3年ぶりのリアル開催となる「CEATEC 2022」が、幕張メッセで10月18日に開幕しました。近年のCEATECでは、各社ともBtoB向けの内容が多い中、シャープはBtoC向けも注力。ここではシャープブースで気になったIoT製品やサービスの展示を紹介します。
次世代カラー電子ペーパー登場、雑誌・漫画が読みやすい端末に期待
まず目についたのが、9月に発表されたシャープディスプレイテクノロジー(SDTC)とE Ink Holdingsとの協業による、IGZOバックプレーンを採用した次世代電子ペーパーの参考出展です。
展示機は2台あり、電子書籍リーダーとしてはやや大きな8型ディスプレイを搭載。画面解像度は300ppi、動作温度は0~50度となっています。カラー表示されたコンテンツが一定時間でスッと書き換わって、いずれは各社からこの展示機のようなデバイスが登場することを予感させます。
画面はデモ用のもので、指でページ送りすることはできませんでしたが、画面切り替えの公称値は、モノクロで0.35秒、カラーは0.5~1.5秒となっています。この速さで切り替わるのであれば、雑誌やコミックなどもストレスなく閲覧できそうです。シャープではCO2排出削減にも貢献できるとしています。
具体的な製品が登場する時期や、バッテリーの持ち、重量など、いずれも未定。早く製品化されることを期待したいですね。
ディスプレイ関連では、BtoBになりますが、31.5型の「反射型IGZOディスプレイ」も目を引きました。バックライト光源を使わずに、外光の反射を利用することで、低消費電力で画面を表示します。ディスプレイの明るさが外光の明るさと連動するため、屋外視認性が高く、フルカラーで動画表示も可能。バックライトを併用することで、曇天や夜間も問題なく表示できます。
反射型IGZOディスプレイは、その特性から屋外サイネージでの使用を想定。IP56準拠の密閉構造で悪環境下でもメンテナンスフリーで動作する、ユニカの製品「タフ&エコ インフォパネル」が参考出品されていました。
また、CEATEC AWARD 2022の経済産業大臣賞を受賞した、屋内光発電デバイス「LC-LH(Liquid and Crystal Light Harvesting)」も展示していました。天井照明などの屋内光を電気に高効率変換する、色素増感太陽電池と液晶ディスプレイ技術を融合させたデバイスです。腕時計や電卓に使われる一般的な太陽光電池の約2倍の発電効率で、電源ケーブルなしで電池交換の手間がかからない小型パネルの表示に向いています。
会場ではリテール店舗の電子棚札や店舗POPを想定した展示になっていましたが、時計やカレンダー、伝言板、フォトフレームなど、家庭用製品にも利用できる技術だと感じました。
エアコン+ベッドのIoT連携で、快適な睡眠と省エネを実現
続いて気になったのが、シャープのエアコンとパラマウントの寝具「Active Sleep BED」を連携する「睡眠センサー連携AIoTエアコン制御」の展示。こちらも参考出品です。
Active Sleep BEDは、マットレスを入眠しやすい角度に調整できるベッド。腰を楽にしたり、足のむくみを抑えたり、その日の体調や身体の疲れ具合などに合わせて調整でき、自分の楽な姿勢で寝られます。ベッドには、寝そべったユーザーの状態を、呼吸・心拍・体の動きなどから計測するセンサーが備わっています。睡眠中にゆっくり角度を変化させることもでき、入眠時と深い睡眠時で自然に姿勢を変えられます。
このセンサーをエアコンと連携しようというのが、今回の展示の趣旨。眠りの状況に応じて、エアコンの温度や風量などを自動的に制御し、睡眠時の快適と省エネを両立します。ベッドと連携して、睡眠時にエアコンをオンオフする製品はすでに市場に存在しますが、オンオフだけでなく細かな動作の制御まで実現するものは初めてとのこと。
エアコンとベッドを同時に導入するケースはあまりないと思われ、現在は個別に導入した製品をスマホアプリ上で紐づけて連携するための調整を進めているとのこと。個人宅はもちろん、ホテルや病院、介護施設などでも引き合いがありそうです。
生理用品の買い忘れ防止にIoT活用、生理周期の管理にも
IoTをフェムテックに活用する「生理用品のIoT収納と月経周期の自動推定記録」も参考出品していました。女性ユーザーには気になる製品ではないでしょうか。
トイレなどに設置する生理用品用のミニボックスをクラウドとネットワーク経由で接続。収納の中には重量センサーを備え、重さやボックスの開閉タイミングで計測することで、生理用品がどのくらい残っているかを判別し、残量をスマホアプリで確認できます。また、使用頻度から月経周期も自動判定し、アプリで記録。生理用品の買い忘れ防止や生理周期の管理に役立てられるようになっています。
いまのところ、電源は電池式、ネット接続は無線LANを想定しており、製品化に向けて試験などを繰り返しているそう。なお、パーソナルな商品なので、母娘や姉妹で使う場合は人数分が必要となる見通しです。棚ごとにユーザーを切り替えられる製品もあると、より導入しやすくなるのではと感じました。
カジュアルなイヤホン型補聴器にピンク登場
最後に紹介するのは、すでに販売中の完全ワイヤレスイヤホン型補聴器「メディカルリスニングプラグ」(2021年発売)です。当初はブラックのみでしたが、女性ユーザーから多くの要望を受けたことで、2022年9月から新色ナチュラルピンクも販売を開始しています。
軽度・中等度難聴者向けで、普段聞き取りにくさを感じながらも「まだ必要ない」と考えがちな50~60代をメインターゲットにしています。
これまで補聴器は、専門の技師による調整が必要なため高額になりがちでした。シャープのメディカルリスニングプラグは、調整をユーザー本人がスマホアプリ上で行えるようにしてコストを抑制。直販価格99,800円(非課税)での提供を実現しています。また、購入前に試してみたいというユーザーのために、ドコモの「Kikito」やレンティオなどでのレンタルにも対応しています。
シャープブースでは、このほかにも非接触型バイタルセンシングや、プラズマクラスター技術、業務用洗濯乾燥機、手のひらサイズのWindows 11搭載miniPC(Dynabook製)など、ビジネス用からホーム向けまで、幅広く展示しています。いずれもIoTを活用し、複数の製品を組み合わせて用いる提案などもあり、興味深い内容になっていました。
著者 : 諸山泰三
もろやまたいぞう
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