HPのゲーミングノートPC新製品として、「OMEN Transcend 16」が発売中です。HPが展開しているハイエンド向けブランド「OMEN」と、エントリー向けである「Victus」の間を埋めるべく開発されたとのこと。本体カラーも軽やかな白に設定されており、一昔前のゲーミングPCのように無骨な印象とは無縁です。

今回、このOMEN Transcendにおける最上位モデルを試用できたので、レビューについてお届け。忙しい方向けにまとめておくと、もはや“間”を埋めるどころではない圧倒的な性能。というより事実上、上位モデルのOmen 16の存在意義すら揺らがせる逸品に仕上がっていました。

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Omen Transcendの位置づけとは。HPのゲーミングノートPCを整理する

製品実機を紹介する前に、まずはOmen Transcendの位置づけについておさらいしておきましょう。このブランドについてよく見ると、シリーズ固有の特色として“白いボディ”かつ“ハイエンド構成”であることが挙げられそう。

特にCPUが強力で、上位ブランドのOmenでも選択できないIntel Core i9-13900HXを搭載。ディスプレイにはmini-LEDバックライトを採用しており、ローカルディミング機能もサポートする点もポイントです。Omenより下というよりは、用途や好みに応じて選択できる兄弟機のような位置づけになりそうです。

ちなみに下位ブランドであるVictusを見てみると、ホワイトカラーの採用が共通しています。整理すると、各シリーズにおけるユニークな特徴は下記の要素にまとめられるかも。

  • Omen:GeForce RTX 4080 Laptopによる圧倒的なGPUパワーが特徴。ただしブラックモデルのみ
  • Omen Transcend:強力なCPUのマルチスレッド性能と、mini LEDディスプレイの表現力が特徴。ホワイトボディ採用も要注目
  • Victus:AMD Ryzenモデルのコストパフォーマンスが圧倒的。IntelモデルならOmen Transcendを狙いたい

とはいえ、最上位モデル以外は似たような構成になるので、一般的なゲーマーは予算や外観の好みに応じてどれを選んでもよいでしょう。ゲームを楽しみたいだけなら、Victusモデルでも十分すぎるほど強力な性能を備えており、快適に使うことができるはずです。

ゲーミングノートPCとは思えない、驚異的に巨大なパッケージが着弾

HPのゲーミングノートPCについておさらいしたところで、OMEN Transcend 16の実機をチェックしていきましょう。編集部に届いたパッケージは16型ノートPCとは思えないほど大きく、間違って27型ゲーミングモニターが配送されてきたのかと思いました。それもそのはず、HyperXのゲーミングヘッドセットが同梱されていたためです。

  • 届いたパッケージが大きい。比較用にIntelの箱を置いています

  • がばりと大きい面が開くタイプ。ヘッドセットが入っています

  • ヘッドセットは「HyperX Cloud II Wireless」でした

  • 取り出したところ。ボディはクリーンな印象のホワイト

  • 天板も真っ白。Omen Transcend……ではなくOMENのみです

  • ディスプレイの様子。ハーフグレアくらいで、強い光源は多少映り込みそう

外観はホワイトで概ね統一されており、クリーンな印象。ハイエンドゲーミングノートPCにありがちなディスプレイ後部の排気エリアも一般的なノートPCと同様の仕様で、フットプリントも小さく済みそうです。ディスプレイはmini LED採用によってローカルディミング機能をサポートしており、バックライトを消灯した真っ黒で高いコントラスト比を実現。アスペクト比は昨今流行りの16:10ですが、下辺が妙に広くて少し野暮ったく感じました。

  • 下辺が広いロゴエリア

  • 後端は一般的なノートPCと同様で、ヒンジより後ろにボディが伸びていることはありません

  • 底面。フレームにはかなり大きな穴が開けられており、吸気エリアの最大化を実現します

  • 右側面。USB Type-A端子のみ

  • 左側面。USB Type-C形状のThunderbolt 4端子を2基装備します。ヘッドホン出力も

  • 後端の端子部。左から電源、2.5GbE LAN、HDMI、USB Type-A

  • 最大240W出力に対応するACアダプタは巨大ですが、平べったくてスリム

USB端子は必要十分。電源や有線LANのようにつなぎっぱなしになるケーブルは後端にまとめられており、邪魔になることもなさそうです。DisplayPort端子は非搭載ですが、HDMI 2.1なら4K/240Hzの出力にも対応しているので問題なし。どうしてもDisplayPortで出力したい場合は、左側面のUSB Type-C端子からDisplayPort Altモードでの映像出力も行えます。

