• Micron、232層3D NANDを利用したSSDを発表 - PCIe Gen4×4で性能を最大化した「Micron 3500」

米Micronは12月5日にMicron 3500 SSDを発表したが、これに関する説明会が12月14日にオンラインで開催された(Photo01)ので、その内容をご紹介したい。

  • Photo01: 説明を行われたPrasad Alluri氏(VP&GM, Storage Business Unit)。

端的に言ってしまえば、Micron 3500 SSDはPCIe Gen4×4構成のSSDという枠の中で最大限のパフォーマンスを追求した製品、ということになる。232層NANDそのものは既にSSD向けに商品化されているが、内部のデータバスを最適化した事でより高速化が図れた、とする(Photo02)。主な特徴がこちら(Photo03)であるが、Sequential Read/Writeはご覧の通り割と限界の7000MB/secに達している。これはPCIe Gen4の限界なわけだが、それより重要なのはRandom Read/Writeの速度で、こちらを大幅に引き上げたのが特徴である。ちなみに「だったらPCIe Gen5×4構成にすればもっと性能が上がったのでは?」と聞いたが、Alluri氏曰く「PCIe Gen5のコントローラそのものは既に存在するが、まだPC OEMの側がPCIe Gen5×4の構成に対応できない。OEMメーカーがGen5対応になるのは来年だと思う」ということで、それもあってPCIe Gen4構成のものにしたそうだ。

  • Photo02: この6-planeというのは、例えば内部が6つにClusteringされているとかいう話ではなく、Data Busを6ch分用意し、それぞれが独立に動作するように工夫されているという話であった。

  • Photo03: 最近はDRAMlessのSSDが増えているが、Micron 3500はDRAM付きの構成である。

具体的にMicron 3500が狙うのは、高いストレージ性能が要求される(というか、高いストレージ性能に対してコストを支払える)マーケット向け、とされる(Photo04)。まずGamingについては、MicrosoftのDirectStorageに対応しており、これを利用する事で例えばゲームのロードが2秒以下になる、とする(Photo05)。むしろ直接Gamingとは関係ないが、最近言われているAIPCだのAI Capable PCなどで、今後本格的にLLMなり何なりが使われてゆくようになると、当然メモリだけでは追いつかなくなるのでStorageを激しくアクセスするようになる。こうした用途に向けてもMicron 3500は最適だと説明した(Photo06)。実際にPCMark 10のStorage TestやSPECwpcでの結果で、Micron SSDは高い性能を発揮している、とした(Photo07)。

  • Photo04: Gamingでそこまで高速性を求めるユーザーがどの程度居るのか? というのはちょっと疑問ではあるのだが、ScientistとかContents Creationはまぁ理解できる。

  • Photo05: もっともDirectStorageは、MicrosoftのRequirementはあくまで”Standard NVM Express Controller”を搭載している事なので、別にMicron 3500でなくても対応できるのだが。

  • Photo06: 容量の一部をSLCとして扱う事で長寿命と高速性を担保するDynamic SLC CachingはEnterprise向けではよく見る(し、DRAMless SSDもちょくちょく見る)が、DRAM付のSSDで、更にSLC Cachingを併用するのはちょっと珍しい気がする。

  • Photo07: SPECwpcはワークステーション向けのテストだが、これをStorageの評価に使うのはあんまりなかった記憶が。

ちなみにMicron 3500シリーズのフォームファクタはM.2 2280のみの提供で、Photo03にもあるが512GB/1TB/2TBの3製品がラインナップされる。気になるのは今回なぜこれをCrucialブランドで出さなかったのか? という事だが、Alluri氏によれば「Crucialはもっと一般コンシューマ向けの製品展開を行っている」ということで、逆に言えばMicron 3500シリーズは同等容量を持つCrucialの製品(例えばCrucial T500)と比較すると高い値段になる(その分性能は上)ものと思われる。また、将来Micron 3500がCrucialブランドに降りてくる可能性はあるのか? については「そのままストレートに下りてくるわけではない」という事だった。将来的には今回同様に232層NANDを使った製品がCrucialでも発売される可能性はある(というか、T500やT700が既に232層NANDを使っている)が、Micron 3500 SSDをそのまま突っ込むわけではない、という事と思われる。

  • Photo08: 既にPC OEMメーカーには出荷を開始しているとの事。またMicronのStatusによれば全製品量産を開始している。

では差はどこにあるか? というと恐らくはコントローラ側である。Crucialブランドの方は、しばしば他社製コントローラを使う事がある。例えばMX500シリーズはSilicon MotionのSM2259だったし、T500シリーズはPhisonのPS5025-E25、T700シリーズはPhisonのPS5026-E26だった。今回Micron 3500 SSDのコントローラは公開されていないが、多分差別化要因はここであると思われる。ただCrucialでも自社製コントローラを使った例(Crucial P5 Plusがそれで、MicronのSSDコントローラを採用していた)もあるから、今回の構成を変えた形で将来Crucialブランドで投入される可能性はありそうだ。