富士通クライアントコンピューティング(以下、FCCL)のノートPCを製造する島根県出雲市の島根富士通が、恒例の親子向けイベント「第16回 富士通FMVパソコン組み立て教室」を開催しました。組み立てるPCは、14.0型モバイルノートPCとして世界最軽量の「LIFEBOOK WU-X/H1」、もしくは「LIFEBOOK WU2/H1」。マイナビニュース +Digital編集部も組み立てに参加してきました。
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第16回 富士通FMVパソコン組み立て教室に参加したのは、小学5年生から中学3年生までの20人
日本の文化や匠の心まで感じられるノートPCの組み立て教室
組み立てて完成した製品は、島根富士通が完成度をしっかりチェックして、後日参加者に送ってくれます。参加費用はPC代と送料込みで99,800円~と、大変オトク。地元からの参加希望はもちろん、旅行も兼ねて遠方から参加希望する親子も多く、抽選で定員20名を決めています。
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晴天に恵まれた島根富士通の本社ビル
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正面エントランスにパソコン組み立て教室のパネルも出ています
組み立ての会場は、社屋の食堂を利用した広いスペース。参加者ひと組ごとに1台のテーブルで作業します。各テーブルには工具や小物パーツ、ネジ、案内用のFCCL製タブレットPC「FMV LOOX」、作業時に着用するエプロンとグローブなどが、あらかじめセッティングされています。
我々編集部が組み立てるのは「FMV LIFEBOOK WU-X/HX1」です。CPUはIntel Core i7-1355U、メモリは16GB、SSDは約256GB、ディスプレイは14.0型1,920×1,200ドット(非光沢、タッチ非対応)、重さ約689gというモデル。
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FMV LIFEBOOK WU-X/HX1
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参加者のテーブルと席は決まっていて、テーブルの上には道具もそろっています
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作業時はエプロンと手袋を装着。参加者は白いエプロンで保護者が黄色いエプロンですが、マイナビニュースチームは特別に黄色いエプロン
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静電気対策用のアース。指輪や腕時計を外したうえで利き手と反対の手に装着します
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SSDやMLD FOOT(ゴム足)などの小型部品は、こちらの小物トレイにまとめられています。左の青いケースはネジ入れです。工程ごとで遣うネジを必要な数だけ入れて、複数の種類のネジが混ざることや、ネジの数が合わなくなることを防ぎます
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会場に参加者が全員そろって、司会の声でいよいよ始まります。参加者の内訳は、小学生と中学生がそれぞれ10人ずつ。男子16人、女子4人でした。地元の島根県からの参加者が7人と多く、次いで東京都3人、愛知県2人、兵庫県2人、広島県2人、大阪府1人、京都府1人、岡山県1人、福岡県1人
開会に当たって挨拶に立ったFCCLの齋藤会長は、「FMVのノートPCは神奈川県の新川崎で設計し、ここ出雲で組み立てています。日本の文化を踏襲して、軽くて頑丈、そして美しい、精緻の感覚を大事にするように作っています。ノートPCの組み立てを通じて、島根富士通のマイスター(匠)たちがそれを伝授します。日本の文化のすごさをたっぷり体感してください」と述べました。
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開会の挨拶で自分も組み立てに参加すると宣言するFCCLの齋藤会長
最初にAGV(Automatic Guided Vehicle:無人搬送車)が運んできた大物トレイ(黒い箱)を、各自の席から受け取りに行きます。島根富士通の工場内ではパーツ類の搬送に約30台のAGVを利用しており、スタッフの省力化や作業の効率化に役立っています。
組み立て教室でも昨年(2022年)からこのAGVを使用しており、今年も出雲名物「石見(いわみ)神楽」の装飾を施されていました。
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石見神楽の龍にデコレーションされたAGVが活躍。ちなみにAGVは上の龍ではなく、足元の箱状のものです。というか、2022年から装飾がアップグレードしています!
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参考までに2022年の装飾がこちら。次回の装飾も楽しみです
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AGVから下ろしてきた大物トレイの中には、メインボード、カバー、液晶、バッテリーといった大型のパーツが収められています。工程に沿って1つずつ取り出して使います
第1工程のネジが小さすぎる!