  • キーボード全景。ゲーム中に手が触れやすい左側ではなく、パームレスト右側にシールを貼ってあるところが好感触でした

  • Enterキー周辺。英字キーボードの使いまわしではなくしっかりしたローカライズが図られています

  • 左側。WASDがクリアパーツになっていてゲーミングPC要素を醸し出しています

  • タッチパッドは広大。レスポンスも高速でした

16型の大画面ボディを生かして、テンキーを除くキーボードが広々と搭載されています。印字はHP特有のフォントで、かな入力のひらがなもあしらわれていました。日本語レイアウトであまり窮屈に感じる点はありませんでしたが、デリートキーのすぐ左隣に電源ボタンを設置する大失態を犯しているので大幅減点です。

もちろんキーボードバックライトを搭載しており、1,670万色に光ります。PC設定をすべて統括する独自ユーティリティ「HP Gaming Hub」に統合され、自分好みのイルミネーションを設定可能。デフォルトではなぜか赤と青と水色ですが、どうせならOMENっぽい鮮やかな赤~オレンジのグラデーションをアニメーションさせるようなひと工夫がぜひ欲しかったところ。WASDキーはクリアパーツなので暗い部屋でも光り輝き、ゲーマーの“ホームポジション”が一目見てわかるように配慮されています。

  • 光っている様子。なぜかデフォルトのカラー設定は赤と青で、WASDキーはオレンジ。諸説あるはずですが、筆者のセンスとは相容れません

性能をチェック! 高負荷時のエアフローがすごい

最後に性能をチェック。今回お借りした試用機の仕様はIntel Core i9-13900HX、DDR5 32GBメモリ、NVIDIA GeForce RTX 4070 Laptopを搭載しています。可能な限り性能を高めて計測するため、省電力設定をすべてオフに。「Omen Gaming Hub」からCPU内蔵グラフィックスを無効化し、強制的にディスクリートグラフィックスを用いています。

  • 仕様一覧。Intel Core HXシリーズはデスクトップ向けをノートPC向けに改修したものです

  • デスクトップでも強烈に熱いCPU。電力制限はPL1が40W、PL2が130Wに設定されています

  • dGPUは無効化可能。各メーカーが「MUXスイッチ」等の機能名で提供しています

  • Speedometer 2.1「414」

  • FF14「16094」

  • FF15「0725」

  • STREET FIGHTER 6「100/100」

  • BLUE PROTOCOL「12990」

  • 3DMark Port Royal「7453」

  • 3DMark SpeedWay「2931」

この構成で性能が低いこともなく、最新ゲームを快適なパフォーマンスでプレイできるはず。搭載しているGPUはフレーム生成機能も搭載したDLSS 3に対応しており、利用できるゲームでは更なる性能向上も期待できます。GPU性能以外も良好で、搭載しているSSDはゲーミングにふさわしい高速性能でした。ちなみにM.2スロットはひとつ空きがあり、必要な場合は適宜増設することも可能です。

  • CrystalDiskInfo

  • CrystalDiskMark

ゲーミングヘッドセット付属で即座にReady to Play環境

ここまでOMEN Transcend 16について紹介してきた本記事。発表会で聞いた印象からなんとなくミドルハイエンドな製品なのかと思いきや、最上位モデルでは強烈な高性能構成やmini LEDディスプレイ採用で驚きました。ツインフラッグシップとでもいうべき製品ラインナップとなっており、用途や予算に応じて必要なものを選択できるようになっています。

なかでも、ゲーミングヘッドセットの付属はややユニーク。マイクやヘッドセットを別途買うと手痛い出費になりますが、これさえあればとりあえず間に合います。ワイヤレスで低遅延な音声再生をサポートしており、ゲームプレイ時の違和感もありませんでした。

  • 別途用意するとなると面倒なゲーミングヘッドセットがついているのはうれしいです

今回紹介した個体はHP公式ECサイトで「スプリームモデル」として販売中。HP希望販売価格は525,800円ですが、各種割引によって418,000円に設定されています(記事制作時点)。