パナソニックグループは、2025年4月13日から開幕する大阪・関西万博の同グループパビリオン「ノモの国」の概要について説明した。

パナソニックグループパビリオンは、「解き放て。こころと からだと じぶんと せかい。」をコンセプトに、また「Unlock your nature」をテーマに掲げ、敷地面積は3508平方メートル、延床面積は1732平方メートルのパビリオンを建設。子どもたちが秘められた力を解き放ち、非日常体験ができる922平方メートルの「Unlock体験エリア」と、研究開発中の技術を用いて未来社会のアイデアを具現化した165平方メートルの展示エリア「大地」で構成している。パナソニックグループが長年培ってきた「ひとの理解」研究に基づく技術や空間演出の技術などを活用。建築には、使用済み家電から回収したリサイクル鉄やリサイクル銅、工場端材および廃材などを活用し、日没後のライトアップには、ゼロカーボン電力由来の水素で発電した電力を使用し、7色のカラーで、色の移り変わりを楽しめる演出なども行うという。

  • 大阪・関西万博のパナソニックグループパビリオン「ノモの国」

パナソニックグループパビリオンは、Osaka Metro中央線夢洲駅に直結する東エントランスゲートを入ると見える場所にあり、同社では、「会場に入り、最初に寄ってもらえる場所になる」としている。また、Unlock体験エリアは約30分間、大地は約15分間の合計45分間で体験ができるという。会期中に45万人が体験できるようにする計画だ。

なお、「ノモの国」の名称は、「モノの捉え方はココロの持ちようで大きく変わる」ことを示し、モノという言葉をひっくり返し、「モノとココロは写し鏡のような存在である」という思いを込めているという。

パナソニック ホールディングス 万博推進プロジェクト総合プロデューサーの原口雄一郎氏は、「大阪・関西万博の主人公は、次代を担う子供たちである。子供一人ひとりが自分の輝く未来を想像し、可能性を信じて、一歩を踏み出すきっかけを届けるものにしたい。また、万博を通じて、パナソニックグループ社員の意識改革や技術開発を加速するとともに、次世代の子供たちにインスピレーションを与えることができるパビリオンを目指している」とし、「パナソニックブランドと接点が少ないα世代が、パナソニックグループに関心を持ってもらうこと、技術やデザインなどに関わる社員が、子供たちと接点を持つことで次の世代に向けたヒントを得て、社会課題解決のための事業開発へとつなげたい」と述べた。

<動画>タイムラプスで見る、パナソニック万博パビリオンが完成するまで

パビリオンの外観デザインは、建築家の永山祐子氏が担当。インフィニティループのようなデザインをしたモチーフが約1400枚折り重なり、720度の循環を表現したファサードを構成。モチーフの大きさは、直径約1.0m~1.5mの4種類で、鉄製のフレームに薄いオーガンジーを張り、風に揺らぐ軽やかで自由な建築を実現。その時どきの条件で様々な見え方を楽しんでもらうことができるという。夜になると下方向からミストが噴射され、LEDによるライトアップとともに幻想的な雰囲気を演出とするという。

  • 夜間はライトアップされる

  • ノモの国の全体模型

  • 外観に使用されるファサード。ハギレを使ってスカーフなどの作成している

パナソニックグループパビリオンでは、サステナビリティに関する工夫も凝らしており、隣接するNTTパビリオンに設置した太陽光発電により、日中に生成した水素エネルギーを、地中パイプラインを通じて、パナソニックグループパヒリオンに送り、純水素型燃料電池に蓄積。夜間のLEDによるライトアップなどに電気を使用するという。

また、約1.2トンの家電リサイクル銅による幹線ケーブルを891m敷設したほか、柱や梁の約98%に、97トンの家電リサイクル鉄を使用。9200台のドラム式洗濯機の扉の裏側にあるガラス部分をリサイクルして作り上げた舗装ブロックを、749平方メートルに敷き詰めた。さらに、テレビプリズムシートや空調機器銅管、アラウーノ樹脂、レンジフードアルミ板、システムキッチン人造大理石、パイプフードステンレス板、グラスウールといった製造過程で生まれる端材や廃材をアップサイクルして活用。マレーシアでパーム油収穫のために植えられるアブラヤシの廃材をアップサイクルした板材「PALM LOOP」を、パビリオンで使用する家具に利用しているという。

