背面配線製品デビューイベントを実施。ProArtシリーズについても説明
ASUS JAPANは、久しぶりのオフラインイベント「ASUS NEXT GENERATION CUSTOM PC」をLIFORK秋葉原IIにて行いました。基本的には2024年4月27日のイベントです(前夜祭付きでした)。まずは27日の様子から。
セッションはクリエイター向けのProArtから始まりました。ProArtは今年2月に行われたCP+ 2024でかなり大きく扱われていましたが、個別のパーツに関しての説明はおそらく初です。
まず紹介したのが、最新製品となる簡易液冷のオールインワンクーラー「ProArt LC 420」で、会場に展示してある製品は市川氏の私物とのこと。製品名に420という名前があるように140mmファンを三連で利用した420mmラジエーターを使用しており、高い冷却性能を持つ製品となります。
ラジエーターも少々厚めで30mm、ポンプは三相モーターでセラミックスリーブを採用。ファンはNoctua NF-A14 IndustrialPPC-2000で最大2000RPMとのことです。
ProArtなので過剰に光ることはないのですが、インフォメーション用の5連LEDが搭載されており、システム負荷や各種の温度等7つのうち一つをバー表示。対応ソケットはIntel 1700/1200/115XとAMD AM4/5と少し前からのIntel/AMDコンシューマー向けCPUに対応します。
420mm簡易液冷を組み込めるケースはまだ限定的ですが、これに対応したProArtの本格ケースがPA602。高いサーマルパフォーマンスで究極の冷却シナリオと称するだけあって、なかなかの豪華装備です。
まずフロント部は15.5mmのオープングリル構造になっており、透過率45%。そのすぐ後ろに200x38mmという「たぶん普通売ってない(市川氏)」という厚いフロントファンを搭載。リアファンは140mmとなっており、これらはPMW制御されています。フロントパネルにはAuto/MAXの切り替えスイッチもあり「最高速度にすると多少うるさいが尋常でないエアフロー(市川氏)」となっています。
マザーボードの手前にはデュアルエアーディフレクターが装備されており、フロントからのエアーをCPUとGPUに効率的に流すようになっているほか、ディフレクターの隙間から裏面配線しやすい構造になっています。
フロント部にはダストフィルターがついているほか、赤外線の透過率をチェックしてフィルター掃除タイミングをインジケーターで示す機能(特許取得)もあります。フロントパネルには当然電源ボタンがありますが、ミスで押すことがないように電源ロックラッチがついています。
ただし「リセットボタンにはこの機能はない。ただ、リセットボタンは多少引っ込んでいるからそこまで問題にならない(市川氏)」。また、USB 3.2 2×2対応のUSB-Cコネクタも装備しています。
サイドパネルもツールレスで開くほか、PCIeのSLOT-1~3は手ねじで一括して開く機能(特許取得)もあり、GPUの取り付けがスムーズ。水平取り付けなら450mmまでのGPUに対応します。また、サイドパネルのProArtロゴ部分にもスリットがあるのでガラスパネルにも関わらず一部吸気対応になっているのが面白いところ。
トップ部分は(当然ながら)LC420にも対応するほか、目障りになりがちな外付けWiFiアンテナをこの部分に収納できるようになっています。
大型のケースゆえに持ち上げるのは大変ですが、このケースはリアにキャスターがついており手前を上げるだけで移動が容易となっているほか、市販のキャスターを4輪取り付けることもできるようになっており、机の下に収納していても引き出してのメンテナンスが容易となっています。
KTU氏とモリケン氏、ASUS市原氏によるトークセッション
今回のイベントではゲストのKTU氏とモリケン氏と市原氏によるトークセッションもありました。
お題になったのが「生成AIってどう思う?」から。このためにポスターには生成AIを使ったお三方の画像が使われており、「そもそもこんなおしゃれな背景のところに行かない(KTU氏)」、「今回の画像を見せたら奥さんがめっちゃ笑っていた(市原氏)」、「手がおかしいよね。指4本ですよ(モリケン氏)」とフェイク画像に対して批評がある一方「DeepLなしでは生きていけないのでAIをうまく使っていこう」との声も。
「BTFシリーズいかがですか?」のお題に関しては、「文言に商標が切れているか、ないラシイ」と市川氏(あちらはBack To The Futureなので略語からTが一つ欠けています)。