実際の製造ラインでは、約258点のパーツを13分間で組み立てています(ノートPCのモデルによって異なります)。今回の組み立て教室では事前にある程度組み立てて整理してあり、参加者が作業する部品点数は41点。トータル90分間(+休憩10分間)で組み立てるプログラムです。作業工程は13に分けられ、1工程ずつ参加者全員の足並みをそろえて進めていきます。
第1工程は「キーボードネジ締め」です。
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いよいよスタート。筆者にも気合いが入ります。ふっふっふっ
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前方のスライドで工程や作業を説明
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手元のタブレット(FMV Loox)でも、前方のスライドと同じ画面を参照できます
タブレットの画面には、昨年はヘルプスタッフを呼ぶ「応援」ボタンが用意されていました。今年はなくなっています。デスクごとに1人ずつスタッフが付いていることから、必要ないとの判断になったようです。
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「Cカバー」を取り出して背面のネジを締めます
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Cカバーは正面がキーボードになっています
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ここで使うネジがとても小さく、ネジ穴にドライバーがなかなか入れられず、回しているうちに外れてしまいます。ネジをCカバーの上に落とすだけで見失うので大騒ぎ。いきなりハードルが高くないですか?
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ここでは子どもたちも苦戦していました
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ちなみにキーボードのネジ締めは、製造ラインでは「ネジ締めロボット」が行っています。これは自動化して正解ですよ。うん
第2工程~第6工程はメインボードを取り付けてケーブル類を接続
第2工程は「メインボード・金具の取り付け」です。
単純に配置するとケーブル類が下に潜り込むため、上に引き出して取り付けます。薄いメインボードは破損の危険性もあり、必ず両手で持ちます。表面には小さな部品がたくさん付いているので、表面を触らないことがポイント。
ネジは先程のキーボードネジより大きく、順番どおりに締めていけば割と簡単。ですが、そのあとの金具の取り付けが面倒でした。単純に見えて、なかなかキレイにはまりません。
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続いてメインボードを取り出します
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キーボードの背面からメインボードを所定の位置に配置して金具を取り付けます
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このくらいのサイズのネジならやりやすいのです
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子どもたちの真剣な表情と、手を出さずに見守る保護者の表情も、この教室の見どころ
第3工程から第6工程までは各種ケーブルの接続となり、作業そのものは似ています。第3工程は「キーボードの接続」、第4工程は「フレキケーブルの接続」、第5工程は「電源フレキケーブルの接続」、第6工程は「スピーカーケーブルの接続」です。
ここまでが前半の作業となります。
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「フレキ」や「フレキケーブル」は、フレキシブルフラットケーブルの略。平べったい配線材のことです。キーボードフレキは中央の白い平たいケーブル
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ケーブルに余裕を持たせつつ、ソケットに押し込むようにしてまっすぐ挿入し、ずれないようにフラップを閉じて挟み込みます
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これがなかなか難しい。差し込んでカチッと留めたはずなのにスルッと抜けてしまう。なんで?
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同じ場所で苦戦する少年を見ると「そこ、難しいよな!」と肩を叩いてサムズアップしたくなります
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工場のラインでは、スピーカーケーブルの接続はカメラとAIを利用してチェックしているそうです
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前半を終えた休憩時間には、ご当地キャラの島ねっこがダンスを披露してくれました
選手交代、第7工程からだんだんとPCらしい姿に
後半は第7工程「液晶パネルの取り付け」から。ここでマイナビニュース +Digitalの林編集長にバトンタッチ。第7工程では本体の向きを上下で入れ替え、保護袋に入れたまま作業します。
液晶パネルの上に本体を取り付けるような手順で、ヒンジ金具の手前側からケーブルを整線していき、続く第8工程「液晶パネルケーブルの接続」で隙間ができないように接続します。この作業でノートPCらしい姿にぐっと近づきます。
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選手交代。「トロくて見てらんないです。ボクがやるからどいてください」と言ったとか言わなかったとか(林:言ってませんよ)
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タブレットの画面に表情の固まる林編集長
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その画面がこちら。「後半から急に表示が細かくなりましたよね?」 さあ、どうでしょう?
