東芝ライフスタイルは去る11月21日に、ルームエアコン「大清快」のフラグシップモデルを7年ぶりにフルモデルチェンジした「DR」シリーズを発売しました。6畳用から26畳用まで9機種をそろえ、価格はオープン。店頭予想価格は284,000円前後~416,000円前後の見込みです。
東芝ライフスタイルが1998年から展開するルームエアコンの大清快シリーズは、「大きな省エネ」「快適空調」「清らか空気」の3つをコンセプトとしており、それぞれの頭文字を取って大清快としています。
新しくフラッグシップとなるDRシリーズは、上記の3つのコンセプトをさらに追求して再提案するモデルです。進化が顕著だと感じた、快適空調と清らか空気を達成するための機能を中心に紹介します。
業界初の「レーダー」で成し遂げる快適さ
快適性については、大きく分けて2つの進化があります。1つ目は、車の自動運転技術や気象観測にも使われている「レーダー」を、国内ルームエアコンで初めて備えた点(東芝ライフスタイル調べ)。レーダーから発射されたマイクロ波によって人の動きを検知し、風を当てる/当てないといった気流制御がより高精度にできるようになりました。レーダーの感知する範囲は約6~8mと、風が届く範囲とおおよそ一致するとのこと。
多くのエアコンが装備している「人感センサー」などによる人の検知は、面でとらえるおおよその位置検知だったのに対し、レーダーでは高精度でリアルタイムに人の動きを捕捉。レーダーによる風向調整は10,000通り(左右100段階・上下100段階)で、検知した場所に細かく対応しながら、部屋の中を人が移動した場合にも追いかけて気流をコントロールします。
移動したら風が追いかけてくる新機能
このレーダーを生かした新機能が、「レーダー風あて」と「レーダー風よけ」。レーダー風あては、エアコンからの距離が最も近い人をレーダーで追いかけながら風を当て続ける機能です。暑がりの人だけに風を当て続けたり、部屋でエクササイズしている人に風を当てたりできます。
一方のレーダー風よけは、人のいない方向を狙って風を送ります。部屋をしっかり冷やしたい/暖めたいけど、人には風を当てたくないときにありがたい機能です。部屋に複数の人がいる場合も、人がいない方向を探して風向きを自動的に調整してくれます。レーダー風あてとレーダー風よけはどちらも、リモコンのボタンで切り替えます(オフも含めて)。
実際にレーダー風よけを体験してみたところ、エアコンに正対して中心に立つと、避けるように左右両方向へ風が分かれました。エアコンの正面にいるのに風がまったく来ない不思議な感覚です。そのまま左右に移動すると、横切るときは風が当たりますが、数秒すると再び風が当たらなくなります。また、エアコンの左右の斜め前に二人で立ったところ、避けるように中央に向けて風が送られました。
1方向に「無風感」の風、もう一方には通常の風を送れるように
2つ目の進化は、エアコンの風を拡散してやわらかい風に変える独自技術「無風感空調」に、気流を制御する機能が追加されたこと。
無風感空調は、2019年モデルから搭載している独自の機能です。室内機の吹出し口に備えた「無風感ルーバー」に多数の穴を配置し、穴を気流が通り抜けたときに通常の気流とぶつかることで風を“ミストのように砕いて”やさしい風を生み出します。
冷房使用時に無風感空調を使うと、風が当たる部分が冷えすぎたり、肌が乾燥したりすることを防ぐほか、風圧が減るため書類が風で飛ばされるといったシーンもなくなります。なお、暖房運転中の無風感ルーバーは風を下方向に送る壁の役割を果たし、効率的に部屋を暖めるのに役立ちます。
新モデルでは、無風感ルーバーを縦半分で2枚に分け、左右独立の可動式にした「セパレート無風感ルーバー」へ変更。これにより暖まりやすい窓側は通常の風、人に風が当たる室内側は無風感の風にするなど、エアコンの左右で無風感の気流と通常の風を使い分けられるようになりました。「全域に通常の風」「左方向だけ無風感空調」「右方向だけ無風感空調」「全域に無風感空調」の4パターンから選べます。
実際にエアコンから1.5mほど離れ、右手に通常の風、左手に無風感の風を受けてみました。左右の風量は同じ設定なのに、風当たりがまったく違っていて驚き。右手にはしっかり冷風が当たっている感触がありますが、左手は若干ひんやりとはするものの、風圧をあまり感じないふわっとした風です。
テレワークなどでは、身体の冷えすぎを防ぐためにも無風感の風がいいですが、それでも部屋全体はしっかり冷やしたいといったときに重宝しそうです。
室内とエアコン内を清潔にキープ
清らか空気については、室内の空気とエアコン(室内機)内をキレイに保つ機能がそれぞれ強化されました。
まず室内の空気は、室内機の内部で高い空気清浄能力を持つ「プラズマ空清」で集じんした汚れに、さらにUVを照射して雑菌などの有害物質を抑制します。プラズマ空清は、細菌やカビ、花粉、PM2.5、PM0.1といった空気中の汚れを帯電させ(電気集じん式)、熱交換器に付着させて取り除く仕組み。PM2.5を90分以内に99%除去するほか、PM0.1レベルの超微粒子も90分以内に98%除去するとしています。
室内機には空清センサーを備え、部屋の空気の汚れを測定。汚れ度合いに応じてランプ色が赤(汚れている)~黄~緑(キレイ)と3段階で変化する「エアモニター」や、空気の汚れを検知すると自動で空気清浄運転を開始する「空清みはり」を新搭載しました。室内の空気が汚れているかわかったり、汚れに応じて自動でキレイにしたりできるのはうれしいポイントです。
室内機の内部を清潔に保つためには、熱交換器を洗浄・乾燥して汚れを落とす「手動クリーニング」にもUV照射を追加しました。
手動クリーニングは、結露水で洗い流す「冷房洗浄」、オゾンを発生させて洗浄するプラズマ空清、加熱乾燥させる「暖房乾燥」、送風で湿気を取り除く「送風乾燥」の4段階からなり、熱交換機を清潔に保ちます。この4段階でクリーニングしている間、UV照射による除菌も組み合わせて、室内機の内部をよりキレイに保てるようになりました。
このほか、エアコンに付属する専用アタッチメントを装着した掃除機を使って、室内機の内部からゴミを収集できる「楽ダストボックス」も従来モデルから継承しています。
高い位置に設置する室内機の清掃は、なかなか大変なイメージではないでしょうか。楽ダストボックスは掃除機の先端を室内機前面の指定場所に差し込んで吸引するだけなので、とても手軽です。清掃は1年に1回程度で大丈夫とのこと。
DRシリーズの魅力的に感じた機能は、やはり新機能のレーダー風あてとレーダー風よけ。これまで、暑い時期に帰宅したときやお風呂上りなど、冷たい風を感じながら涼みたいタイミングがありつつも、同じ室内にいる家族にも同じように冷たい風が当たるのは申し訳ないといった状況が何度もありました。
エアコンの風向きを変えて正面に立ったり、扇風機を使ったりすればいいとはいえ、そのちょっとした手間が面倒に感じることも……。レーダー風あてとレーダー風よけを使うことで、こんな場面でも細かい操作をせずに自分だけ風を受けられます。
暑がりや寒がりなど室温に対する感覚が違う人が同居する家庭や、エアコンの操作が面倒で風向制御を使わなくなったという人にとっては、快適さをすぐに実感できる機能です。