さらに、パビリオンで着用するユニフォームは、植物由来原料を使用した素材であり、再利用を可能にした循環型としている点が特徴となっている。7分袖シャツや半袖シャツ、ベストなどを組み合わせて着用するなど、自由な着こなしができるという。

  • NTTパビリオンで生成した水素エネルギーをパナソニックグループパヒリオンの純水素型燃料電池に蓄積する

  • ドラム式洗濯乾燥機のガラス廃材を利用した舗装ブロック

  • ノモの国の運営スタッフが着用するユニフォーム

  • 夏場でも過ごしやすいように脚の部分はメッシュによって通風性を高めている

  • 誰でもが着用しやすいようなボタンを採用した

  • デザインナにあわせたポーチを携行している

「ノモの国」の「Unlock体験エリア」は、次代を担う子供たちが、常識や思い込みから解き放たれ、自身も気づいていない秘められた力や可能性を「Unlock」する体験型パビリオンとなっており、4つのZONEで構成している。

ZONE1となる「カガミイケの奥深く」では、心の持ちようで世界の見え方が変わるという体験が可能であり、23.4チャンネルの立体音響を軸としたクロスモーダル体験により、普段意識しない感覚を研ぎ澄ますことができるという。ZONE2の「ノモの森」では、循環する世界を表現した森でココロが解き放たれていく体験が可能で、「結晶」を見つけ、一人ひとりがこれを持ち、自由なココロで未知の世界を探索することになる。「結晶」をかざすと、光や音、風が発生し、子供たちの感性に反応するという。ZONE3は、「古木の谷」としており、自分らしい感性を発見し、その可能性を想像する場としている。自分の秘めた力と向き合うことができるエリアになるという。ここでは、体験中の来館者の行動分析や表情分析を行っており、一人ひとりの感性とその可能性を、ストーリーとして映し出すことになる。

「結晶のなかには、RFIDが搭載され、行動履歴を収集している。また、7台のカメラを設置し、人の動きを分析している。これを掛け合わせることで、子供たちがどこを、どの順番で巡ったのか、先んじて動くのか、後から動くのか、多くの人が行く場所に行くのか、それとも人が行かない場所に行くのかといったことが分析できる」という。

また、透明OLEDの裏に設置された4台のカメラから顔の特徴点や視線や瞬きを捕捉して、表情データを取得。喜びや驚き、視線変動量、黒目サイズなどをもとに、ワクワク度や集中度を分析する。

ZONE3とZONE4の間には、シルキーファインミストを活用したミストウォールを「ミストの滝」として設置。その向こう側に、勇気を持って一歩踏み出す演出が行われる。独自開発の気流拡散抑制機構により、幅7m×高さ3.5mの滝状のシルキーファインミストによるスクリーンが目の前に現れることになる。

ZONE4は、「大空へ」と題したエリアで、没入型シアターにより、解き放たれた感性が、つながる世界に作用していくことを演出。子供たちが起こす風に乗って、音を奏でながら、周囲の蝶たちと響き合い、大きなエネルギーとなって大空へと羽ばたいていく様子が見られる。このクライマックスシーンでは、ボルテックスリングを活用し、映像が照射された直径1.3mのミストの渦輪が、天井の5か所から降り注ぐことになる。

「パナソニックグループが持つ照明、音響、空調の強みを生かすとともに、人と自然のより良い循環を生み出すことができる研究開発中の技術を活用し、五感を解き放つイマーシブで特別な空間体験ができる」としたほか、「ひとの理解研究に基づく、表情解析や行動解析によって、参加した子供たちの特性を分析することができる。好奇心やリーダーシップ、自律指向など、子供を軸とした感性モデルによって特性を分類。性格的な強みとして4種類、強みを発揮する環境で8種類を掛け合わせた合計32種類の行動特性を示すことになる」という。

最終的には、行動分析と表情分析などをもとに、百数十種類の異なる「蝶」が、それぞれの子供に宿るというストーリーになっている。

  • Unlock体験エリアで使用する「結晶」。RFIDが内蔵されている

  • シルキーファインミストを活用したミストウォール「ミストの滝」

  • 結晶と引き換えに渡されるカード。自らの行動特性などがわかる

一方、「大地」のエリアでは、人の営みと自然の営みを組み合わせた720度の循環をテーマに、研究開発中の技術によって、子供たちや共創パートナーとともに、より良い未来を考えていくための展示を行うという。

