Googleのスマートウォッチ「Pixel Watch 2」が登場しました。デザイン的には従来モデルを踏襲しつつ、機能面でバージョンアップを果たしています。そんなPixel Watchシリーズの特徴の1つとしてあげられるのが決済機能です。

Apple Watchとは異なり、Android系のWear OS搭載スマートウォッチでは決済機能の対応が遅れました。しかし、初代Pixel WatchでGoogleの決済サービス「Googleウォレット」が利用できるようになり、Suicaやクレジットカードのタッチ決済に対応しました。

今回、メーカーから借用したPixel Watch 2を使って決済機能をチェックしたいと思います。

  • Pixel Watch 2を使って、Suicaやクレジットカードから支払えます

Suicaやクレカが使えるPixel Watch 2

Pixel Watch 2が対応する決済機能は、Androidスマートフォンでも利用できるGoogleウォレットのWear OS版となります。スマートフォン版Googleウォレットの全機能が搭載されているわけではありませんが、登録したクレジットカードなどを使って店頭でのタッチ決済での支払いが可能です。

  • スマートフォンのGoogleウォレット。クレジットカードやSuicaなどを登録してスマートフォンでの支払いが可能です

Googleウォレットは、以前Google Payと呼ばれていたGoogleの決済サービスです。Apple Payのようにクレジットカードを登録すると、クレジットカードの物理カードをタッチして決済するのと同様に、スマートフォンでタッチ決済での支払いが可能になります。

その決済機能をWear OS搭載スマートウォッチでも利用可能にしたのが、初代のPixel Watchでした。SamsungのGalaxy Watchなども対応していますが、Pixel Watch 2も、当然このGoogleウォレットをサポートしています。

基本的にはGoogleアカウントに保存したクレジットカードなどの情報を、スマートフォンでも利用可能にしたのがスマートフォン版のGoogleウォレットです。同じGoogleアカウントを登録したPixel Watch 2であれば、アカウントに保存されたクレジットカード情報をそのまま登録できます。スマートフォンとは異なるカードを登録することも可能です。

  • Googleアカウントに保管したクレジットカード情報は、オンラインでの支払いでも使用できます。これをスマートフォンやPixel Watch 2に追加することもできますし、手動でカード情報を入力して登録することもできます

実際の登録方法は? ロック設定が必須{#ID2}

利用するには、Pixel Watch 2にクレジットカードやSuicaを登録する必要があります。

まず、事前準備としてPixel Watch 2で画面ロックを設定します。これによって利用者がカード所有者本人であるという認証にもなるので、設定は必須です。ちなみに、この認証があるので、Pixel Watch 2での決済には物理カードのタッチ決済における上限金額(日本だと1万5,000円)がありません。高額な買い物もタッチでできます。

腕に装着してロック解除したあと、装着している間はロック解除状態になります。個人的には今後、指紋や裏面のセンサーを使った生体認証でロック解除してくれればいいとは思います。

  • Pixel Watch 2に画面ロックを設定。パターンやPINのどちらでも構いませんが、これが必須です

画面ロックを設定したら、続いてPixel Watch 2でGoogleウォレットを起動します。Googleウォレットを起動するには3種類の方法があり、1つ目はリューズを押してアプリ一覧を表示し、スワイプやリューズの回転でウォレットアイコンを探す方法。

もう1つが画面を上から下にスワイプしてメニューを表示し、ウォレットアイコンをタッチする方法。3つ目がリューズのダブルクリックです。

  • 側面のリューズ。Pixel Watchよりも少し大きくなっています

  • アプリ一覧からGoogleウォレットを探してタッチします

  • 上から下にスワイプして表示されるメニューからウォレットを選ぶ方法。中央右側のアイコンがウォレットです

いずれかの方法でウォレットアプリを起動したら、「+」ボタンをタッチします。するとスマートフォンでの設定に移動するので、Pixel Watch 2と接続したスマートフォンの画面を確認します。

