SWITCHBOTが2023年春に発売したロボット掃除機「K10+」。一般的な製品に比べて10㎝ほど直径がコンパクトな本体サイズを実現しながら、ゴミの吸引と乾拭き機能を備えたハイブリッドなロボット掃除機として好評を得た。

それからおよそ1年を経て、アパレルブランド「JOURNAL STANDARD FURNITURE」の完全監修によるコラボレーションモデルがこのほど発売となり、ファッションに感度の高い層を中心に密かに注目を集めている。

  • SWITCHBOTのロボット掃除機「K10+」がファッション敏感層から注目されたワケ(前編)

    オリジナルモデルから約1年後に新たに発売された、SWITCHBOTの小型ロボット掃除機「K10+」の「JOURNAL STANDARD FURNITURE」とのコラボモデル

同社日本法人・国際本部日本事業部・プロダクトマネージャー/事業開発リーダーの北島祥氏によると、コラボレーションモデル投入の狙いは”ユーザー層の拡大”があるという。

「これまでロボット掃除機を使われている方というのは、新しいテクノロジーやガジェットが好きな方や関心が高いユーザーが主流です。しかし、そうした人々ではない層にいかにアプローチをしていくかというのは、プロモーションやマーケティング上の課題でした。打開策としてコラボというのが1つの方法として考えられると思うのですが、そんな時たまたまMakuakeさんのほうからジャーナルスタンダードさんを経由してクルマと掃除機とコラボレーションしたいみたいな話があって、弊社としても新たなユーザー層との接点を作るチャンスだとなりました。あとは今まで弊社の製品はデザイン面では白黒のシンプル路線でしたから、ジャーナルスタンダードさんのようなファッションに敏感な、インテリア性の高いデザインのロボット掃除機が自分の部屋にもあったらいいなというのもあって、新たなユーザー層との接点を増やす選択肢としてもよいなと」

そんな本製品は、直径248×高さ92mmと小型な本体サイズが大きな特長。同社では、2022年に第一弾のロボット掃除機として日本市場に「S1/S1+」を投入しているが、「K10+」はそれらを原型に小型化を図ったわけではなく、開発当初から小型のロボット掃除機として、一から設計が行われたという。

  • 2023年春発売の「K10+」。日本のユーザーからの要望に応えて登場した製品で、一般的なロボット掃除機よりも直径が10㎝程度コンパクトであることが特長だ

  • 2022年発売の「S1/S1+」。SWITCHBOTが日本のロボット掃除機市場に初めて投入した、スタンダードなタイプのモデル

「今年5月に『S10』という新しいラインナップを発売したことでわかりやすくなったと思いますが、弊社ではもともと標準モデルの”S”のラインと、小型モデルの”K”のラインとして、最初から企画されていました。小型のロボット掃除機は、日本市場にも以前から存在はしていましたが、性能面での評判はあまりよくなかったというのが正直なところです。とはいえ、小型のロボット掃除機に対する潜在的なニーズは確実にあることから、掘り起こしを行い、なぜ小型がいいのか、どれくらいのサイズが最適なのかといった市場調査を行ったのが最初の発端でした。また、Sのラインは主要メーカーが出しているロボット掃除機のスタンダードサイズで、Kのラインは日本市場向けに事前調査した後、ニーズに特化したモデル。日本のユーザーが一番使いやすいと思うものを出すというのがK10のスタートで、企画自体は既に進んでいましたが、Sが終わった時点ですぐに開発に着手しました」

  • 「K10+」は、直径248×高さ92mm、重量2.3kgの本体サイズながら、吸引に加えて床拭き機能も備えた二刀流の製品

北島氏によると、ロボット掃除機の小型化を図るにあたって、特に検討を要したのは、”ブラシ”と”タイヤ”。いずれもロボット掃除機の本質性能に関わる重要な部品でもある。開発時における苦労や工夫したエピソードとして次のように語った。

「例えばサイドブラシは短くなると届きにくくなったりとか、メインブラシも小さくなると、巻き取りとか吸い込みができなくなるので、小さくすべきところと小さくすべきではないところを精査したり、どこまで小さくすべきなのかを1つ1つ検討する必要がありました。その結果、本体サイズは小さくなるけれども、サイドブラシとメインブラシの大きさは保たなければならないことを確認し、サイドブラシはS1+と同じような長いブラシを採用しているのですが、形状を変えて、一般的な3本のブラシに加えて、小さなブラシを組み合わせることでゴミを掻き取りやすくしました」

“タイヤの配置”も苦戦した部分だという。「標準のロボット掃除機と同じ配置というわけにはいきませんでした。タイヤの配置を変えると、段差を乗り越える時だったり、運行する時のバランスと安定性を計算しなければならず、本当にゼロからの試行錯誤でした」

一方、小型化を試みるにあたり、「性能的な部分で省略した点はない」と北島氏。

「今までのロボット掃除機が必要としている性能面では何も省略していないこともユーザーから評価いただいているポイントだと思います。物理的な部分で言うと、例えばダストボックスが小さくなっていたりとか、水タンクを装備できないために水拭きを実現できないことから、フローリングワイパーのシートを使った乾拭き機能を搭載するという代替案を用意しました」

  • 「K10+」(上)と「S1/S1+」(下)の底面の違い。通常よりも小さな本体に清掃に必要な性能を維持するために、もっとも工夫されたのはサイドブラシやタイヤの配置だ

小型で小回りの利くK10+は、対象物の際までリーチできることから、ゴミを集める能力そのものは高いのが強みだ。しかし、「標準モデルに比べてダストボックスが小さくなってしまうというジレンマがあります。そこで、S1/S1+の場合は、ゴミ自動収集ステーション付きのタイプとないタイプを2種類用意して消費者が選べるようにしているのですが、ゴミをたくさん集められるのにボックスが小さいK10+では標準でゴミ収集ステーションが付属する1タイプだけにしようとなりました。一部の機能の解決策を別の形で用意しているのがK10+という製品です」

日本の消費者のニーズに応えるかたちで市場投入した、SWITCHBOTのロボット掃除機「K10+」。清掃能力を落とすことなく、本体サイズの小型化を図ろうとするその意欲と工夫に驚かされた。次回、後編では本体以外の開発裏話や、コラボモデルにおけるこだわりについて語ってもらう。

  • SWITCHBOT 日本法人・国際本部日本事業部・プロダクトマネージャー/事業開発リーダーの北島祥氏

(後編に続く)