健康の大切さを噛み締めることが増えた今日。健康意識が日に日に高まりを見せる中、家電メーカーのシャープではヘルスケア関連事業を重点強化分野に位置付け、開発に注力しています。
水なし自動調理鍋「ヘルシオ ホットクック」も、そのひとつ。一台あれば、定番の食卓メニューはもちろん、離乳食からおかゆまで作れるとあって、赤ちゃんからお年寄りまで“すべての人にやさしい”調理家電として幅広い年代から支持を集めています。
今回は、ホットクックが秘める持続可能性に迫ります。
赤ちゃんからお年寄りまで。“すべての人にやさしい”ホットクックの特徴と開発秘話
取材を受けてくださったのは、調理ソリューション企画開発部に所属する栗原範子さんと東幸靖さんです。
栗原さんは、ホットクックやウォーターオーブン「ヘルシオ」などの調理家電の調理性能評価と、メニュー開発・管理に従事。これまで手がけたメニューは、ホットクック用だけで300種類にも上ります。
「学生時代から料理とモノづくりが好きだった」と話す東さんは、2008年に入社すると、希望が叶って調理家電を開発する部署に配属。以来、ホットクックをはじめ、ヘルシオやスロージューサー、お茶プレッソなどの機構設計を担当してきました。
この日は、ホットクックで肉じゃがを作っていただけることに。取材前にセッティングをしてもらいました。作る工程は実に簡単。「まぜ技ユニット」をホットクック本体に取り付け、野菜と肉を内鍋に入れて最後に調味料を注ぎ込めば、あとは内鍋を本体にセットするだけ。スマホからレシピを送信(※)し、スタートボタンを押すと調理が始まりました。たったこれだけで、35分後には肉じゃがが完成します。まるで“魔法のような調理鍋”です。
※ホットクックの操作のみでの調理開始も可能です。
そんなホットクックには「無水調理」「自動調理」「予約調理」の3つの特徴があります。肉じゃがが出来上がるまでの間、お話を伺うことにしました。
シャープが世に出す調理家電では「健康」をコンセプトに掲げていますので、ホットクックを開発する際も「健康的な調理を提案できる商品にしたい」との想いが根幹にありました。そこで目を付けたのが「無水調理」です。 食材本来の水分のみで調理することで栄養素の流出を可能な限り防ぎ、健康的な調理を実現しています。 |
この無水調理を支えるのが、内蓋に搭載されているドリップ加工です。水分が上から滴り落ちて内鍋の中をうまく循環するように設計されています。
そして、付け外しができる「まぜ技ユニット」による「かき混ぜ機能」や、温度をコントロールするヒーター制御によって、ほったらかしの「自動調理」が可能です。 底の焦げ付きや調味料のムラの心配がなく、全体的に火が通って味が馴染み、おいしく仕上がります。 |
3つ目の特徴である「予約調理」は、特に共働き世帯に喜ばれているそうです。
例えば、朝出かける前にセットしておけば、帰宅時間に晩ごはんが出来上がっています。 私も子どもがいるのですが、仕事が終わって保育園に迎えに行き、帰ってから晩ご飯を作るのは本当に大変で……。働く人たちの役に立つのではないかと考え、力を入れて開発しました。私も、ホットクックの「予約調理」にはすごく助けてもらっています。手前味噌ですが(笑) |
この「予約調理」や「健康的」「火を使わず安全」といったところが評価され、ホットクックは様々な賞を受賞。中には子育て関連の受賞もあり、子育て支援に貢献しているのです。
しかし、ホットクックが発売して間もない頃は、むしろシニア層に受け入れられたのだとか。それには開発のきっかけが関わっています。
ホットクックの開発がスタートした時期、ちょうど「和食」がユネスコの無形文化遺産に登録され、和食を大事にしていこうというブームが起きていました。 けれど、マーケティングをしてみると、若い方々を中心に「和食は身体に良さそうだけど、作るのが面倒」「時間がかかる」「そもそも作り方を知らない」といった声が多くて。そうした背景があったので、ホットクックでは煮物などの和食を簡単においしく作れることを目指しました。 |
開発当初から共働き世帯をターゲットに想定していたそうですが、予想に反して、煮物を直火を使わずにおいしく作れるホットクックはシニア層で支持を拡大。口コミで徐々に認知が広がり、世代を超えてじわりじわりと浸透し、現在に至ります。その結果、離乳食からおかゆまでカバーするようになったホットクックは“すべての人への優しさを考えた”調理家電の地位を築くことができたのです。
ただ、当然のことながら一朝一夕に成し得たわけではありません。開発の苦労を東さんが明かしてくれました。
「食材を混ぜる」という動作を機械で再現しようとすると、思いのほか力が必要なことがわかり、内部構造の部品の強度を確保するのに非常に苦労しましたね。 |
最も力がかかるメニューは、意外にも筑前煮だったそう。筑前煮をベースに強度を設定し、まずは肉じゃがをおいしく作ることを目標に開発が進みましたが、一筋縄ではいかなかったと振り返ります。