  • 下にスワイプすると+アイコンが表示されます。ちなみにGoogleウォレットはPixel Watch 2の画面キャプチャー機能(リューズとサイドボタンの同時押し)ではキャプチャーできませんでした

現在登録されているカード一覧が表示されるので、「+スマートウォッチに追加」をタッチします。「支払いカード」と「Suica」の登録が可能になるので、登録したい方を選択します。「支払いカード」はクレジットカードのタッチ決済、iD、QUICPayの登録が可能です。

  • すでにクレジットカードとiDを登録した状態。下にある「+スマートウォッチに追加」を選択

  • クレジットカードやSuicaを登録できます

Suicaはスマホからの移行がおすすめ

Suicaを登録する場合は、既存のGoogleアカウントに保管されているSuica残高を移行させることもできます。スマートフォンとスマートウォッチの双方でSuicaを使う場合は、「新しいカードを作成する」を選びます。

  • Suicaを選ぶと利用規約に同意する画面

  • 同じGoogleアカウントにSuicaの残高が保管されていればそれが表示されます

  • 新規作成を選ぶとGoogleウォレットに登録したカードからチャージ額を選び、新しくSuicaを作成します

ここで既存のSuicaの残高を移行すると、「スマホで使っていた設定がそのまま移行する」というのポイントです。実はスマホでビューカードを使って「オートチャージ」の設定をしておき、そのSuicaを機種変更でGoogleアカウント上に保管すると、オートチャージの設定も保管されるのです。

Pixel Watch 2でSuicaの残高を移行すれば、オートチャージの設定もそのまま移行されるので、残高が一定額以下になった状態でJR東日本の改札を通過すると自動チャージするようになります。Pixel Watch 2上でオートチャージの設定はできないので、あらかじめ設定しておくと便利です。

  • 既存残高の移行、新規作成のいずれでもSuicaが登録できます

ただし、同じビューカードは複数のSuicaのオートチャージに設定できません。スマホとPixel Watch 2の双方で、1枚のビューカードを使ったオートチャージの設定はできないので、よく使う方をオートチャージ設定しておくといいでしょう。

ちなみに、Pixel Watch 2でSuicaを削除すると、自動的に登録したGoogleアカウントに残高が保管されます。他のスマホに同じGoogleアカウントを設定すれば残高を読み出せるので、機種変更は簡単です。

クレカのタッチ決済はまだ“弱点”

「支払いカード」を選ぶと、クレジットカードやデビットカードも登録できます。Googleアカウントの登録カード一覧から選ぶか、任意のカードを新規登録しますが、「クレジットカードのタッチ決済」「iD」「QUICPay」のいずれかに対応するカードしか登録できません。実はGoogleウォレットはここが弱いのです。

まず、「クレジットカードのタッチ決済」として登録できるカードが多くありません。銀行が発行するデビットカード以外だと、Revolutやエポスカードぐらいでしょうか。三井住友カードのように、「自社アプリからiDとクレジットカードのタッチ決済を設定できる」というようなカード会社の場合、スマートフォンではタッチ決済が設定できても、Pixel Watch 2ではタッチ決済としては登録できないのです。

三井住友カードは、「コンビニなどの一部店舗でタッチ決済だと還元率アップ」という施策を実施していますが、Pixel Watch 2にはiDでしか登録できないため、還元率アップの対象にならないので注意が必要です。

いずれにしてもクレジットカードを登録しようとすると、タッチ決済対応カードならタッチ決済で、iD、QUICPay対応ならそれぞれの仕組みで、自動的に登録がされます。登録自体の作業はスマホのGoogleウォレット登録と大差はありません。

手持ちのカードでは、例えば三井住友カードはiD、楽天カード(JCB)はQUICPay、Revolutはタッチ決済として登録できました。

  • Pixel Watch 2に登録したカード情報はスマートフォンの「Watch」アプリでも確認できます

  • Suicaが使えます

  • クレジットカードのタッチ決済としてはRevolutや銀行のデビットカードが登録できます

  • 日本のクレジットカードだとiDに登録できる例は多いでしょう

  • もちろんQUICPayも使えます

2023年7月、Wear OSのアップデートでiDとQUICPayをサポートしたため、Googleウォレットに登録できるカードが増えたことは良かった点です。楽天Edy、nanaco、WAON、PASMOといった電子マネーが非対応な点、タッチ決済対応カードの登録が少ない点が難点でしょう。

