ゴールデンウィークといえば「ニコニコ超会議」。動画配信プラットフォームとしては若干下火なのでは……と思わせておいて、“ちょうどいい温度感”での持続的な成長を続けるサービスが継続的に実施している大規模オフラインイベント。筆者がこのイベントを一言で説明するとすれば、他のイベントに類を見ない「混沌としたごった煮」感が特徴です。
主催のドワンゴの親会社であるKADOKAWAも同イベントにブース出展しており、縁あってマイナビニュースは今年で3年連続の取材を実施しました。「サステナブルな未来の書店」を掲げるブースは穏やかに軟着陸を遂げ、規模を拡大しつつイベントでの体験型書店として完成度を高めてきた印象です。
超ダ・ヴィンチストアとは
例によって「超ダ・ヴィンチストア」について振り返っておくと、KADOKAWAが所在するところざわサクラタウンにあるリアル書店「ダ・ヴィンチストア」を再現したもの。DX(デジタルトランスフォーメーション)を活用し、KADOKAWAがイメージするサステナブルな未来の書店を表現した、と特設ページで紹介されています。
KADOKAWAの出展ブースとしては「超ダ・ヴィンチストア」に加えて、今年は「KADOKAWA CRAFT CAFE」「Re:ゼロから始める異世界生活 バーチャルフォトスポット」「【推しの子】 ARフォトスポット」が新設されています。ブース面積もかなり大きくなっており、IP(いわゆる版権モノ)に内容を寄せつつ勢力を増した形です。
やはり今年も「書籍のAIリコメンド」体験が行えました。筆者含め、本好きは放っておいても勝手に本を買って読み続けていくものですが、そうでない人間にどう本をオススメしていくかは大きな課題。
そこで今年は昨今流行りのAIを活用し、まさにAIが得意とする領域であるレコメンデーションをやってみようという展示です。ちなみに一昨年はアキネーターのようなもの、去年は読書インフルエンサー氏による遠隔人力オススメだったので、何気にかなり洗練されていると言えるでしょう(「AI書店員ダ・ヴィンチさん」自体は去年もありました)。
ブース外周に設置されている「❤AI高校生ナツノ~一緒にアニメ見よ?~」も体験できたところで、ブース内部のリアル書店を見て回りました。一昨年はVRゴーグルを装着して仮想の本屋を体験する展示、去年は紀伊国屋書店とコラボした展示でしたが、今年は書店へと立ち返ってブース面積を拡大し、品揃えが大幅に強化されている点がポイント。“アニメ化作品”というメディアミックスを切り口として用いたことで書店・出版社の縛りを上手くズラし、他社刊行物の取り扱いにも成功しています。
出版社が独自に考える“書店のDX”という難題に対して全力で回答を考えた結果、だいぶ粗削りな展示が見られたこともありましたが、今年度分の展示ではだいぶ穏やかなものに軟着陸してきたなという印象です。
大きなブース面積で売り場を広く確保して本の現地購入の楽しみを高めつつ、ECサイトを組み合わせて現地にない本へのアプローチ強化を行ったり、イベント出展の書店でしか見られない珍しい本を見られた点も好印象。KADOKAWA以外の書籍も取り扱われ、閉塞感もありません。
出版社というより、今年度の展示は「書店がイベントにブース出展するなら」という発想に立ち返って行われたような印象です。出版社目線での頭でっかちな思考実験ではなく、エンドユーザーである読者がもっとも楽しめるように展示の設計・工夫が凝らされていたと感じました。
カフェは別エリアに独立して拡大路線、体験型ブースは撮影が鍵
最後に「KADOKAWA CRAFT CAFE」と、お隣の写真撮影ブースも見てきました。カフェはこれまで狭いブースの一角にさらに狭く併設されていましたが、今回なんと専用ブースを得て一大エリアに。休憩スペースも備えて混雑に配慮されており、これまで見てきた筆者的には「これってそんなに本気でやってるカフェだったんだ」と驚きました。
その他の体験型ブースとして「Re:ゼロから始める異世界生活 バーチャルフォトスポット」「【推しの子】 ARフォトスポット」も楽しめます。リゼロの方ではレム、ラム、エミリアと一緒に撮影が行え、【推しの子】の方ではAR技術で画面に登場したキャラクターとツーショットを撮影可能。わざわざ専用アプリを導入しなくても特設サイトに合成用の撮影機能が用意されており、簡便なのもよかったです。
参加者爆増、ニコニコ超会議が下火だなんてとても言えない2024年
ここまでKADOKAWAブースを見てきた本記事。ニコニコ超会議2024年に関して1つ紹介することがあるとすれば、今年の混雑は筆者が参加するようになって以来の、ここ2年をはるかに上回るとんでもない人出でした。強烈に混んでおり、冒頭で使用した「下火」という表現は完全に不適切なレベル。
スマートフォンゲーム『勝利の女神:NIKKE』がHALL 7に大規模なブースを出展していたこともあって見に行きましたが、コンテンツの人気もあって列最後尾がどこにあるかもわからないほど“指揮官”が並んでいて驚きました。感染症拡大下にあったここ数年から、いよいよ本当に脱却したんだなと感じる出来事でした。