米Appleは8月30日(現地時間)、クラシック専門の音楽ストリーミングサービス「Primephonic」を買収したと発表した。PrimephonicはApple Musicに加わり、Appleはクラシック音楽専用のアプリケーションを2022年に公開する計画だ。
ポップミュージックやロックなど多くのジャンルの音楽は、アーティスト名、アルバム名・曲名で分類されているが、クラシック音楽はさらに作曲者、指揮者、オーケストラ、演奏者、公演など様々な切り口で聴かれている。例えば、クラシックの名盤の1枚に数えられる「Beethoven: Symphonies Nos 5 & 7」は、ベートーベンの曲であり、カルロス・クライバー指揮の交響曲であり、1974〜76年にウィーンでライブ録音されたウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の演奏である。デジタル音楽が主流になり、オンライン音楽ストアで膨大な音楽カタログを検索できるようになった。ところが、ポップミュージックなどを基準とした検索機能でクラシック音楽の作品は見つけにくく、クラシック・ファンから不満の声が挙がっていた。
Primephonicは、そんなデジタル時代にクラシック音楽が直面している課題に対処し、ストリーミングの利点をクラシック音楽ファンも楽しめるようにするサービスとして2017年にスタートした。クラシック音楽に特化したメタデータを付与し、クラシック愛好家のニーズに応える検索やブラウズ機能、豊富な関連情報、専門家によるおすすめなどを提供する。2つのプランが用意されており、モバイルでも利用しやすい「Premium」(7.99ドル/月)はオーディオ形式が320kbpsのmp3、音質を重視するユーザー向けの「Platinum」 (14.99ドル/月)は24-bit FLACで配信している。
サービス開始から3年、Primephonicはクラシック愛好家の間で順調にユーザーを増やしてきたが、新型コロナ禍でライブ演奏が制限され、今クラシック音楽は厳しい状況にある。そうした中でクラシック音楽と人々の接点を増やすために、Primephonicは次のステップに進む。Apple Musicに加わることで、クラシック音楽に特化したストリーミングサービスを世界規模で、クラシック愛好家だけではなく、他のジャンルの音楽も聴く音楽ファンにも届けて、新しい世代のクラシック・ファンを開拓する。
Appleによる買収で、Primephonicは従来のサービスを9月7日に停止する。クラシック音楽向けにデザインされたPrimephonicアプリを土台に、Appleは追加機能を組み合わせたApple Musicのクラシック音楽専用アプリを2022年にリリースする予定で、Apple Musicユーザーはロスレス/ハイレゾ対応の何十万のクラシック・アルバムに加え、何百もの空間オーディオ対応アルバムを楽しめる。なお、Primephonicのサービス終了に伴い、既存のPrimephonicユーザーにはApple Musicを6カ月分無料提供する。