決済では文字盤を読み取り機にタッチ

実際の決済を利用する際には、ウォッチフェイス側をリーダーにタッチすることで支払いができます。私の場合は時計を左腕に装着するので、一般的に右側に配置されている鉄道改札へのタッチは苦しいのですが、ダッシュで走り抜けるわけでもないので、そう問題はないでしょう。これはApple Watchなど、ほかのスマートウォッチも同様です。

  • 左手で右側の改札にタッチするので、少し苦しい体勢になります。リーダーに近づける際にぶつけてしまいそうで、少しためらってしまって通過スピードが遅くなるのは難点でしょうか

クレジットカードのタッチ決済を使う場合は、リューズのダブルクリックなどでウォレットを起動し、クレジットカードを表示する必要があります。基本的には事前にスマートウォッチ側で「デフォルトに設定」をしたカードが読み込まれます。

  • クレジットカードはデフォルト設定にしたカードが読み込まれます。デフォルト化していないカードでも、画面表示を使いたいカードにすれば、そのカードが使われます

カード一覧でスワイプしてカードを表示すれば、デフォルト設定ではないカードでの支払いもできるので使い分けも可能です。iD、QUICPayの場合は、カードを表示するのではなく、詳細画面から有効にしたカードのみが利用できます。

店頭での支払いの場合、店員に「クレジットカードで支払う」と告げると、一般的にはリーダーが3面待ち(磁気ストライプ、接触IC、非接触ICの3種類の支払いを同時に待ち受ける状態)になるので、(解除されていなければロック解除をして)ダブルクリックでウォレットを起動し、リーダーにタッチすれば決済が行われます。

iDやQUICPay、Suicaの場合は、FeliCaの仕様上ウォレットを表示する必要もなく、店員に使いたい方式を伝えてタッチすれば決済が行われます(ロック解除はしておく)。

自販機などでも、例えばSuica対応であれば、画面ロック解除してあれば画面はオフの状態でもタッチで決済できます。

Suicaの場合は、プリペイドカードなので事前にチャージが必要になります。前述のオートチャージの設定をしていない場合、Pixel Watch 2側でチャージ設定はできないので、スマホアプリを利用します。

  • スマホのWatchアプリからSuicaを選ぶとチャージが可能です。Googleウォレットに登録したカードからチャージができます

Apple Watchの場合、クレジットカードやSuicaなどもGoogleウォレット以上に追加できるほか、クルマのキーや搭乗券など、Appe Payで利用できる各種パスの登録も可能になっています。

それに比べてPixel Watch 2のGoogleウォレットは機能としては劣りますが、クレジットカードやSuicaで支払いができること自体は便利です。スマホを持ち歩いたり取り出したりしなくても素早く支払いができるというのが、スマートウォッチの決済機能のメリットです。

個人的には、特に欧州のようにクレジットカードのタッチ決済が普及した国に行くときに設定しておくと極めて便利です。財布やスマホを取り出さないので、スリに対する安全対策としても有効です。最近は、海外でも改札にクレジットカードをタッチして乗車できる例が増えており、当然Pixel Watch 2でもクレジットカードのタッチ決済を使って電車に乗れます。

  • 海外でスマートウォッチを使って決済をしているところ。これは韓国でPixel Watchを使っています

  • こちらはパリのマクドナルドで支払いをしているところ。パリといえばやたらとスリが蔓延しているので、スマートフォンも財布も取り出さないスマートウォッチは安心感があります

Pixel Watchに比べて、Pixel Watch 2で決済機能が進化したわけではありませんが、時計で決済ができると、毎日の生活がさらに便利になります。Androidスマホユーザーにとっては、決済もできるスマートウォッチの候補の1つとして、Pixel Watch 2が選択肢に入るでしょう。