製品に関しては「まとめやすさは最高だがケースのUSB周りがイマイチ。ProArtのファンハブのようなものが欲しい(KTU氏)」、「USBケーブルが曲がることによる速度低下はないがメンタル的な不満があるので、あと1cm背面に余裕が欲しい(モリケン氏)」ともうちょっと改善してほしいというコメントもありました。
「ProArtのパーツどうでしょうか?」に関しては「こんなに機能あるんだ。白が増えてきた中で黒い製品(モリケン氏)」、「かっこいい、欲しくなった。一方ProArtらしさのあるオフホワイト系の白モデルも欲しい(KTU氏)」。
「10年ひと昔というが(今回の主催の一社である)アユートの倉庫からこんなPCが出てきた」に関しては「5インチのフロントベイがある(KTU氏)」、「もしかしたら私が組んだかもしれないけど、SSDに換装されてOSも再インストールしたのかも(モリケン氏)」。一方、よくこんな古いものあるよなと言いつつ「うちにもX99のマシンがあった(市原氏)」というオチも。
最後に「GWに組むならこの構成がいーんじゃない?」というまともなお題になったものの、「好きなのを使ってください。僕はグラボ優先で4070 Ti SUPER以上になると突き抜ける。一方、14世代i9はヤンチャで電力的に暴れまくるからこの世代はi7がベスト(KTU氏)」、「GPU一点豪華主義で上げるのもあり(モリケン氏)」と予算のかかる構成がおすすめされていました。
一方、アキバのこの手のイベントということもあり、来場者のRTX 4090率が非常に多かったのも印象的でした。
背面コネクタが新機能!ASUS Back To the Futureシリーズを新人が解説
ASUS BTFの解説は一般イベントでの説明は初という新人の上岡 葵氏が解説。新人と言っても今年入社というわけではなく、2022年入社で勤続約1.5年。普段はパーツの営業担当とのことです。
イベント説明に関しては東京ゲームショウ 2023で説明員をしていたことがあり、パーツ営業担当なので販売店等への説明経験はありますが、商談ではなく多数の前での説明は初とのこと。
BTFとは何かというところからスタート。BTFはマザーボード背面にコネクタを隠すというPC DIYの新しい未来。このためには裏面配線に対応したケースだけでは不十分でコネクタ部分の切り抜きが必要です。
これがBack To the Futureの由来とのことで、SNSの普及もあり、かっこよくインテリア化したパソコンをきれいに見せるため、ケーブルを一切見せないことができるようになりました。従来は見える配線をいかに魅せるかがポイントでしたが、今後は電源ケーブルが一切見えないという作りができるわけです。
今回発表されたのはケース5製品、マザーボード4製品、ビデオカード2製品で、ROGブランドのケースだけ5月出荷にずれ込むとのこと。
マザーボードはTUFシリーズ3製品のROGシリーズ1製品。ROG MAXIMUS Z790 HERO BTFとTUF GAMING Z790-BTF WIFITUFがZ790のATXマザーで、Micro ATXマザーはTUF GAMING B760M-BTF WIFIとそのDDR4版となるTUF GAMING B760M-BTF WIFI D4となります。
ちなみにすべてのコネクタを裏面にしているのではなく、従来CPUソケットの脇にあるためケーブル長が比較的短いCPU FANコネクタは表面にもついています。
エコシステムとしてケースやグラフィックスも用意しているほか、他社メーカーとのBTF互換製品を拡大予定となっており、今回のイベントでは冒頭の写真に示したようにSilverStone、Cooler MasterとInWinのケースも展示されていました。
グラフィックカードからも電源ケーブルを排し、マザーボード上に別途用意されたGraphics Card High-Power Slotを通じて最大600Wの給電に対応するAdvanced BTFも用意されます。ただし、Micro ATX製品はこの機能に対応していません(「八層基盤でも基板が小さいとハイパワーの電源配線は難しい(市川氏)」)。
この辺りから市川氏が補足。Graphics Card High-Power Slotには特許を取得しておらず、他社への広がりを期待しているようです。
Graphics Card High-Power Slotは最大600Wの給電に対応しますが、「今後600W超えたら?」と少々意地悪な質問をしてみました。今のところ超えないハズとコメントしていました。現在の12VHPWRが最大600Wですので妥当な回答でしょう。
