パナソニックホールディングスは、2024年度上期(2024年4月~9月)連結業績を発表した。売上高は前年同期比3.2%増の4兆2513億円、営業利益は12.0%増の2160億円、調整後営業利益は7.4%増の2065億円、税引前利益は11.9%増の2509億円、当期純利益は34.5%減の1889億円となった。
パナソニックホールディングス 代表取締役 副社長執行役員 グループCFOの梅田博和氏は、「オートモーティブやエナジーは減収だが、くらし事業やコネクト、インダストリーが販売増と為替換算によって伸長し、全体では増収になった。インダストリーやエナジーでは、生成AI関連の販売が好調である。一方、エナジーの車載電池では国内生産品の需要減が継続したことや、原材料低下見合いの価格改定がマイナスに影響した」と総括した。
営業キャッシュフローは、米国IRA(Inflation Reduction Act=インフレ抑制法)補助金の第三者への権利売却により資金化し、前年よりも増加した。
第2四半期(2024年7月~9月)の業績
第2四半期(2024年7月~9月)のセグメント別業績は、家電などを担当するくらし事業の売上高が前年同期比5%増の8760億円、調整後営業利益が34億円減の259億円となった。
くらし事業のうち、くらしアプライアンス社の売上高は前年同期比2%増の2128億円、調整後営業利益は23億円減の79億円。空質空調社の売上高は前年同期比9%増の2078億円、調整後営業利益は30億円減のマイナス14億円の赤字。コールドチェーンソリューションズ社の売上高は前年同期比3%増の1041億円、調整後営業利益は3億円増の68億円。エレクトリックワークス社の売上高は前年同期比3%増の2633億円、調整後営業利益は17億円増の182億円。なお、中国・北東アジア社の売上高は前年同期比2%減の1759億円、調整後営業利益は46億円減の57億円となっている。
「くらし事業は、景気低迷の影響を受けた中国家電や、欧州A2W(エアトゥウォーター)が減販となったが、国内家電や電材が堅調に推移し、全体では増収になった」という。
国内家電については、「市場全体では厳しいが、パナソニックは前年同期比1%増で推移しており、シェアを高めている。洗濯機やパームインシェーバーなどで、日本の家電の強みを生かすことができた」と述べた。また、ベトナムをはじめとした東南アジアの家電市場は成長基調に転じているが、中国は厳しい状況が続いているという。
明るい材料は、欧州A2Wの回復だ。梅田グループCFOは、「2023年度第1四半期から右肩下がりで急激に落ちてきたが、売上減少率が改善してきた。第2四半期も月を追うごと良化している。2024年度第1四半期に底を打ったと判断しており、第3四半期、第4四半期は、少なくても横ばいになるだろう」と語る。
欧州市場においては、実需の改善に加えて、販路開拓や流通在庫のセルアウト施策を改善。さらに、競争力強化に向けた新商品投入や、下期からは新たな施策を推進することになるという。第4四半期からは工場での生産活動を開始し、収益性へのプラス効果を想定。集合住宅やライトコマーシャル向けA2Wの発売や、PanasonicブランドによるInnova製品の投入、tado゜製品のバンドル販売の開始など、「これまで手付かずだった施策にも踏み出していく」とした。
オートモーティブの売上高は前年同期比4%減の3508億円、調整後営業利益が13億円減の74億円。一部の商品モデルの生産終了や、中国などでの販売不振により減収となった。
コネクトの売上高は前年同期比12%増の3217億円、調整後営業利益は60億円増の145億円。受注が堅調な現場ソリューションや、中国景気が停滞するなかでも一定の投資を捕捉したプロセスオートメーション、SaaS販売の増加によるBlue Yonderの増販が見られた。また、アビオニクスの先行投資や機体製造の停滞に伴う出荷遅延の影響や、メディアエンターテインメントでの市況悪化はマイナスに影響した。
Blue Yonderは、為替影響を除いたスタンドアローンの調整後営業利益が前年同期比12億円増の3億円と黒字化。連結ベースの調整後営業利益は同9億円増となったもののマイナス61億円の赤字となった。なお、戦略投資およびシナジー投資を除く、実力値ベースの調整後営業利益は47億円増の58億円の黒字となっている。また、第2四半期のSaaS ARR (Annual Recurring Revenue)は前年同期比16%増、SaaS NRR (Net Revenue Retention)は103%、SaaS売上比率は、前年同期の47%から50%に高まっている。リカーリング比率は71%となった。