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周囲を見回すと、保護者も巻き込んで苦戦しております。液晶ケーブルの接続は、ケーブルが固くて力加減が少し不安に
第9工程は「カメラケーブルの接続と整線」です。ここは後半の山場。作業の向きや隙間に注意しながらケーブルを整線し、ヒンジを指で押して倒します。この指で押す作業は、力の加減が分かりづらく難しく感じた人も多そうです。
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ニュアンスが分かりにくく細かい作業が続く難所
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「あ、やべっ」というつぶやきを聞きました。一体なにをやった!?
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参加者たちも苦戦しつつ、夢中で作業
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ここではスタッフがヘルプに入るテーブルも多かったようです
第10工程~第13工程でいよいよ完成
第10工程は「MLD FOOTの取り付け」、第11工程は「SSDの取り付け」、第12工程は「バッテリーの取り付け」です。「MLD FOOT」とはヒンジの下にくるゴム足のこと。内側のツメを斜めにはめて、外側のツメは上からはめます。
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ケーブルを噛まないようにぐっと押し寄せてから、MLD FOOT(ゴム足)を押し込みます
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SSDをソケットに挿してネジで固定。ドライバーの先にネジ穴がなかなかはまらず苦戦。SSDは1本のネジだけで留まっています
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大物トレイからバッテリーを取り出します。バッテリーは接続時に隙間ができないよう注意
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「あれ?置けないよ…」
上下が逆さまですよ!
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「これでいいの?」「大丈夫!」の声が聞こえてきます
いよいよ最終の第13工程「Dカバーの取り付け」です。「Dカバー」とは底面カバーのこと。スピーカーケーブルを接続してから取り付けます。
赤と白のケーブルの色でコネクタの向きを確認し、ケーブルの噛み込みが起きないようにします。留めるネジは10カ所です。数が多いので保護者も手伝ってOK。最後に2カ所のネジを締めて終了です。
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Dカバーは底面カバーのこと。これです
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スピーカーケーブルは赤と白の色でコネクタの向きを確認。これがまためっちゃ小さいんですよ……
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ネジの数が多いので保護者も手伝いに入ります
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電源を入れて、Welcome画面が表示されたら完成。参加者全員、無事に起動しました
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重さを量ると690gと出ました。スペック表の公称値は約689gなので誤差ですね
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斎藤会長が組み立てたPCも無事に起動してニッコリ
ノートPCという精緻な道具の成り立ちを実感
組み立て教室のあとは、実際にノートPCを組み立てている工場(生産ライン)の見学や、ネジ締め競争、重量当てゲームなどを開催。最後にクイズ大会となり、優勝者には島根富士通の神門明(ごうど あきら)社長から記念品が贈られました。
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工場見学の様子
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電動ネジ締め体験。このあと匠(日々作業している達人級の人)との競争もありました
参加した子どもたちからは、「液晶の取り付けが楽しかった」「小さいネジを締めるのは難しかった」「作ったPCでゲームやYouTubeを楽しみたい」といった感想が聞けました。
一昔前と比べて、イマドキの小中学生にとってPCを作る機会は少なくなりました。ノートPCが主流となったこともあり、デスクトップPCのケースを開けて中を見ることなど、ほとんどないはずです。
今回の組み立て教室に参加した子どもたちは、普段は見られないノートPCの中身を組み上げていく作業を通じて、ノートPCがいかに精緻な完成物かを実感したことでしょう。人生における豊かな経験を1つ積めたのではないかと思います。
過去にはこの組み立て教室に参加した経験者が、長じて島根富士通に就職してPCを作るようになったこともあると聞きました。未来の最軽量ノートPCの開発者がこの教室から生まれる、そんな日がいつか訪れるのかもしれません。
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島根富士通のエントランスには、歴代のエポックメイキングな機種やPCの構造が見られる展示などもあり、参加者は合間の時間に自由に見学できます
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男ゴコロをくすぐるスケルトンモデル
著者 : 諸山泰三
もろやまたいぞう
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