中国のテンセント・ホールディングスは、同社が手がける人気モバイルゲーム「王者栄耀(Honor of Kings)」につき、18才未満のプレイ時間を平日は1日1時間、週末は2時間までに短縮することを発表しました。合わせて、12才未満の子供はゲームへの課金を禁止されるとのことです。
この発表は、中国の国営メディアである新華社通信系の「経済参考報」誌が、多くの10代の若者らがオンラインゲーム中毒となっており「精神的アヘンが数十億ドル規模の産業に成長した」と報じた直後のことです。
該当の記事はすでに削除されていますが、まさに渦中にある「王者栄耀」を名指ししたもの。国営メディアの報道は中国政府の意向そのものであることから、テンセントの株価は一時10%以上も下落していました。
これまでにも中国では、習近平主席のゲームに関する談話を受けて2019年には子供のゲームプレイ時間は平日は1日90分、週末と祝日は1日3時間までに制限済みという状況です。また10代の子供たちは午後10時から午前8時までプレイすることが禁止され、DLCに使える金額も抑制されていました。今回の措置は、こうした制限をさらに強めた格好です。
「王者栄耀」は、CoDモバイルや「ポケモンユナイト」でも知られるテンセントの子会社TiMi Studio Groupが手がけた、多人数参加型のオンラインバトルアリーナゲームです。2020年11月時点で1億人ものプレイ人口を誇る大成功は監視の目を強めることにもなり、6月にはキャラクターの服装が歴史的事実に反するなど「不適切な」コンテンツが含まれていたとして訴訟が起こされていました。
Bloomberg Intelligenceのアナリストによると、今回の規制の影響は、2018年にゲームが規制され始めた当初よりは少ないと予想される、とのこと。
「未成年者のプレイ時間と支出の削減に関する当局の懸念は、すでに無数のシステムにより対処されており、少し高めのコンプライアンスコスト(規制遵守にかかる費用)をかけて積極的に展開できる」と述べられています。
また売り上げ的にも、テンセントのゲーム事業売上のうち16歳未満は6%にすぎず「このような取り組み(未成年者のプレイ時間の制限)による売上への影響は小さいかもしれません」とも付け加えられています。
しかし、たとえ目先の金銭的な打撃は小さいとしても、今後の新作ゲームや追加コンテンツづくりが萎縮する効果は無視できないとも思われます。
また、もっか第一線で活躍しているゲームクリエイターらが「子供の頃に触れたゲーム」から多くのことを学んでいる事実を振り返ると、長い目で見れば中国のゲーム産業に着実に影響が及んでいく規制となるかもしれません。
Source:South China Morning Post