また、Blue Yonderは、米One Networkを買収し、2024年8月から連結対象としている。SaaS ARRの高い成長については、「One Networkの連結だけでなく、Blue Yonderの営業部門の戦力化も貢献している。いまは投資フェーズにあるが、第3四半期以降もシナジーを速く取り込み、SaaS ARRは高い伸びを示すと見ている」と期待を寄せた。
インダストリーの売上高は前年同期比4%増の2722億円、調整後営業利益は40億円増の132億円。「欧州の市況低迷により、産業用リレーや車載用リレー、コンデンサーの減販があったが、生成AIサーバー向け製品の増販により、増収となった」という。合理化や価格改定、円安効果による増益効果もあった。
エナジーの売上高は前年同期比8%減の2185億円、調整後営業利益が96億円増の331億円。なお、IRA影響を除くと、売上高は前年同期比7%減の2459億円、調整後営業利益が84億円増の105億円となった。車載電池は、国内工場の需要低迷が継続。だが、北米工場の販売数量が増加した。また、米カンザス工場と和歌山工場の先行費用の増加、新規OEM向けの先行費用などがマイナスに働いた。産業・民生では、生成AIの進化により、データセンター向け蓄電システムが大きく成長して、増収増益になった。
その他/消去・調整は、売上高が904億円、調整後営業利益が78億円増の281億円となった。ここに含まれるエンターテインメント&コミュニケーションはデジタルカメラが伸長。ハウジングは新築住宅向けが減少したが、リフォームや非住宅向けが伸長した。
通期見通しは据え置きだが、生成AI関連の成長が想定以上
一方、2024年度(2024年4月~2025年3月)連結業績見通しは年初計画を据え置き、売上高は前年比1.2%増の8兆6000億円、営業利益は5.3%増の3800億円、調整後営業利益は15.4%増の4500億円、税引前利益は1.1%増の4300億円、当期純利益は30.2%減の3100億円としている。
だが、為替換算や事業環境の変化を踏まえ、すべてのセグメントで売上高見通しを修正。くらし事業とコネクトでは上方修正、オートモーティブとインダストリー、エナジーで下方修正した。また、調整後営業利益では、コネクトで下方修正。その他/消去・調整で上方修正。これ以外のセグメントでは修正はない。
「コネクトの修正は、アビオニクスの機体製造の停滞に伴う出荷遅延影響や、Blue YonderのM&Aに伴う費用を織り込んだことが要因」と説明した。
今回の決算のなかで注目しておきたいのが、生成AI関連における事業成長である。ここでは、インダストリーとエンジーの2つのセグメントにおいて、活発な動きが見られており、「いずれも、年間見通しは、期初想定を大きく上回る」と強気の姿勢をみせた。
インダストリーでは、生成AIサーバー向けの導電性高分子コンデンサーと、多層基板材料が該当。「市場拡大の波を捉え、売上が急拡大している。年間では、前年比1.8倍の350億円の事業規模に成長する見込みである」と述べた。
また、エナジーでは、データセンター向けの蓄電システムの需要が急拡大。年間では、前年比1.8倍となり、事業規模は1000億円超を想定している。
「蓄電システムは、モジュール化したことによる耐熱性や高容量性が評価されている。車載電池などとは異なり、生産設備に対して、長期的な計画を立て、大規模な投資を行うというものではない。必要な投資は行うが、それによって成長に追いついていける性質のビジネスである。生成AI関連については、今後も成長が期待され、収益性も高い。下期の高い伸びが期待される。需要をしっかりと取り込むべく、対応の強化を図っていく」との考えを示した。
2024年度は、パナソニックグループにとって、中期計画の最終年度となるが、累積営業キャッシュフロー2兆円、累積営業利益1兆5000億円、ROE10%以上の3つの経営目標のうち、累積営業キャッシュフロー以外は未達になることが明らかになっている。
「中期計画の3年間は投資フェーズにあり、キャッシュフローを重視していた。だが、浮き彫りになったのは収益性の低さ、投下資本の収益性の低さである。ここにしっかりとメスを入れることが大切である。低収益事業に手を入れ、2026年度末には、ROIC(投資資本利益率)がWACC(加重平均資本コスト)を下回る事業がないように手を打っていくことになる」とした。
2023年度末には、8事業部が低収益事業に位置づけられており、売上構成では約20%を占めるとされているが、「固定費や投下資本を見直すなど、やることはまだ多い」とした。
また、中期計画では、車載電池、空質空調(A2W)、サプライマネジメントソフトウェアの3つを重点投資領域としてきたが、「2年間を経過して、世の中の事情も変わってきた。投資のスピードは調整する必要がある。車載電池の投資もピークも超えようとしている。これからも3つの投資領域を堅持するという考え方はなく、見直しをしていくこともありうる」と語った。
2025年度から始まる新たな中期計画では、新たな成長投資戦略が盛り込まれることになりそうだ。