今年(2021年)もまたiPhoneが発売される。もう、恒例行事になったともいえるiPhoneの発売だ。新しい機種については賛否両論があるようだが、以前のような熱気があふれる新製品というイメージはない。
今年は日本時間の9月15日にiPhone 13の発表会が開催され、翌日以降、各社がその価格等を発表、9月24日の21時に予約の受付をスタート、発売日は10月24日というスケジュールだ。
総務省によるSIMロック解除の義務付けもあり、iPhone 13は、キャリア各社、アップル、量販店など、どこで買っても基本的に同じものが手に入る。一般の人は見落としがちな対応周波数などを含め、まるで同じものだ。
もともとiPhoneは、それを販売する事業者による差異は少なかったが、今回のSIMロック解除の義務化によって、差異がほぼ皆無になった。一般消費者としては、iPhoneが欲しければ、どこで売っているのか、いくらで売っているのかを調べて、そこで購入すればいい。
スマートフォンは昭和的買い物の最後の砦
昭和の時代、電化製品は多少高くても街の電気屋さんで買うのがいいと言われていた。なぜなら、故障のときにもすぐに来て修理してもらえるし、使い方がわからなければ何でもきけたからだ。
だが、昭和の終わりから平成にかけては、家電量販店が台頭し、その原則が変わっていった。同じものを買うなら安い方がいいという意見が主流になったのだ。さらには、ネット通販なども浸透する中で、買い物の原則には、いろいろな変化が起こっていった。
スマートフォンは、いろいろな意味で、昭和的買い物の最後の砦だったといえる。ただ、売りきりの製品ではなく、製品の購入代金はもちろん、通信費という維持費もかかる。また、コンピューターでもあるので、使い方や設定などでサポートを求める層もかなりの数が存在するので、いちがいに、安いところで買えばいいというふうには言い切れない。まだ、誰もが何も知らなくても使えてしまうというほどには成熟してはいないのだ。
複雑な料金体系が生まれる懸念も
懸念があるとすれば、この状況が、また、複雑なモバイル通信の料金体系を生んでしまわないかということだ。実際、キャリア経由での購入では、例えば36回払いで、24回の支払い終了後に、一定の買い取り価格で手元の製品を買い取ってもらえて、次の端末購入の原資にすることができたりといった施策が提示されている。
新品を買ったときから、リセールバリューがわかるというのはすごいことではあるし、それがかなり高額であることもすごい。もっというと、購入したところに売却するのと、まったく異なる業者に売却するのでも価格が異なる。このあたりは、クルマの購入とも似たスキルが求められる。決して安い買い物ではないだけに、賢い消費者になる必要がある。
もっとも、キャリアでの購入は、一括払いで買うよりも、分割の方がリスクが少なくなるということでもあり、結果的に金銭的にもトクをする。普通に考えると変な話だ。
SIMロック無し、eSIMも実装。この自由度は大事
SIMロックされていない端末を誰もが手にすることで、MNPもしやすくなる。オンラインでの契約では契約事務手数料もかからないので、安いプランが出るたびに通信事業者を乗り換えるといったことがカンタンにできる。
しかも、eSIMの実装によって、通信事業者の乗り換えは自宅にいながら1時間ほどでできてしまうのだ。そのことはキャリア間の競争を激化させるだろうし、さらなる低廉化にもつながるかもしれない。もちろんデュアルSIMのサポートもいろいろな変化を生むことになる。
ただ、今なお、LINEをライフラインとして頼っていたり、キャリアメールを命綱的に信じている層もたくさんいる。そこが置き去りにされることはあってはならない。AndroidをiPhoneにしたら履歴をスムーズに移行できないとか、安いプランにしたらキャリアメールは使えなくなってしまうという状況も、きちんと説明しなければならないだろう。もちろんそれにはコストもかかる。こうしたことがあるので、キャリアは本当にたいへんだと思う。
だが、方向としては、これがあるべき姿だと思う。社会生活に欠かせない存在となった携帯電話やスマートフォン、その第2のフェイズが今始まったのだといえそうだ。
著者 : 山田祥平
やまだしょうへい
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