総務省の動きが活発だ。1月22日にはICTリテラシー向上に関する新プロジェクトの発表会を開催、「つくろう!守ろう!安心できる情報社会~DIGITAL POSITIVE ACTION~」を発足することが発表された。ティザーサイトもオープンしている。
このプロジェクトは官民連携によるもので、総合的なICTリテラシー向上の取り組みを推進するためのものだ。
インターネット、そしてSNSの利用が浸透していくことで、そこでの偽・誤情報や詐欺広告、誹謗中傷などが目立つようになっているが、災害やパンデミック時にはこれらの不適切な偽・誤情報等が市民の生活に深刻な影響を及ぼしている。
その一方で、デジタル技術は人々の暮らしに深く浸透しつつあり、それを積極的に活用していくためには、誰もが責任ある行動をとることが重要だと総務省は訴える。
総務省と19の事業者・関係団体が協働してリテラシー向上を啓蒙
「DIGITAL POSITIVE ACTION」では、総務省が総数19の事業者や関係団体らと協働し、官民の取組を集約したWebサイトの開設や多様な広報活動等、更なるICTリテラシー向上に向けた官民が一体となった取組を推進する。
19の事業者・関係団体は一般社団法人安心ネットづくり促進協議会、一般財団法人草の根サイバーセキュリティ推進協議会、一般社団法人セーファーインターネット協会、一般社団法人ソーシャルメディア利用環境整備機構、一般社団法人日本ケーブルテレビ連盟、一般財団法人マルチメディア振興センター、Google、LINEヤフー株式会社、Meta、TikTok Japan、X、楽天モバイル株式会社、株式会社Gunosy、スマートニュース株式会社、日本マイクロソフト株式会社、株式会社NewsPicks Studios、KDDI株式会社、株式会社NTTドコモ、ソフトバンク株式会社だ。誰もが知る団体、企業が参画してこのテーマに取り組む。
情報の注目度に価値がある「アテンションエコノミー」が広がる
発表会の冒頭で挨拶にたった総務省大臣政務官 川崎ひでと氏は、詐欺や誹謗中傷などが短時間で浸透して、深刻な問題になっていることを指摘、ニセの救助要請でほんものの救助が妨害されるなどの弊害が起こっていると憂う。
その背景には、人々のアテンションエコノミーがあり、注目さえ集めればそれでいいという風潮のもと、さまざまなおかしな現象が指摘されるようになり、憶測だけで作られたコンテンツが蔓延していることがあるとした。
そして、デジタル空間の情報の健全性を担保するためにも、今回の提言が作成され、老若男女一人一人のICTリテラシーの向上が求められることがいかに重要であるかをアピールした。日常と隣り合わせになったデジタル空間を誰もが安心できる場所にするために、そして、ポジティブな未来のために、さまざまな活動をしていくことを力説した。
「インターネットに対するもともとの夢」をどう取り戻していくか
また、このプロジェクトの推進会合会長として慶應義塾大学大学院 法務研究科教授の山本龍彦氏が登壇し、2024年は災害や選挙時にニセ情報関係でリアル社会への大きな影響が確認されたことを振り返った。このままでよいはずがなく、人間が狼化する最悪の事態を防ぐためにも、行動を起こさなければならないと説く。
インターネットを通じた有害情報の拡散防止については、アテンションエコノミーが浸透している今、そのビジネスモデルやカルチャーのもと、もぐらたたきのようなものになる可能性があるし、表現の自由を過度に奪う可能性もある。だからこそ、現在の情報空間を正常なものに保つためには、エンドユーザー一人一人のリテラシーを高めるしかないという。
アテンションさえ得られればいいということではなく、多様な意見を共有することができる不特定多数と交われるインターネット空間ははとても大事なもので、それを否定するものではない。今求められているのは、かつてあったインターネットに対するもともとの夢を守るということだとアピールした。
2月11日には安全なインターネット環境整備のための取り組みであるセーファーインターネットデーに合わせ、官民の取り組み等を紹介する総合サイトが本格的に立ち上がる。そのタイミングで各企業、団体がさまざまな活動を開始することになっている。
山本会長による「インターネットに対するもともとの夢」という言葉が心に響く。その夢を幻想にするのではなく尊重しなければならない。なんとしてでも取り戻さなくてはならない永遠の課題だ。
著者 : 山田祥平
やまだしょうへい
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