戦となると思いますが、それぞれのチームが観客を入れて、お互いの会場同士を中継でつなぐ形になるかもしれません。これは少し願望も入っているので、すべてのチームが観戦対戦に対応するかはわかりませんが、今シーズンよりもファンとエンゲージする方式をとってくると思われます。