カシオ計算機は2月7日、2024年3月期第3四半期(10~12月)の決算発表をライブ配信した。当期の実績は、売上高677億円、営業利益は36億円、営業利益率は5.4%。売上高は前年同期とほぼ同様だったものの、営業利益率は5.4%となり、経常利益および当期純利益は、ともに対前年比で70%を割り込んだ。

中国市場の景気減速が大きく影響

時計事業の売上高は447億円で、対前年同期比108%と微増。その一方、営業利益は61億円で、前年同期より14億円の減収となった。その要因として「中国市場の景気減速が大きく影響している」と、カシオ計算機 執行役員IR財務戦略担当 田村誠治氏は語る。

  • 2024年3月期第3四半期(10~12月)の実績

  • 2024年3月期第3四半期(4~12月)の実績。時計事業とコンシューマ事業の減益が目立つ

日本国内は、シーズン的なギフト需要などで直営店が好調。プレミアム価格帯の商品もG-SHOCK40周年記念モデルなどが牽引した。が、期待値には届かず「中国の経済減速が年末にかけて特に激しくなり、それが『独身の日』(※1)の売り上げや春節期間での日本国内のインバウンド回復にも影響した」(田村氏)とのことだ。

※1:中国で毎年11月11日に祝われる独身者の日。「1」が4つ並ぶことから、独身者を意味する。もともと大学生たちが始めたイベントだったが、後にインターネット通販の大規模なセールや商戦の日としても知られるようになった。

  • 時計事業の実績と地域別売上高。中国の景気減速は予想以上だったという

なお、2023年9月には東京を皮切りにG-SHOCKの大規模PRイベント「SHOCK THE WORLD」がスタート。カシオは時計事業再成長のための戦略投資として年間30億円を設定しているが、第3四半期はロンドン(イギリス)、ニューヨーク(アメリカ)、ベルリン(ドイツ)、上海(中国)、バリ島(インドネシア)、ムンバイ(インド)といったように開催が集中したため、これらの投資計約15億円が今期決算に折り込まれている。

  • 「SHOCK THE WORLD」の開催と販売戦略を有効に連動

  • ニューヨークで開催された「SHOCK THE WORLD」の様子

各事業環境に応じた戦略の策定とともに、構造改革を実施

G-SHOCKは「GA-2100」や「GA-B2100」など、2100シリーズのバリエーション展開が欧州を筆頭に好調。マルチスポーツ対応の「GBD-H2000」などスポーツラインの「G-SQUAD」もグローバルで堅調だ。また、CASIOブランドがアナログトレンドをつかみ、好調だった。

  • G-SHOCKのプロダクツ別実績。人気モデルは売れたが、総合的には期待値に届かなかったという

  • 欧州を筆頭に好調な「GA-2100」のバリエーション、女性からも人気の「GMA-P2100」シリーズ

  • 着けやすく、時刻が見やすいオリジンデザインと、光学心拍センサー搭載の高機能で好評なG-SQUAD「DW-H5600」

  • アナログニーズに応えるCASIO CLASSIC「AQ-230A」

ちなみに、第3四半期のG-SHOCK売上個数は約200万個(内BABY-G 約20万個)(※2)、時計商品におけるG-SHOCK比率(BABY-Gを含む)は 約53%を占めている。うちメタルモデルは約16%、プラスチックモデルは約37%という内容だ。

※2:前期同期の売上個数は約210万個(うちBABY-Gは約20万個)

カシオが注力する中国、ASEAN、インド市場への取り組みについて、田村氏は以下のように語る。

田村氏「中国は、イベントと連動した企画を直営店舗で実施。ECではSHOCK THE WORLDの生放送配信やSNS配信を実施しています。イベント終了後には主要都市においてポップアップ企画を展開しています。

ASEAN地域は、12月上旬にバリでSHOCK THE WORLDを開催。ASEAN地域で影響力のあるメディアを招待したほか、ヒップホップ界で有名なリッチ・プライアン氏を起用したエリアプロモーションを実施。ASEAN 9カ国の店舗でSHOCK THE WORLD連動コーナーを展開しています。

インドは、インド全土の店頭で各キャンペーンを実施、クリケット選手のシュブマン・ギル氏やボリウッドスターのヴィッキー・コウシャル氏を二大アンバサダーととして起用し、ブランド認知の拡大、ビジュアルマーチャンダイジングを意識した店舗展開を図っています」

今後の見通しについては、「中国市場は前期の(コロナ禍による)低調から一定程度の回復が見られたものの、想定より厳しい環境が継続している」と述べ、「消費動向の弱さが見られる北米、ASEAN地域の一部の国と合わせて、引き続き動向を注視していく」としている。

同時に「事業環境に応じた各事業の成長戦略の策定と、一段の筋肉質な体制とすべく構造改革を実施する予定」とのこと。その時期と内容については、現段階では検討中としつつも「期末にかけて報告できれば」(田村氏)と語った。

  • 時計事業のエリア別実績と概況。北米以外は回復基調ながら勢いは緩い

  • EdTech(教育)事業は、前期に関数電卓の値上げ前の駆け込み需要があり、その反動でより減少したように見えている。サウンド(楽器事業)事業はコロナ禍の「巣ごもり需要」の反動が表れている

  • 事業別の今後の取り組み。コンシューマセグメントではEdTech事業で収益を確保、市場が低迷する楽器事業をカバーする計画