たとえ強度を確保できても、仕上がりがイマイチではいけません。栗原さんと連携しながら混ぜ方も試行錯誤しましたが、混ぜ方が変われば、部品にかかる力も変わります。そのたびに耐久試験をやり直す、この繰り返しでした(笑) |
食材は煮えると柔らかくなるので、調理を始めたときと同じ力で混ぜ続けてしまうと一気に崩れてしまいます。じゃがいもがペースト状になってしまったり、反対に混ざっていなかったりして、タイミングを図りながら力加減を調節するのが難しかったですね。 その当時は、毎日肉じゃがを食べていました(笑) |
「まぜ技ユニット」の角度を1度単位で微調整するなど、混ぜる強さや早さ、回数を検証する実験は200回を数えました。食材の煮え具合や量、メニューに応じた最適な混ぜ方を導き出した裏側には、地道な努力があったのです。この執念が、ホットクックを人気の調理家電に押し上げたといっても過言ではありません。「ただ混ぜるという一見アナログなところに泥臭くこだわり、英知を詰め込んだのはシャープらしい」と栗原さんは笑いました。
料理にも持続可能性を。楽しく使い続けられる2つの工夫
楽しく使い続けられる工夫が施されているのもホットクックの特徴。そのひとつが、クラウドサービス「COCORO KITCHEN」との連携です。
ホットクック本体には100メニュー以上を内蔵しているのですが、よく使っていただける方でも10メニューほどに偏ってしまっている傾向にありました。 「COCORO KITCHEN」を通じ、お客さまの嗜好をもとに季節感やトレンドを取り入れたメニューを提案することでマンネリ化を打破し、新しい料理にも挑戦していただけるようにしています。 |
もうひとつが、オンラインコミュニティ「ホットクック部」。そこでは、ユーザー同士が情報交換をしています。
ちょっとした失敗でも抱え込んでしまうと、使うのがイヤになるかもしれません。そんなときに気軽につぶやいて相談できるのが「ホットクック部」です。 困り事を解決できるコミュニティがあることも、ホットクックが長く愛用される理由だと考えています。 |
「ホットクック部」ではコミュニケーションが活発で、ユーザー考案のアレンジやオリジナルレシピが多数掲載されています。中には、公式メニューとしてシャープが採用したレシピもあるそうです。
僕たちが考えつかない使い方をしてくださることがあって、いつも驚きとともに拝見しています。ホットクックが僕たちの手から離れ、ひとり歩きしているような感覚です。 |
自動調理でありながら、自分なりに応用できるのがホットクックのおもしろいところなのかもしれません。ちなみに、栗原さんと東さんにおすすめのメニューやアレンジについて聞いてみると、こんな答えが返ってきました。
私のおすすめは「オープンオムレツ」です。フライパンで作ると火加減が難しく、底が焦げてしまったり、中まで火が通りにくかったりするのですが、ホットクックなら卵と材料を入れるだけ。自分で混ぜずとも、「まぜ技ユニット」のおかげでふっくらきれいに出来上がります。 公式メニューでは野菜が盛沢山のレシピですが、子どもと一緒に作るときにはツナやコーン、チーズといった刃物を使わない材料に替えています。子ども大喜びです。 |
COCORO KITCHEN
オープンオムレツのレシピはこちら
僕は「甘酒」ですね。高温すぎると麹菌が死んでしまうので、自宅の鍋で作ろうと思うと、ほど良い温度をキープしなければなりません。しかも、6時間くらいかかります(笑) ホットクックなら、軽く温めたごはん、水、米麹を入れて混ぜ合わせてスタートボタンを押し、6時間放っておけばOK。夜寝る前にセットすれば、朝には出来上がっています。すごく甘くておいしいので、ぜひ試していただきたいですね。ショウガを入れて飲めば、身体がポカポカ温まります。 |
「やってみよう精神」で、ホットクックを必需品化したい
取材が終盤に入ると、肉じゃがが完成。蓋を開けると、しっかりと煮込まれているのが一目でわかりました。箸を切れる柔らかさでありながら、保たれている素材の食感。野菜や肉の甘さが口いっぱいに広がる、昔ながらの素朴な味でした。
おいしい肉じゃがに舌鼓を打ち、最後に今後のビジョンを尋ねました。
保育や福祉の現場で人手不足の問題が深刻ですので、知識や技能が無くても誰もが簡単に使える調理家電を開発し、その解決に寄与したいと考えています。 シャープには「やってみよう精神」が根付いているので、安心して使ってもらえる商品づくりに積極的にチャレンジしていきたいですね。 |
私はホットクックを必需品化したいです。ハードとソフトの両面で改善すべきことはありますが、冷蔵庫やレンジなどと同じようにホットクックが一家に一台ある光景を当たり前にするため、手軽に実践できる「健康につながる食生活」をがんばって提案していきます。 |
人に寄り添うIoT(AIoT)を提唱するシャープ。ホットクックやヘルシオといった調理機器がどのように進化していくのか、これからも目が離せません。
シャープは、2022年9月に110周年を迎えました。
Photo:ビレッジピクス
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