具体的には、成長刺激剤「Novitek(ノビテク)」、「ガラス型ペロブスカイト太陽電池」、セルロースエコマテリアル「kinari(きなり)」、「バイオライト(発光微生物)」、「社内空間プロジェクトの横断的な融合・進化」の5つの技術展示を行う。

成長刺激剤「Novitek(ノビテク)」は、食糧の生産力向上をもたらす新材料であり、屋内環境において、とうもろこし、トマト、ほうれん草などの葉面に塗布し、生育状況の効果検証を行う。

「ガラス型ペロブスカイト太陽電池」は、発電するガラスと位置づけているもので、これが都市空間にどう溶け込んでいくのかを展示する。懐中電灯を太陽に見立て、これを、ガラス型ペロブスカイト太陽電池を採用した建物に当てると、エネルギーを活用して光ったり、動き出したりする様子を体験できる。インクジェット技術を活用した独自加工技術によって、デザイン性の高いガラス型ペロブスカイト太陽電池を実現できることも紹介。ヘラルボニーとの共創によって開発した1.0×1.8mのガラス型ペロブスカイト太陽電池を参考展示する。ガラス型ペロブスカイト太陽電池は、2026年に製品化する予定だ。

セルロースエコマテリアル「kinari(きなり)」は、最大85%の植物繊維(セルロース)を含む植物ベースの高機能素材であり、会場では、自然に還るリーフオブジェを天井に展示。100%の生分解素材により、7~8カ月後には、水とCO2となって土に還るという。また、廃材の利活用についても展示。ジーンズやおがくず、カカオハスク、旧紙幣などを裁断し、ペレット化し、新たな商品づくりにつなげることも紹介する。

「バイオライト(発光微生物)」は、発光微生物を長期に培養する技術を同社が開発。60Lの水槽を設置して、そのなかに発光微生物を入れて、発光させるという。発光微生物が酸素を体内に取り込むことで、体内の酵素と化学反応し、発光する仕組みを利用。環境負荷が低く、未来の日常生活を彩ることができるバイオライトを実現することになる。

「社内空間プロジェクトの横断的な融合・進化」では、自然を五感で感じる空間を実現するという。住空間のなかに自然を感じることができる要素が少なくなっていることに着目し、自然の心地よさを、テクノロジーを活用して再現したものになる。ミストと照明の組み合わせにより、気流の流れを可視化し、揺らぎを見ることで心を落ち着かせることができる。また、きのこの菌で作った菌糸パネルを配置。日本家屋のような匂いや質感を体感できるという。さらに、木漏れ日の下で眠る心地よさを再現した展示物も用意する。

なお、パナソニックグループでは、大阪・関西万博での会場展示に加えて、バーチャルパビリオンによる発信、ノモの国のストーリーに準拠したオリジナルアニメ作品の制作、子どもたちと共創する「ノモのコプロジェクト」の推進なども進めている。

  • 成長刺激剤「Novitek(ノビテク)」。屋内で生育の実験を行う

  • インクジェット技術によって、デザイン性の高いガラス型ペロブスカイト太陽電池を開発

  • ジーンズやおがくず、カカオハスク、旧紙幣などを裁断し、ペレット化し、新たな商品づくりにつなげる

  • 天井部にあるリーフオブジェ

  • 発光微生物を利用したバイオライト

  • きのこの菌で作った菌糸パネル。日本家屋のような匂いを再現する

  • 木漏れ日の下で眠る心地よさを再現した展示

ビデオメッセージを寄せたパナソニックホールディングス 関西渉外・万博推進担当参与であり、ノモの国の館長を務める小川理子氏は、「開幕直前となり、準備は最終段階に入っている。運営スタッフのトレーニングも着々と進んでいる。ワクワクしているところである。ノモの国では、世代に関係なく、世界中の人が楽しめるように、ココロを解き放つような、いままでにない体験をしてもらえるパビリオンになっている。いのち輝く未来社会のデザインに向けたパナソニックグループの企業姿勢を、世界に向けたメッセージとして発信していく」と抱負を述べた。

  • パナソニック ホールディングス 万博推進プロジェクト総合プロデューサーの原口雄一郎氏

  • パナソニック ホールディングス 万博推進プロジェクトテクニカルディレクターの原吉輝氏

  • ビデオメッセージを寄せたパナソニックホールディングス 関西渉外・万博推進担当参与であり、ノモの国の館長を務める小川理子氏

  • 2025年2月にパナソニックグループパビリオンを見学したパナソニックホールディングスの楠見雄規グループCEO

  • 万博の開催概要、日程や会場図