米Browser Company of New York(BCNY)は4月30日(現地時間)、Windows用の「Arc」ブラウザの正式版をリリースした。現時点ではWindows 11にのみ対応しているが、今後Windows 10にも対応予定である。

ArcはChromiumベースのWebブラウザで、2022年春にMac版がリリースされた。BCNYはArcを「インターネットのためのオペレーティングシステム(OS)」と表現している。ChromeやEdge、Safariといった既存のメジャーブラウザがWeb初期から続くデザインの延長にあるのに対し、Arcはアプリとしての役割が重要になったモダンなWebに基づいてゼロからデザインされた。

従来のブラウザとは根本的に異なる発想で作られているため、Arcはブラウザユーザーに使い方を学ぶ努力を負わせる。学習曲線が存在するものの、Mac版はそれを乗り越えたユーザーから高評価を得ている。Product Huntのレビューは平均4.7点(5点満点)。The Vergeは「Arcは、私が待ち望んでいたChromeを代替するブラウザ」と次世代ブラウザの評価を与え、Inverseは「Arcは過去10年で最高のブラウザ」と評している。

Arcはブラウザがタブだらけになるのを防ぎ、日常的に利用するWebサイトにスムーズにアクセスできるようにデザインされている。ユーザー体験の要になっているのがサイドバーである。iOSのDockのように常にアクセスできる「Favorites」、目的に応じて複数設定して(「仕事用」「趣味」など)、簡単な操作(トラックパッドで横スワイプなど)で切り替えられる「Spaces」で構成されており、Spacesはよく使うWebサイトを登録しておく「Pin」セクションと、一時的に開くサイトが並ぶ「Today」セクションに分かれている。

ユーザーが自身のWeb利用に沿ってサイドバーをカスタマイズすることで、Arcは使いやすいブラウザになる。ArcによるWeb利用は、タブでWebサイトを開くWebブラウジングより、スマートフォンでホーム画面からアプリを使う感覚に近い。

Todayで開いているタブは12時間(設定で変更可能)で自動的に閉じるようになっており、後で必要になった際にアーカイブから開く。タブだらけにならず、タブを失うこともない。プロファイルを複数設定して、Spacesのスペースごとに割り当てることも可能だ。たとえば、仕事用にセキュリティを厳格にしたプロファイル、個人用にはAI検索サービスを検索エンジンにするなどプロファイルを作り分けておくと、Spacesで簡単に切り替えられる。

ノートやキャンバス機能、インスタント・リンク、AIを活用した機能など、Windows版にはまだ実装されていない機能も多いが、Arcの中核となる機能は揃っている。よく利用するWebアプリにすぐにアクセスでき、必要なWebページを効率的に管理できる。

Windows版Arcをリリースする前に、BCNYはサイドバー同期機能の正式提供を開始した。同機能を利用することで、Windows版ArcとMac版Arc、iOS用「Arc Search」の間でサイドバーを同期できる。