米Intelは2月21日、Intel Foundry Direct Connectと呼ばれるイベントをサンノゼで実施し、名前の通りIFS(Intel Foundry Services、インテルの半導体製造受託サービス)の最新情報を明らかにした。イベントの基調講演はこちらから視聴する事ができる。まずはその基調講演で公開された情報をベースに内容をご紹介したい。
さてその基調講演、のっけからPat Gelsinger CEOがブッコんで来たのがこちら(Photo01)。2030年にNo.2のFoundryになると宣言した訳だが、これがまず意欲的というか、正直、相当に敷居が高い。Visual Capitalistが2023年11月20日に公開した”Ranked: Largest Semiconductor Foundry Companies by Revenue”という記事によれば、2023年第1四半期におけるFoundryの売上は
1位 | TSMC | $16,735M |
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2位 | Samsung | $3,446M |
3位 | GlobalFoundries | $1,841M |
4位 | UMC | $1,784M |
5位 | SMIC | $1,462M |
6位 | HuaHong Group | $845M |
7位 | Tower Semiconductor | $356M |
8位 | PSMC | $332M |
9位 | VIS | $269M |
10位 | DB Hitek | $234M |
その他合計 | $556M |
となっている。ちなみにIFSの2023年Q1の売り上げは$118Mで、2022年Q1の$156Mから減収であり。しかも$140Mもの営業赤字が出ている状況である。目標は2030年度だからこの数字がそのまま使えるわけではないのだが、買収を断念したTower Semiconductorに加え、12nmでの協業を発表したUMCの売上まで加味しても、$118M+$356M+$1,784M=$2,258Mで、まだSamsungに追い付かないという事になる。勿論Samsungの金額にはMemory(DRAM/Flash)が含まれるから、Logicだけで見ればもっと金額は下がると思うのだが。何にせよ、相当なチャレンジであることは間違いない。
ではその相当なチャレンジにどういう策を取るのか、に関しての直接的な回答はまだ示されなかったのだが、ヒントという形で示されたのがこちら(Photo02)。今はGDPの15%程度がDigital Economyに関わる部分だが、2030年にはこれが25%程度まで増えると予測している。この増分の10%のかなりの部分をAI関連が占める、というのがIntelの予測であり、これが実現するとよりAIのニーズが増えることになる(Photo03)。そしてAIのニーズを満たすためには、より先端プロセスを利用したAI Processorが必要であり、ここで先端ロジックを提供する(というか、先端ロジックしか提供できない)Intelが大きく売り上げを伸ばせる可能性がある、と見ているようだ。
さて、今までIFSに関しては2024年までのロードマップしか公開されていなかったが、今回2027年頃までのものが初公開された(Photo04)。ここで
- 昨年12月にASMLがHigh-NA EUV Stepperの初号機をIntelに向けて出荷したが、このHigh-NA EUV Stepperを利用したIntel 14Aと、更にこの改良型であるIntel 14A-Eを2027年頃までに利用可能とする
- 現在IntelはRibbon FETを利用したGAA構造のIntel 20Aと、この改良版であるIntel 18Aの開発を行っているが、これに続き性能改善版のIntel 18A-Pを2025年以降に予定している
- Intel 4を利用したMeteor Lakeは既に出荷を開始しており、今年はIntel 3を利用したSierra Forest/Granite Rapidsが予定されているが、これとは別にIntel 3にFoveros Directを組み合わせたIntel 3-Tを今年中に提供開始予定である。またこれに続き機能拡張版のIntel 3-Eと、性能向上及びFoveros Direct対応のIntel 3-PTも予定している
- Mature NodesとしてIntel 7及びIntel 16(14nmプロセスの車載向け版)のアナウンスは既にあったが、これに加えてIntel 16の機能拡張版であるIntel 16Eも既に提供可能な状況にあるとされる。また今年1月25日に、UMCと共同で12nmプロセスをIntel 12として提供する事を発表した。IntelはArizonaのOcotillo CampusにあるFab 12/22/32(現在は14nm++の製造を行っている)を、このIntel 12に転換予定(IrelandのFab 24は引き続き14nm++の製造を行う模様)。2027年にサービスを開始予定である
となっている。実のところ、このうち機能拡張(“feature extension”)と呼ばれるIntel 14A-EやIntel 3-E、Intel 16-Eは、何がどう拡張されるのか、などはさっぱり不明なままである。このあたりの詳細が公開されるまで、まだだいぶ時間が掛かりそうだ。
ちなみに話をAI Processorに戻すと、2024年~2030年までのロードマップというか予想スペックがちょっと示されたのはなかなか興味深い(Photo05)。2027年にIntel 14Aを利用して製造されるAI ProcessorはTDPが1300Wを超え、HBMは12Stackとなる。またこの2027年あたりにGlass Core Substrateが実用化されると見ているようだ。さらにFoveros DirectもBump Pitchが4μmまで縮小される予定であることも明らかになった。
今回はとりあえず基調講演をベースとした話で詳細はまだ不明な点も多いのだが、そうした部分は追々ご紹介したいと思う。