マイクロソフトが6月25日に発表した次世代OS『Windows 11』は、UIの刷新やAndroidアプリ対応といった新機能に加えて、PCゲーミング向けの機能強化も目玉のひとつです。
マイクロソフトは Windows 11 のゲーミング向け新機能として、Auto HDR と DirectStorage、そして Xbox アプリ標準搭載を挙げています。
Windows 11 は現行の Windows 10 を継承発展させた次期Windows OS。中央配置になった新しいスタートメニューやタスクバー、磨りガラスのような半透明を多用したシンプルなデザイン、アプリの組み合わせやウィンドウレイアウトを記憶して素早く切り替える「スナップグループ」などマルチタスクやプロダクティビティ機能の強化、Win32含む幅広いアプリに対応し他社の決済システムも「ストア税」なしで使えるストア刷新、Androidアプリのネイティブ対応といった新機能を含みます。
マイクロソフト Windows 11 発表。UI / ストア / ゲーミング全般を刷新、正式リリースは年末
ゲーミング向けの新機能として挙げられた Auto HDR と DirectStorage は、どちらもゲーム専用機の Xbox Series X|S で先行導入していた機能です。
Auto HDR
Auto HDR は、DirectX 11など古い世代に作られたSDR(スタンダードダイナミックレンジ)のゲームを自動的にHDR(ハイダイナミックレンジ)に拡張して、より鮮明な映像で表示する機能。
たとえばSDR対応のゲームが「明るさ0から10」で作られていた場合、「明るさ0から15」まで表示できるHDR環境で遊んだとしても、そのままではHDRの恩恵は受けられません。
HDRで表示するため、単純に一番明るい10を15のように引き伸ばしてマッピングしまうと、空に浮かぶ雲の白い部分がすべて強いハイライトの眩しさになってしまうといった可能性があります。
Auto HDRはこうした課題に対して、機械学習を利用してゲーム映像の部分ごとに中身を認識して階調を調整し、自然なHDR映像に変換する機能です。
先行導入されたXbox Series X|Sでは、特に空や道路、建物、植物、爆発など「正解」が分かりやすいリアルな映像ほど効果が高く、古いゲームでも元からHDRで作られたように自然に鮮やかになる傾向でした。
利用するには当然ながらHDR対応のディスプレイが必須。Windows側でゲームのHDR表示が有効になっている必要があります。
DirectStorageは1TB NVMe SSDとDirectX 12 Ultimate GPUが要件
もうひとつのDirectStorageは、ストレージからGPUにテクスチャなどのデータを転送する際、オーバーヘッドとなっていたCPU処理を迂回して高速転送を可能にする技術。
ハードウェア・ソフトウェアを統合して設計されたXbox Series X|Sでは、「Xbox Velocity Architecture」の一部として先行導入しています。
画像は DirectStorageの利用要件。日本語では微妙に分かりにくくなっていますが、必要なのは 『「標準NVM Express コントローラー」ドライバで動くNVMe接続SSDで、空き容量1TB以上』および『シェーダーモデル 6.0 をサポートする DirectX 12 Ultimate 対応GPU』。
(更新: マイクロソフトが DirectStorageのハードウェア要件を書き換えました。改訂後は「「標準NVM Express コントローラー」ドライバで動くNVMe接続SSD」および「Shader Model 6.0をサポートする DirectX 12 GPU」へ。対応して本文を一部書き換え・削除しました。)
PCゲーム側での対応はまだこれからですが、レイトレーシングのように利用を前提とした開発や大きな作業が必要となる新機能とは異なり、DirectStorage対応の開発者側負担は比較的低いと考えられること、開発環境としてはすでにXbox Series X|S向けに提供されていることなどから、Windows 11と同時期に対応ゲームが増えるものと予想できます。
Xbox アプリ標準搭載。Xbox Game Pass やクラウドゲーム対応
こちらはWindows 11固有というより、標準搭載なのでついでに含めておこう程度で挙げられた機能。XboxアプリはWindows 10でも利用できます。
XboxアプリではPCゲームの購入や管理、実績やソーシャル機能が使えるほか、定額遊び放題サービス Xbox Game Pass のブラウズや加入が可能。
さらに全部入りプランの Xbox Game Pass Ultimate 加入者ならば、ブラウザや Xboxアプリ内でクラウドゲーミングにアクセス可能になります。(ブラウザ対応は近日、Xboxアプリ内での対応は年内)。
クラウドゲーミング(xCloud)は、Xbox Game Pass に含まれるゲームをクラウド側で実行して映像としてストリーミングすることで、ネット動画が見られる程度の端末と高速な回線があれば、本格的なゲーミングPCやゲーム専用機と同じゲームが遊べる機能。Google では Stadia、ソニーでは PlayStation Now、AmazonではLunaとして提供しています。
マイクロソフトはこのクラウドゲーミングを、端末を問わず同じゲームにアクセスする手段、高額なゲーミングPCや専用機を買わない層にも幅広いゲームを提供する手段として力を入れており、家電各社と協力してテレビへの組み込みや、Chromecastのように安価なスティック型のストリーミング端末、さらにストリーミング前提の新たな料金プランなどに取り組んでいることを明言してきました。
クラウドゲーミングはすでに Androidスマートフォン向けに提供しているほか、近日中にウェブブラウザを通じて iPhone やPCにも、年内には Xbox アプリ内の機能として提供予定です。
すでにXbox Game Pass Ultimateに加入しているゲーマーにとっては、Windows 11 (あるいはWindows 10のXboxアプリ、あるいはブラウザ)を使うことで、ゲーミングではない非力なノートやタブレットでも、いつも遊んでいる本格的なゲームをそのまま好きな場所で遊べるようになります。
ストリーミングなので通信環境に恵まれている必要があり、応答速度では不利になりますが、レイテンシが厳しくないゲームや、激しいアクションを含むゲームでもシングルプレーヤーの部分、消化ミッションやクエストはクラウドゲーミングで、本気で対戦するときは専用機やゲーミングPCでといった遊び方ができるようになります。
一方でゲーミングPCを買う発想がない、次世代ゲーム機も買わない、でも配信などで見るゲームが気になるというカジュアルな層にとっては、PCのスタートメニューからゲームパスへの加入が容易になり、Windows 11 (やWindows 10)のXboxアプリ、またはウェブブラウザから、ゲーミングPCや専用機と同じゲームが遊べるようになります。
マイクロソフト Windows 11 発表。UI / ストア / ゲーミング全般を刷新、正式リリースは年末