600Wの給電に対しては、VGA補助電源 8pinx3と12VHPWRの両方のコネクタがマザーボード上に用意されており、どちらかを使うという想定になっていました。また、マザーボードに設けられた電源コネクタとGraphics Card High-Power Slotの距離は比較的短く、2oz銅箔も使っておりマザーボード内のロスも少なそうです。
また、PCIeコネクタだけでなくGraphics Card High-Power Slotがあるため、グラフィックカードのたわみの問題も軽減されるので、今後の業界の展開に期待したいところ。
背面コネクタの動きは他社も行っており、そちらのケースにASUSのマザーボードを持っていて取り付けてみたところ一応ハマったとコメント(ちなみに展示されていたSilverStoneのSETA A2は発表当初他社の背面対応という案内でしたので、どちらも公式に対応ということでしょうし、両社で差があると普及に影響がありそうです)。
背面のカットラインデータはASUSのホームページで公開されているので、実物大で印刷してケースに貼って切れば使えるかもしれないとアピールしていました。と言ってもリスク高いですし、裏面スペースがある程度あるケースでないと配線が厳しいと思います。
ROGシリーズ唯一のBTFマザーボード、ROG MAXIMUS Z790 HERO BTFにはQ-Release Slimという新しいPCIeスロットを採用しています。
従来のマザーボードでPCIe x16スロットにGPUを取り付ける場合はロック機構を解除するのが結構大変で抜きにくかったのですが、Q-Release Slimは取り付け後に全体に持ち上げても抜けないようにロックがかかっています。バックパネル側から持ち上げると、自動的にロック解除になるという新型のコネクタを使用しています。
バックパネル側は通常ねじ止めされているので、ここを持ち上げるためにはねじを抜いて外すので問題なし。これは他のマザーボードでも対応してほしい機能でした。
27日でのイベントでは「昨日組んでみてどうだった?」と市川氏が上岡氏に尋ねるシーンがありました。実は展示機の一台は前日に上岡氏が公開組み立てしたもの。
上岡氏は「全然違う。表裏とケースを何度もひっくり返さなくてよいし、裏側は最悪汚くてもカバーをつければ見えない」とコメントしていました。組み立てのしやすさもBTFのメリットに挙げられると思います。
前日の組み立ては目標1時間で実際には90分程度で終了していました。自作体験は先日のProArtデモ機に続く二回目で少々ぎこちないものの、CPUのピン折れもなく無事終了。ちなみに市川氏だと30分程度でできるとのこと。
参加者もBTFパーツを実際に体験できた!
最後にBTF配線を体験する機会がありました。と言っても最初から最後まで組むのは時間がかかりすぎることもあり、裏面コネクタに電源コネクタを刺す程度です。通常の自作で電源コネクタ類の配線をするのはかなり面倒な作業になるので、簡単であることは十二分に確認することができました。個人的には、地方のパソコンショップでも体験できるイベントがあれば普及に力が入りそうだと感じました。
ケーブル類がパソコンから見えないところにできるというのは、マザーボードを使った自作では初の試みであり、先進性を十二分に体感することができました。市原氏はメインストリームにはならないという趣旨の発言もされていましたが、「見栄えの良いパソコンを創る」という視点で見ると絶大なイノベーションとなるでしょう。
作例は裏の配線もきれいに処理されていましたが、これは特にやらなくても見えないので、ぐっと押し込んでも大丈夫。ASUSのケースは裏面配線をきれいに処理するための工夫がされています。
Graphics Card High-Power Slot対応マザーとグラフィックカードを使用すれば、配線は一切表に出ないので、最近人気のピラーレスケースの場合、非常にいい感じになると思います(が、ASUSのケースにはピラーレスは現在なく、サードパーティケースを使うことになるでしょう)。
なお、今回のイベントではXキャンペーンを実施していました。指定ハッシュタグの投稿でノベルティがもらえるのですが、ハッシュタグの組み合わせが3通りあり、それだけでノベルティ3種類がゲットできますが、「回数制限はない(市原氏)」という大盤振る舞い。
今回共同主催のテックウインドは、フォロワーにマグネットかカレンダーのどちらかをプレゼントしていました。