3月28日に販売が始まった富士フイルムのレンズ一体型カメラ「FUJIFILM X100VI」(以下、X100VI)ですが、発表直後から人気が過熱していて予約すら難しい状況が続いています。そのX100VIについて、歴代シリーズを愛用してきた大浦タケシさんはどう感じているのか、率直なインプレッションをまとめてもらいました。
待望の4000万画素化を果たしたX100VI
富士フイルムの「X100VI」が登場した。実売価格は、海外では1,599ドル(約24万円)だが、日本ではなぜかそれよりも高い約28万円が設定された。それでも、発表直後から圧倒的な人気で発売早々に品切れが続いている。
述べるまでもなく、本モデルは2020年2月発売の「X100V」の後継である。以前から、X100Vの後継モデルは「スタイルはキープコンセプト」「X-T5と同じ4000万画素のイメージセンサーを積んでくる」と予想していたが、その通りとなった。このイメージセンサーは、APS-Cサイズでありながら階調再現性や高感度特性はフルサイズに匹敵する写りが得られ、X100シリーズに積まない理由はないと思っていたからである。
初代X100からのコンセプトであるスナップシューターであることは当然だが、高画素であることを活かし、じっくりと被写体と対峙するカメラとしても仕上がったと考えてよい。もちろん、X-T5と同様にストレージ食いとなるのは確実だが。
フォーカスモード切り替えレバーを継承したのは評価できる
光学系やファインダー、液晶モニターなどはX100Vを踏襲する、というのも自分の予想通りだった。つまらないと言えばつまらないのだが、これまでもカメラの性格を考えれば不足は感じなかっただけに当然だろう。
もちろん、ファインダーはこれまでと同様にEVFとOVFのハイブリッドタイプで、アングルを正確に決めたい時やフィルムシミュレーションの仕上がりをリアルタイムで知りたい時はEVFに、シャッターチャンスのタイムラグを少しでもなくしたい時はOVF、といった使い分けが楽しめる。このフィンダーは、X100シリーズのアイデンティティのひとつといえる。
個人的に、フォーカスモード切り替えレバーを廃止しなかったことは、諸手を挙げて歓迎したい部分だ。スナップ撮影では、動く被写体と出会うことも少なくない。そのようなときにAF-S(シングルAF) とAF-C(コンティニュアスAF)が素早く切り替えられるレバー/スイッチの存在は何よりもありがたい。
以前使用していた「X-E3」にはフォーカスモード切り替えレバーが備わり重宝していたが、その後買い替えた「X-E4」ではレバーは廃止され、メニューでの切り替えとなって不便を感じた。それゆえ、たとえ23mmの広角レンズを搭載するカメラだとしても嬉しく思えるところである(ちょっとレバーの動きは硬いけれど)。そのほかの操作系についても、X100Vとの違いは基本的になく、唯一DISP/BACKボタンにBluetoothのマークが新たに備わっていることを確認した程度だ。
実際にX100VIで試し撮りして気付かされたのが、AFがより高速になったこと。X100VでもAFは十分に速かったが、まれにもたつくことがあったので、この進化はありがたい。AFアルゴリズムの最適化によるものとのことだが、迷いなくピントが素早く合うのはとても頼もしく感じられる。スナップシューターとして、まさに面目躍如といったところである。
そして、個人的に予想だにしなかったのが、センサーシフト方式の手ブレ補正機構の搭載である。スペックを読むと5軸対応、補正効果6段とのことで、高画素のイメージセンサーとともに鬼に金棒といったところである。手ブレ補正機構の搭載で、ボディの厚みがそれまでから2mm増して55.3mmになったとしているが、視覚的にも感触的にも旧モデルとの違いはそれほど感じなかったことはお伝えしておきたい。
X100F以前のユーザーは大きな進化を体感できる
個人的なX100VIの所感としては以上のようなところである。もともと完成度の高かった先代モデルをベースに、より高画素のイメージセンサーと手ブレ補正機能の搭載などでブラッシュアップを図り、よりスキのないカメラに仕上がっている。
ただし、ちょっとなぁと思えたのが、冒頭でも述べた販売価格。X100VIに限った話ではないが、同社はこのところ新しい製品を出すたびに旧モデルを大きく上回る価格になったり、突然のレンズの値上げを行ってきている。これまで高性能なのにリーズナブルであった同社の製品も、その魅力を失いつつある。企業なので利益を得ることは当然であるが、もう少しユーザーに対してフレンドリーであってもよいのでは、と思えるほどの価格上昇は勘弁していただきたい。
最後に、大浦はX100VIを買うのかと問われれば、現状ではちょっとビミョー。より高画素となって手ブレ補正も入ったX100VIだが、個人的にはX100Vでもまったく不足を感じていないからである。スタイルにしても、エッジの効いたボディシェイプは同じであり、こちらに関しても現状不満はない。むしろ、この4年間で外装に付いたキズやスレに愛着を感じている。したがって、買い替えは、この次の“X100VII”が出たときに検討しようと思っている。
むしろ、X100VIは私のようなX100Vユーザーよりも、その前のX100F以前のユーザーに訴求するカメラと述べてよい。それらのモデルを愛用するユーザーは、私以上に進化をより強く感じるはずだし、購買意欲も湧くはずだ。X100VI自体、そのような位置付けのカメラのように思える。
著者 : 大浦タケシ
おおうらたけし
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