録画機能内蔵テレビ用のストレージは外付けハードディスク(HDD)を使うのが一般的ですが、USBケーブルや電源ケーブルの接続でテレビの後ろがゴチャゴチャするのが悩ましいところ。大きく重いHDD自体の置き場にも困ります。

そこで注目され始めているのが「スティック型SSD」をHDDの代わりに録画用に使うこと。USBメモリーのようにUSB端子に差し込むだけで使え、背面が驚くほどスッキリします。メーカー非公認ながら、高価な録画対応SSDではなく安いパソコン用SSDでも問題なく録画でき、全録もOKでした。スティック型SSDは大容量化と低価格化が急速に進んでおり、録画用途でもHDDは世代交代が近づきつつあるようです。

  • テレビ録画用のストレージ、ハードディスクからスティック型SSDへの置き換えが今後急速に進みそうだ

HDDのわずらわしさを一気に解消するスティック型SSD

録画機能を内蔵したテレビやBDレコーダーの多くは、USB端子に市販の外付けHDDを接続すれば録画できるようになります。HDDは小型軽量の2.5インチHDDも使えますが、多くの人が使っているのは大容量に対応した3.5インチHDDだと思います。

この3.5インチHDD、USBケーブルだけでなく電源ケーブルも接続する必要があります。電源は大きく重いACアダプター式の製品がほとんどで、ただでさえ多くの機器を接続する電源タップの周辺がゴチャゴチャすることに。そもそもHDD自体が場所を取り、置き場に困ります。

  • 録画用HDDはUSBケーブルだけでなくACアダプターも接続する必要があるのが面倒。スティック型SSDにすれば、これだけの機器やケーブルがスリムなスティックの接続だけで済むようになる

  • 家庭用ゲーム機やレコーダー、Wi-Fiルーターなど、さまざまな機器が存在するテレビまわり。電源タップがひどい状況になりがち

そこで注目され始めているのがスティック型SSD。見た目はおなじみのUSBメモリーとほとんど同じですが、一般的なUSBメモリーよりも大容量かつ高速読み書きに対応しているのが違いです。これをHDDの代わりにテレビ録画用に使えば、テレビの周辺が一気にスッキリする…というわけです。

周辺機器メーカーのアイ・オー・データ機器は、パソコン用のスタンダードモデル「SSPS-USシリーズ」と、テレビ録画用とうたう高性能モデル「SSPM-USシリーズ」をラインナップしています。同じ容量で比べると、テレビ録画用のSSPM-USシリーズの方が1~2割ほど高い価格設定になっています。

  • スティック型SSDのスタンダードモデル「SSPS-USシリーズ」(左)とテレビ録画対応モデル「SSPM-USシリーズ」(右)

テレビ録画用のSSPM-USシリーズは、主要なテレビやレコーダーのメーカーと連携し、実製品を用いた検証を実施しているのがポイント。検証済み製品の一覧も公開しており、「この製品ならば安心して使えます」ということをアピールしています。メモリーチップなどの部品も、信頼性の高いものを使っている可能性があります。一方のパソコン用のSSPS-USシリーズは、そのような検証は一切実施していないのが違いです。

  • シンプルなデザインのSSPS-USシリーズ。USBコネクターは内部に格納できる

  • 高級感のあるSSPM-USシリーズ。こちらもUSBコネクターは格納できる

  • パッケージを見ると、SSPM-USシリーズは「テレビ対応」としっかり記載している

絶え間なくデータを書き込む全録でも問題なし

「安いパソコン用スティック型SSDをテレビ録画用に使っても問題ない?」というのが気になったので、すべての放送を同時録画する“全録機能”を搭載するREGZAに接続して試してみました。

ふだんは3.5インチの外付けHDDを接続しているのですが、やはりケーブル類とHDD本体がじゃまに感じていました。しかし、スティック型SSDに置き換えたところ、USBケーブルと電源ケーブルは不要になり、大きなHDD本体もなくなったため、驚くほどスッキリ。ある程度予想していたこととはいえ、かなりのインパクトがありました。

  • HDDは本体やケーブルがじゃまになる。テレビ録画用HDDは縦置きに対応していないものもあり、とにかく場所を取る

  • スティック型SSDにすれば、接続すべきものはこれだけ。猫がケーブルをかじったりする心配もなくなる

設定画面でも問題なくSSDを認識してくれました。今回使用したのは1TBモデルだったので、夜間(19~24時)の6チャンネル分の全録だと約4日分の録画が可能と出ました。全録用途だと少なくとも1週間分は残したいので、容量的には倍の2TBは欲しいと感じました。

  • テレビ側でも問題なく認識した。接続したのがSSDでも「ハードディスクが接続されています」と出るのは仕方がない

  • 夜の番組を6チャンネル分すべて録画する設定にすると、1TBモデルでは約4日間の録画ができると表示された

今回はテストとして、すべての時間帯を録画する設定にしてひと晩使ってみました。常に大量のデータを読み書きする状況でしたが、すべてのチャンネルの番組が問題なく記録されていました。SSD本体もほんのり熱くなる程度で、連続の駆動も問題なさそうです。

  • 翌日にチェックしたところ、6チャンネル分の番組がバッチリ録画されていた。再生も問題なかった

PC用のSSDでも録画用に使えた

HDDからSSDに替えて便利だと感じたのが、テレビをつけてすぐに録画番組が見られるようになったこと。HDDでは、回転を始めてデータが安定して読み込めるようになるまで時間がかかるようで、テレビをつけてしばらくは「ハードディスクが認識できません」といった表示が出て待たされることがありました。そのストレスがなくなっただけでも好ましいと感じました。HDDにつきもののアクセス音は一切なく、寝室でも問題なく使えます。消費電力や発熱も大幅に減るので、電気代や環境にとってもメリットがあります。特に、これまでHDDの接続が難しかった壁掛けテレビにも録画用ストレージが接続できる点も見逃せません。

試用した限りでは、録画対応モデルではなく通常モデルをテレビ録画に用いても基本的に問題ないと感じました。ただ、全録など常に大量のデータの読み書きが発生する用途では信頼性の高さが求められるので、絶対に失敗したくない録画をしたい人は録画対応モデルの方がベターでしょう。ひとまず通常モデルを購入して使い、自分の環境で録画の失敗や再生の異常が見られるようだったら録画対応モデルに切り替えるのもアリだと思います。

容量を重視する人は、8TBなどの大容量モデルがあるHDDが引き続き活躍することになりますが、1クール分のドラマを録画して見たら消す、という用途や、1週間分程度の全録用途ならば、スティック型SSDを選ぶ価値が出てきました。1TBでは容量的に少し心許ないので、2TBあれば通常録画も全録も実用的に使えるでしょう。

  • 自宅にあるREGZAは全録用ストレージが2台接続できるので、1TBのSSDを2台つなげば2TBの容量が確保でき、8日程度の全録ができるようになった

現在、Amazonブラックフライデーでアイ・オー・データ機器のスティック型SSDがセールになっており、スタンダードモデルの1TB版「SSPS-US1GRE」が6,980円、2TB版「SSPS-US2GRE」が12,580円、録画対応モデルの1TB版「SSPM-US1K/E」が8,880円、2TB版「SSPM-US2K/E」が15,980円と安くなっているので、HDDをなくしたい…と感じている人は試してみる価値があります。