AMDは9月30日(米国時間)、「AGESA PI 1.2.0.2」BISOアップデートの提供を発表した。 Ryzen 5 9600XおよびRyzen 7 9700Xで105W cTDPがサポートされ、ユーザーから報告されていたRyzen 9000シリーズの遅延の問題に対処する。

Ryzen 9000シリーズは初期レビューにおいて、特にゲーミング性能で「期待を下回る」という評価を受けた。このBIOSアップデートは、そうしたパフォーマンスの問題を改善する取り組みの一環である。

初期レビューで期待通りの性能を発揮できなかった最大の原因は、Zen 5アーキテクチャの重要な強化点である「分岐予測の精度向上」にWindows 11が最適化されていなかったことにある。この秋に登場するWindows 11 24H2にはAMD固有の分岐予測への最適化が含まれるが、Microsoftはこれに先駆けて8月末にWindows 11 23H2を対応させるアップデートの提供を開始した。これにより、Windows 11環境においてRyzen 9000シリーズ本来の性能を引き出せるようになった。

AGESA PI 1.2.0.2には、Ryzen 9000シリーズのパフォーマンスのさらなる向上を可能にするアップデートを含む。

Ryzen 5 9600XおよびRyzen 7 9700Xで、TDP(熱設計消費電力)をcTDPとして105Wに設定できる。cDTP (Configurable TDP)は、ユーザーやシステム設計者が一定範囲内で調整可能なTDPオプションである。 AMDによると、Ryzen 5 9600X/ 7 9700Xは105Wで動作が検証されており、TDP引き上げの信頼性への影響はなく、保証が無効になることもない。105Wに設定することで、TDP 65Wに比べて最大10%の性能向上を得られ、特にマルチスレッドのワークロードにおいて効果を得られるとしている。ただし、TDP 65Wに比べて発熱が増加するため、温度管理には注意が必要であり、適切な冷却システムの導入が推奨される。

遅延の問題は、Ryzen 9000/7000の複数のCCD(CPU Complex Die)を搭載するモデルで、コア間のレイテンシが報告されていた。AMDによると、これは特定のベンチマークにおいて、Ryzen 9 9000シリーズの異なるコア間で情報が共有される際に、読み取りと書き込みに2回のトランザクションが必要になることが原因であった。コーナーケースではあるが、AMDはこの症状の解消に取り組み、AGESA PI 1.2.0.2導入後は問題が発生していたたユースケースでトランザクションが半減する。改善の効果を受けるアプリケーションは多くはないが、AMDのラボテストでは「Metro Exodus」、「Starfield」、「Borderlands 3」といった一部のゲームや「3DMark Time Spy」のようなシンセティックテストで性能向上が確認された。